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BIO DEFENSE ~Mother phage~   作者: こばん
ハルカと佐久間

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4-7 少女達とゆず

「その日の夜にヒナタは姿を消した……。多分ハルカさんを止めに行ったんだと思う。翌日ヒナタを探してると山野さんから今の話は聞いた」


ゆずはそこまで話すと、唇を噛んで何かに耐えるような顔をした。

話を聞くだけで、ゆずとヒナタの間には深いつながりがあったのだろうということがわかる。その上でヒナタは何も言わずに行ってしまった。


「私はヒナタが心配。ヒナタはハルカさんを止めに行ったんだと思う。ヒナタが尊敬していたハルカさんがあんなことをするのは、きっと何かあるはずだと思うし、ヒナタがそこに行ったとき、きっと、またヒナタは傷つく。私はそれが一番嫌」


話し方こそ静かだが、言葉の奥に激情を感じさせる様子でゆずはそう話した。


「……ゼンさん」


話を聞いていたアイがゼンさんを見た。何も言わないがどうにかできないかとその目は言っている。


「……そのヒナタさんの行きそうなところはわかるのかい?」


ゼンさんがそう聞くと、ゆずは悔しそうに首を振った。


「動画の場所も知らない所だった。もしかしたらヒナタは何か心当たりがあるのかもしれないけど」


その場に深い沈黙が訪れた。行き先もわからないままあてもなく探すのは、さすがに無謀すぎる。平和な時であっても難しいだろう。


全員が険しい顔をしていることにゆずが気づき、少し慌てて言った。


「とにかく助けてくれて感謝する。あとはだいじょぶ、なんとか探し出して見せる。ほんとにありがとう」


ゆずはそう言って、この場にいる全員に軽く頭を下げると立ち上がった。

そして出入り口の方に向かう。


「ちょっと待ちなさいよ。とりあえず動画を撮った場所までマイキーで移動すればいいじゃない、歩いて行くなんて時間の無駄よ」


ゆずの肩を掴んで止めたアイがそう言った。

しかし、振り返ったゆずは眉を落とし泣きそうな顔をしている。


「知らない人達にそこまで迷惑はかけられない。あなた達も目的があるはず」


申し訳なさそうな顔をしてゆずは言った。アイは一旦ゆずを置いて、みんなの顔を見渡した。


「アイちゃんの思うようにやって構わないよ」


代表して、ゼンさんがそう言ってくれる。その言葉に驚いたゆずがゼンさんを振り返った。


「アイちゃんはここのグループのリーダーみたいな人なんだ。アイちゃんが助けたいと思うなら、僕たちはそれを全力で応援するだけさ」


ゼンさんは微笑みながらそう言った。その隣でお母さんがにっこりと笑い、庄司は力強く頷いた。


「ウチはアイの下についた覚えはないけどな!まぁ手伝いはするけど……」


「あたしは気になるなぁ。そのヒナタって人、アイちゃんみたいにかわいいんでしょ?会ってみたい!」


ミィは照れくさそうに横を見ながらそう言い、マイもニコニコしながら同意するようなことを言った。


つまりは全員がゆずを助けることを承諾した形だ。


「……助かるけど、私は何も返せない。あなた達は危険な目に遭うだけでなんの得にもならない」


俯きながらゆずが言うと、ゼンさんはメモを引っ張ってきて、こう言った。


「確かに僕たちに利益のある話ではないね。でもね?()にはならないかもしれないけど、()にはなるよね?」


メモ用紙に文字を書いて、ゼンさんはそう言うとにっこりと笑った。


「こんな世の中だ、()のために動く人はほとんどいない。でも、この子達の保護者を自認している僕には、アイちゃんがその選択をしたことが、とても誇らしいと僕は思うよ」


最後はアイの方を見てそう言ったゼンさんに、アイが慌てたように言う。


「ちょ、わたしはいいじゃないどうでも……ほら、あなたのせいでわたしまで流れ弾が飛んできたわ。これ以上被弾したくないから早く覚悟を決めて欲しいんだけど?」


ポカンと口を開けたままゼンさんを見ていたゆずは、そのままアイを見て……言った。


「……私は、とても幸運。あなた達みたいな人が乗った車に轢かれかけたことが……」


「ちょっと言い方……轢きそうになったって、飛び出したのはあなただったでしょ!」


ゆずの言葉にアイがそう言い返すと、笑いが起きて場の雰囲気が軽くなる。


ゆずも目の端に光るものをたたえながら笑顔を浮かべた。


「……きっと大変だと思う。無理だと思ったら、いつでも私を放り出して離脱してほしい。でも、すごく……ありがとう」


ゆずが言葉に詰まりながらそう言うと、アイがゆずの手を引いてソファに座り直す。


「じゃ、作戦会議よ!」


そう言って話し合いを始めた。


◆◆ ◆◆


「まず、動画を撮った人に詳しく話を聞きたいわね」


「そうやな。そこからスタートして、避難所を回れば何かわかるんちゃうか?その人、避難所を襲ってんのやろ?」


「そうだね、この場合一人で動いているヒナタさんを探すよりも、避難所を狙っているハルカさんの方がどうしても探しやすいもんね!そしてハルカさんを追っていれば、どこかでヒナタさんとも会うはず!」


顔を突き合わせて、少女達が意見を言い合う。


最初は遠慮がちにしていたゆずも、同じくらいの年代の同性の子らに少しずつ気を許してきたのか、いつの間にか一緒になって額を寄せて話していた。


「山野さんのとこに行くなら、私達が住んでる薬局に寄って欲しい。急いで出て来たから、今は何も持ってないけど、そこにはそれなりに物資を溜め込んでる。武器だってある」


最後にゆずがそう言ったところで、アイがパンパンと手を叩いた。


「だいぶ行き先が見えてきたわね。まず病院……いや薬局ね。薬局に行って、ゆずさんが物資を取りに行く。そして病院で話を聞いて、その話を元に避難所を巡って情報収集って流れね。何か他に意見のある人いる?」


そう言ってアイが周りのみんなを見渡す。それ以上声が上がらないのを確認して、アイは拳を握った手を伸ばした。


「みんな、勝手に決めてごめん!まずは、みんなの意見を聞くべきだったと今は思う。だから、これはわたしのワガママだから……。ゆずさんも気にしないで」


そう言い出したアイに、ゆずはまた驚いた顔をするが、マイもミィも笑って聞いていた。


「ほんじゃ、何かあったらアイに言えばいいってこっちゃな?……ゆずさん、アイはこういう奴やから、あんまり気に病まんとええと思うで?」


ニヤッと笑ってわざとらしくアイにそう言った後、ゆずに向かって言う。


「そうそう!あたしもアイちゃんに連れてこられたんだもん。ほっとけないんだよねぇ、アイちゃん?」


マイまでそんなことを言うので、アイが目を白黒させていると、そんな三人を見て、ゆずは微笑んでいた。


「みんなを見てると、カナタくんと一緒に旅をしてた頃を思い出す。きっとヒナタもハルカさんもここにいたらそう言う」


十一番隊として、共に滅んでしまった街中を駆け回っていた頃に、ゆずは想いを馳せていた。

そして、表情を引き締めてゆずが言った。


「必ずヒナタを連れ帰る。できたらハルカさんも!」


そう言って、ゆずは伸ばしたアイの拳の上に自分の手を置いた。


「まぁ、面白そうやからウチも手を貸すわ。危なくなったら逃げるからな?」


そう言ってミィも手を乗せると、それを見ていたマイはとても嬉しそうに笑いながら自分の手も上に置いた。


「ふふっ!みんなで力を合わせてって奴だね?よぉーし、頑張るぞぉ!」


「お……」


「なんでアンタが言うのよ!」


「なんでマイが仕切っとんねん!」


マイの掛け声に応じようとしたゆずが、アイとミィのツッコミに出鼻をくじかれる。


「ちょっとぉ、ここはオー、でしょ二人とも!」


マイも負けずに言い返して結局グダグダになって、騒ぐ少女達を、ゼンさんや庄司。それとお母さんは少し離れたところから微笑ましく思いながら見ていた。

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