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BIO DEFENSE ~Mother phage~   作者: こばん
敵の姿

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3-8 マイキー改修と物資回収

「と、いうわけでゼンさんに判断してもらいたいのよ」


バイク屋の工場につくなり、お弁当を無言で庄司に突き出して三人はゼンさんに詰め寄っていた。


「いや、一体何を争ってるんだい君たちは……」


「別に争ってるわけじゃないんだけど、アイちゃんが言い張るから……。ねえゼンさん私が一番年上にみえるよね、ねっ?」


「そんなことない!マイは一番頭ン中ほやあってしとるやないか!それで長女なんて片腹痛いわ!」


「ああ、ひどい!ほやあっとかしてないもん!」


「何言ってるの?結構してるわよ?」


わいわいと言い合う三人の少女たちを前にゼンさんも困り果てていると、ゼンさんの分のお弁当を持った庄司が割り込んできた。


「ちょっと待て、お前たち!ゼンさんが困ってるだろう。それに、ここでゼンさんが誰か一人を指して一番上だって言ったところで、納得できるのか?ゼンさんだって一人を指名してあとの二人に恨まれたらたまらないだろう!」


庄司に強引に止められて、ゼンさんが困っていることに気付いた少女達はシュンとしておとなしくなった。


「お前たちの中で誰が長女だったとしても、それで関係性が変わるのか?例えば長女の言うことを聞くようになるのか?そうじゃないだろう。それなら曖昧のままにしておいて三人横並びでいいじゃないか。誰が上でも下でもなく、同格だ。」


意外と真剣にお説教されてしまい、すっかり おとなしくなった三人にゼンさんは笑いかける。


「君たちの関係で上下関係ができるのは僕はおすすめしないな。三人とも同じ年齢でいいじゃないか。それじゃだめなのかい?」


ゼンさんにもそう言われ、何も言えなくなった三人は黙って頷いた。


「そんなことよりも見てくれよ。生まれ変わったマイキーを!」


シュンとした三人に、ゼンさんはくすっと笑いながらオーバーな口調でそう言った。


「え、もうできたの?」


「はやっ!」


「すごぉい!」


三者三様に驚きながら顔を上げた三人は、わだかまりなどは残っていなさそうだった。それを見て苦笑しながら庄司がゼンさんに手を貸して立ち上がらせる。


「見てみるかい?」


ニヤリと笑ったゼンさんがそう言うと、三人の少女は揃って首を縦に振った。


改装されたマイキーは外装はほとんど変わっていない。庄司が入り口のドアを開けると、ドキドキしながらまずアイが中に入った。


「あれ、何か変わってる?」


アイが呟く。入ってすぐリビングになっているが、前と変わった様子はない。アイがきょろきょろと中を見渡していると背後から笑い声が聞こえてきた。振り返るとゼンさんが楽しそうに笑って、庄司も薄っすら微笑んでいる。


よく分からないが騙された。そう直感したアイがむすっとしていると、ゼンさんが謝ってくる。


「いやあごめんごめん。ちょっとしたいたずらだよ、ゆるしてくれ。いじったのは後ろだけだ」


ゼンさんがそう言うので、アイは多少むっとしたまま、後ろの方へのドアを開けた。


「ほんとだ!全然違う」


マイが大きな声を出した。これまでマイキーの後部はユニット式のシャワールームとトイレがあって、残りを上下に分割して、下がお母さんの部屋で、ロフトみたいな形で登った所がアイやマイが使っている部屋になっていた。

それが、今度は左右に分かれている。


「みゆきさんには悪いけど、前と比べて少し狭くなってる。勿論承諾をとってるよ?喜んで応じてくれたよ。左側が君たちの部屋だ。これまではアイちゃん達の場所は天井が近くて身を低くしないといけなかっただろ?今回はそれを少し改善したんだ」


そう言われて、アイがそっとドアを開けると、縦長の空間が伸びている。確かにその部分はこれまでと違って、身を屈めなくてもいい高さがある。そして右手はクローゼットみたいな扉があって、その先に梯子があって登れるようになっている。


「あ、もしかして……」


そう呟いてアイが梯子を登ると、思った通り広いベッドになっていた。こちらは以前と同じように、天井が近くて高さはないが、ここに来る時はベッドを使う時なので問題はない。お母さんの部屋の天井の上にアイ達三人がゆっくりと寝れる大きさのベッドがあるという形になっている。


「本当はちゃんと仕切った部屋を三つ準備したかったんだけど、さすがにマイキーの大きさだと無理があってね……」


少しすまなそうに言うゼンさんに、アイはニコッと笑って遠慮がちに抱き着いた。


「えっ、アイちゃん?」


マイなら分かるが、アイがそういうことをするとは思っておらず動揺するゼンさんに、アイは静かに言った。


「ありがと、ゼンさん。大変だったでしょ。お疲れ様」


アイがそう言うとゼンさんも微笑んでそっとアイの頭を撫でた。その光景は誰も邪魔することなく、誰も余計なことを言うこともなく、ただ微笑んで見守られていた。


「そうだ、アイちゃん!バイクもできてるよ。今充電しているところだ」


アイの肩を掴んでそっと離して、ゼンさんはそう言った。さすがに照れ臭かったようだ。ゼンさんの頬がわずかに色づいている。それでもゼンさんの言葉はアイの意識を逸らすのに十分な力があった。


「ほんとに!さすがゼンさん!どこどこ?」


急かすアイに苦笑しながらゼンさんに連れられてマイキーを降りると、すぐ隣にそれは置いてあった。ヤマハのオフロードバイク。もともと排気量の大きいタイプではないので、女の子でも取り回しやすいだろう。エンジンの部分にはカバーに覆われた見たことのない部品が収まっていて、ハンドル部分のメーター周りもだいぶ様変わりしている。


「エンジンのかけ方は、キーを入れてオンにいれる。そしてハンドルの所のボタンを押すと……ほら、これでアクセルを開けると走るよ。ギアは元のまま使ってるから練習するんだよ?」


ゼンさんの説明を聞きながら、アイはおそるおそるまたがってみた。そしてハンドルを握ったアイはプルプルと震えて感動を噛みしめていた。


「いいなぁ、アイちゃん。」


その様子を見ていたマイがぽつりとこぼす。それを聞いて我に返ったアイは、バイクから降りるとマイの方に譲る動きをした。


「何言ってるのよ。マイも乗ればいいじゃない。別に私専用ってわけじゃないんだから」


「えっ、そうなの?私も乗っていいの?」


意外そうに言うマイに苦笑しながらもう一度頷くとマイは「やったあっ!」と喜びながらバイクにまたがろうとした。


「わわっ!ちょっと待って、マイちゃんはだめだよ」


ゼンさんが慌てて止めた。


「えっ……」


まさかゼンさんが止めるとは思わず、マイは悲しそうな顔をしている。それにもゼンさんは慌てて弁解しだした。


「違う違う!マイちゃん、乗るのはいいんだ。でも乗る時はズボンにしような?」


そう言われて、マイは自分の恰好を見下ろした。今日は最初に最初出会った時に着ていた白いワンピースを着ている。膝上くらいのスカートでがばっとバイクにまたがったら……


「あっ、ああ。はい……」


はしたない格好を想像して、マイは顔を赤くしながら、そう言うしかなかった。


「どうするアイ。練習するなら俺が教えることができるが」


アイの元に戻ってきたバイクを眺めていると庄司がそう言ってくる。


「おじさん、バイク乗れるんだ」


「自衛隊にいるとな、いろいろ勉強できる」


そう言われ「ふーん」とつぶやきながらアイはしばらくバイクを見た後、立ち上がって言った。


「また今度でいい。今はもっとやることあるから」


そう言ったアイに、庄司は意外な顔をする。てっきりすぐにでも乗りたがると思っていたのだ。しかしアイはマイキーを見て言った。


「マイキーも出来上がったんでしょ?それなら先に私たちが見つけた物資を先に回収しましょ?バイクは逃げないけど、物資は奪われる可能性があるわ」


冷静にそう言ったアイに、庄司は嬉しそうに笑う。


「そうか。そうだな!じゃあ、マイキーの慣らし運転も兼ねてみんなで回収しに行こうか。いいかなゼンさん?」


庄司がゼンさんに訊ねるとゼンさんも嬉しそうに頷いた。


「もちろんさ」


◆◆◆◆


「そう、その先を曲がって……ほら見えてきた。あのアパートよ」


全員でマイキーに乗り込み、アイたちが見つけた物資があるアパートへとやってきた。改造したといっても、内装をいじっただけでエンジンや足回りはそのままなので、何も問題なくアパートの横にマイキーは停まった。


まずライフルを手に庄司が下りて周囲の確認をする。マイキーも動力は電気なのでエンジン音で感染者を呼び寄せたりはしない。それでも周囲には数体の感染者がいた。


「荷物を運んでいる最中に来られると厄介だ。先に片づけるぞ」


鉄パイプを手に降りてきたアイを見ると庄司はそう言った。それを見て、マイとミィシアもそれぞれの武器を手に一緒に行こうとするのをアイが止めた。


「全員でかかることはないわよ。わたしとおじさんで片づけるから、二人は物資を運んでて」


そう言うとアイはポケットから例の部屋の鍵を取り出すと、マイに渡した。


そして足音を立てないようにふらふらと立っている感染者の後ろから近づく。あと数歩でアイの間合に入る、その時だった。


「あぁ~!」


アパートの方からマイの悲鳴があがった。アイと、声に反応した感染者が同時に振り向いた。


「あんたはいいのよ!」


そう言ってアイは思いっきり感染者のひざを狙って鉄パイプを振るう。アイの手に骨の砕ける感触が伝わってきて、その感染者は片膝から崩れ落ちるように倒れる。

それを最後まで見ないままアイは駆けだしていた。


「アイ!」


庄司が声をかけてきたが、アイは止まらずアパートの入り口をくぐりぬけた。


「マイ!」


例の部屋の入り口で、座り込むマイと、呆然と立っているミィシアの姿があった。アイはぐっと奥歯を噛むと、鉄パイプを構えたまま座り込んでいるマイの前に滑り込むように立った。


「えっ……」


そこでアイの目に飛び込んできたのは……すっかりと何もなくなっている部屋だった。


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