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BIO DEFENSE ~Mother phage~   作者: こばん
マザーというもの

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5-1 追跡

「そう、そこを右。道は広いからだいじょぶ」


ゆずの案内に従ってゼンさんがハンドルを切る。


「随分具体的な指示だけど、ゆずくんはこの辺り詳しいのかい?」


「ん、守備隊にいる時に通った道。その時もネメシスと揉めていた。だからネメシスの拠点はいくつか心当たりがある」


ゼンさんが聞くと、ゆずは頷いてそう言った。拓から得た情報で、ネメシスが関わっていることが確定した以上、ヒナタもネメシスを追っているはずだ。

今向かっているのは、榊原の研究室になっていた団地があった辺りだ。


当時は大勢のネメシスに包囲されて脱出するしかなかったが、それは近くにネメシスの拠点もあることになる。


そして、拠点があるということは……

そこに所属している白づくめと遭遇しやすくなる。


「当たりだった。ちょっと行ってくる」


そう言ってゼンさんに停車するように伝えたゆずが、支給刀だけを掴んで出て行こうとする。少し広い場所にマイキーが停車したその先には、数人の白づくめの姿があった。


「手伝うよ。みんなはマイキーを」


そう言ってアイもゆずに続いてマイキーを降りる。

その先に見える白づくめは三人で談笑しながら歩いているようだった。


「一気に片付ける。でも、情報は正確に知りたいから、二人残す」


素早く移動しながらゆずが言う。アイはそれに頷いて返すと、鉄パイプを握りしめた。

ゆずはそれを見て密かに微笑む。


ヒナタも手加減をしたい時には鉄パイプを使っていた。鬼丸と名付けて愛用していた鉄パイプは、一度手放してしまったものの、また戻ってきてくれたと大事にしていた。


……今回鬼丸は拠点の薬局で留守番している。


手加減するつもりはないようだ。そう考えているうちに、先に走ったアイは白づくめに接敵していた。


「やあっ!」


十分に近づいてから振った鉄パイプが、白づくめの脇腹にめり込む。


「うが……っ」


脇腹を押さえ、グラリとふらついた瞬間首を真横から鉄パイプが薙いだ。


「なにっ、お前!」


「何者だっ!俺達が誰だと……」


アイに打ち倒された白づくめが膝をつく頃に、残りの二人が振り返り、口々に何か言おうとしたが、それは叶わなかった。


一人目を倒した後急接近したアイは、力を溜めて飛び上がった。

その膝が、下から白づくめのあごを突き上げる。


「おごっ!」


あとは早かった。手加減しているが鉄パイプで一撃もらい、当たったところを手で押さえている間に、鉄パイプを使って、後ろ手に関節を極めて動きを封じた。


一方ゆずは、真っ直ぐに白づくめに突き進み、支給刀で牽制しつつ、いつの間にか取り出した拳銃を額に突きつけていた。


「ま、待て!まって……」


両手を上げて、そう懇願しようとした白づくめに容赦なく拳銃の底で殴ると、地面に転がして、目の前に支給刀を突き刺した。


「余計なことは聞きたくない。私はお前達を殺したくて仕方がない。ここからはよく考えて話す。わかった?」


白い覆面を剥ぎ取られた、白づくめの中身は中年の男性だった。

その男性の髪をつかみ、顔を近づけたゆずが牙を剥き出しにするような顔でそう言うと、男性はガタガタと震え出した。


アイが関節を極めている方も、それを見て大人しくなった。


その様子をマイキーから見ていたゼンさんと庄司は、ゆずはともかく、アイまで手慣れてきた様子に苦笑いするしかなかった。


頼もしくはあるし、今の世界を生き抜くには必要な技術ではあるが、また少し女の子らしさから遠のいていっている。


しばらく尋問していたゆず達は、聞きたいことを聞き終えたのか、武器を全て奪った上で白づくめ達を解放した。


そして、マイキーの所まで戻ってくると、ゆずは窓越しに言った。


「奴らこの近くの避難所の襲撃を計画しているらしい。もう時間がないのと路地裏を抜ければきっと早い。私たちは先行するから、追いかけてきてほしい」


ゆずがそう話している間に、アイはマイキーにくくり付けてあったバイクを出していた。


「ちょっとまて!二人では危険だ、少しくらい遅れたとしても一緒に行動した方がいい!」


慌ててそう言いながら外に出ようとする庄司の目の前で、アイはバイクにまたがりキーを回した。


「……ごめん。」


ゆずはそう言うとひらりとバイクの後部座席に飛び乗る。ゆずの両手がしっかりと自分の身体を掴むのを確認して、アイはアクセルを開けた。


ヒューンと言う音を出しながら、ゼンさん達によって電動エンジンに載せ替えられたバイクは快調に走り出し、出てきた庄司を残して走り出して行った。


「あいつら……」


いつの間にか上手に扱えるようになったバイクを駆って、あっという間に路地に姿を消したアイ達を見つめていた庄司だったが、ハッと我に返ると急いでマイキーに戻った。


「ゼンさん!アイ達は路地を抜けて近道するつもりだ。こちらからだと、だいぶ遠回りになるが急いで追いかけないと」


運転席の方から顔だけ出して様子を見ていたゼンさんは、庄司の話を聞いて呆れた顔をしていた。


「まったく……。なかなか暴走癖が治ってくれないねぇ。なんだかゆずくんといると、余計に悪化してるんじゃないかって感じるよ。とりあえず、急ぐよ!少し飛ばすから後ろも気をつけてくれよ?」


ゼンさんがそう言うと、慣れたもので全員がパッと動く。

ミィはテーブルにある、倒れたり滑り落ちそうな物を片付けて、庄司も動きそうなものを片付けたり固定したりしている。


「私、お母さんに知らせてくる!」


そう言うとマイはリビングを出て行った。そして、全員がソファに座ると、庄司が運転先の方に向かって大声で伝えた。


「ゼンさん、こっちはいいぞ!」


すると、少し小さくわかった、と答えがあり、それと同時にガクンと普段は感じない振動がある。


「おお」


思わずだろう、マイがテーブルを掴んで身体を固定している。普段は動いていてもこういった振動など感じないのだ。


「ゼンさんも焦ってるな。事故ったり中の物が壊れたりせんよな?」


ミィが少し心配そうに周りを見ながら呟く。


「大丈夫だろう。ゼンさんは運転が上手いし、そもそもマイキーは速度よりもトルクを重視してセッティングしたって言ってたからな」


庄司がそう言うと、ミィは少し安心したようにマイと二人で勝手に行ったアイの文句を言っている。

それは単純に腹が立つと言うよりも、心配から来ている文句のようだ。


なんだかんだ仲がいい少女達を、庄司は微笑みながら見ていた。


◆◆ ◆◆


その頃、アイは狭い路地に苦戦していた。幅は余裕があっても、まだそこまでバイクの運転に慣れていない。

バイクはそこそこスピードを出して走るよりも、低速で右左折する方が難しい。

しかも今は後ろにゆずが乗っている。運転者も同乗者もタンデムに慣れていないと、思うように曲がらなかったりする。


「ごめん、多分私が邪魔してる。バイク初めてだから……」


四苦八苦しながら狭い路地のコーナーを曲がっていくアイに、ゆずは済まなそうに言った。


「私も!慣れてないから……。それよりまだ抜けないの?」


「もうすぐだったと思う……見えた、あそこ!」


そう言ってアイの後ろから身を乗り出すようにしてゆずが指差したのは、かつて白づくめ達に包囲され激しい戦闘を行った学校だった。


少し開いて錆びてしまっている柵があり、石の柱には児島第二中学校と書いてある。


「この学校なの?」


風の音にかき消されないよう大声でアイが聞くと、ゆずも負けじと大声で返す。


「違う!今回はこの学校じゃない。この学校の近くに幼稚園があるはず」


ゆずはそう言って、周りを見ているが近くにそれらしき建物は見当たらない。

--さっきの白づくめの情報がウソだった?いや、あれだけ脅したし、嘘を言ってるようには見えなかった。


「アイ!そこの中学校の周りをぐるっと回って!絶対あるはずだから!」


アイの頭が縦に動き、再び加速したバイクは学校を囲んでいる道に入って行った。

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