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第8章 38 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

「で、――俺たちはどう動こうか」


天藤は問う。


「一刻も早く下層に行くしかないだろ、他のチームも上層に集まってきてる」


神崎が即答する。


「あと、どっかの馬鹿が落ちたせいでな」


「は?」


サオリの眉が跳ねる。


「いつまで同じこと言ってんの?喧嘩したいの?」


通信越しに、視線がぶつかる。


空気が張り詰める。


天藤は内心でため息をつく。


「――だったら早く動こう」


軽く割って入る。


「それじゃサオリ、俺達下層の南エリアに行くから〜、頑張ってきてね」


半ば強引に話を切り通信を切断する天藤。


「おい、話は途中でー」


なおも喋ろうとする神崎を制止する。


「お前の正論言う所嫌いじゃないけどさ、今のは余計な一言だね」


神崎は天藤に目を細めて訴えるように表情を歪ませる。


「ほら、不満顔してる暇あったらさっさと行くよ」


神崎の肩を軽く叩き、前へ促す。


天藤は歩きながら思考を巡らせる。


落下の直前、明らかに暴走していたはずのサオリ。


だがさっきの様子は、明らかに違う。


集中していたイベント開始前よりも、落ち着いている。


(……下層で助けに入った、あのプレイヤーの影響かな)


ちらりと天藤はリリカへも視線を送る。


(あっちも随分落ち着いてるし、いったい何をしたのか興味あるな〜)


リリカと視線が合い天藤は誤魔化すように笑う。


リリカは意図が分からず、わずかに首を傾げる。


「はぁ〜やっと追いついた〜」


紗良が空中から降りてくる。


アバターのボディに焦げた跡があり、飛竜との戦闘の跡を物語っていた。


「あの飛竜の群れの中よく逃げてきたね⋯」


美咲は少し驚きながら話しかける。


「あの後、他のチームが来て飛竜を攻撃し始めてそっちに流れて行っちゃったみたい⋯」


遠目からでも他チームの阿鼻叫喚が聞こえてくる。


「誰だ!さっきの空中にいたプレイヤー!押し付けやがって⋯!!」


阿鼻叫喚の中から怒りの声が混じる。


「⋯色々厄介な目に合う前に下層行こっか⋯」


美咲の提案に一同は頷いた。



下層にてー。


迅とサオリは、改めて下層を見渡す。


中層と上層、その二層のさらに下にある為


光は遮られ、全体的に薄暗い。


しかし、光る蛍のような虫が飛び光を下層に届けている。


地形は大樹から伸びた根が、巨岩のように地表を覆い、


行方を遮るように伸び、道は迷宮のように入り組んでいる。


そして――


他の層とは明らかに違う。


モンスターの密度が、異様に高い。


建物の影、その奥に蠢く影。


視界のあちこちに、気配がある。


動けば、戦闘は避けられない。


この状況なら、


同盟を組むサオリの提案は理にかなっていた。


サオリは拳銃を構え、動きを確認する。


「そういえばこの前も使ってたな。銃、好きなのか?」


迅が横目に見ながら尋ねる。


「全然。イベントじゃなきゃ⋯こんなの興味もないわよ」


吐き捨てるように言う。


「あの二人に毎日毎日、射撃訓練場で動く的を撃たされて――」


一瞬、言葉が止まる。


「……気が狂うかと思ったわ」


ぼやく。


だが――


その構えは迷いがない。


指は自然にトリガーへ。


拳銃は、手に吸い付くように収まっている。


上空。


数体のゴーレムが巡回している。


サオリは狙いを定める。


一拍。


呼吸を止め、――撃つ。


乾いた破裂音。


スライドが引かれ、弾丸が射出される。


一直線に飛び、寸分狂わずコアを貫く。


数十メートル先のゴーレムが、出力を失い落下する。


それを合図に、他の個体が反応する。


迎撃モードへ移行――


だが、そのわずかな硬直、サオリは逃さない。


連射。


二体、三体。


正確に、コアだけを撃ち抜く。


落ちる。


また落ちる。


最後の一体。


わずかに動く軌道を読む。


――撃ち抜く。


静寂。


サオリはグリップを握り直す。


「めちゃくちゃ上手いな⋯」


口を開けて驚く迅にサオリはそっぽを向く。



「イベントもいよいよ佳境! 残り30分となりました!」


司会の声が響く。


「現在の順位を見てみましょう!」


「第一位――リリカチーム! 190ポイント!」


歓声が上がる。


「いち早く上層に到達し、ポイントを稼いだ頭脳派チーム! 進行ルートにも迷いがありません!」


「気になるのは、孤立してしまったサポートの紫電選手ですが――」


一拍。


「現在、サオリ選手と行動を共にしているようです!」


会場がざわめく。


「続きまして――!」


司会の声が響く。


「第2位! 上層で中ブロックを追加制圧! 180ポイント!」


「汐花チーム!」


歓声が沸く。


「多数のチームをかいくぐり、二人のみで出場した異例の構成!」


「撮影、立ち回り――ともに、今大会屈指の完成度を誇ります!」


「現在はリリカチームと同じく、下層へ向かっている模様!」


一拍。


「そして、その後ろ――!」


「影に隠せないその輝き!」


「第3位! 135ポイント!」


「ヴィクトリアチーム!」


観客の熱がさらに高まる。


上位チームが下層へ集結する。


会場の熱気が、確実に上がっていた。


――


その中で。


サオリは口をへの字に曲げ、不満そうに画面を睨む。


その表情を見て、


迅は思わず、笑いを噛み殺す。


「……何がおかしいのよ」


サオリが気づき、睨む。


「いや……普通に悔しそうだなって」


「悔しいに決まってるでしょ!」


即答。


「1位はおろか3位からも落ちてるし、あのヘンテコお嬢様より下って……!」


一瞬、言葉が詰まり、迅の顔を見る。


迅の勝ち誇った表情に顔を真っ赤にさせる。


「ああ、もうなにその顔……ムカつく!自分のチームが1位でそんなに嬉しい!?」


「まぁな」


「はいはいそーですか⋯!」


「⋯⋯⋯」


サオリは少し悔しそうな顔をする。


「⋯次は私のサポートしてよね⋯」


睨みをきかせながらサオリは迅に聞こえないように呟く。


「次あったらな」


聞こえてた迅はサオリにしっかり聞こえるように話す。


サオリはまたそっぽを向く。


「⋯何でそんなに優しくするの」


「⋯変なの」


迅はマップを確認し話す。


「そろそろ南エリアに着くが、どうする?」


サオリの走りの勢いが緩む。


そして、少しずつ歩幅が狭くなりやがて止まる。


「私は行けない⋯」


立ち止まる声に迅は振り向く。


足取り以上にサオリは重苦しい表情をしている。


「リリカも私がいたらきっと⋯困ると思うし」


一歩も進まない自身の足を見つめるサオリ。


「そんな事気にしてるのか⋯」


サオリは口を開け、呆然とする。


迅は一瞬だけ視線を外す。


「……リリカはさ」


少し間を置き、サオリに視線を戻す。


「お前のこと、親友だって言ってたぞ」


「⋯⋯⋯!」


進んで行く迅の後ろ姿を見つめるサオリ。

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