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BIO DEFENSE ~Mother phage~   作者: こばん
吸血鬼と仲間

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2-9 偽りの吸血鬼

「はあ?設定?」


「ちょ、ちょっと!アイちゃん動かないで……」


今アイ達は洋館の二階、吸血鬼の少女が生活していたスペースにいた。

見た目は古い洋館のようだが、太陽光パネルが乗っているのか、電力は豊富に使えるようで、部屋の中はパニック以前とそう変わらない程度の家電があった。


机の上に置かれたpcからは、大掛かりなビデオスイッチャーにつながっていて、目標を固定すると自動で追跡もできるようになっている。

その机にいながら、目標の監視から電子ロックの制御、ルートの誘導までやっていたようだ。


「そや。この辺りの生存者グループとは話を通しててな、吸血鬼がおるーって噂を流してもらうようになっとる。んでここに誘い込んで返り討ちにして手に入れた物資を分けてやってたんや」


吸血鬼の少女……いや、吸血鬼ですらなかった普通の日独ハーフの少女--名をミィシア・シュネイベルクと名乗った。血が通っていなさそうな青白い顔色も、メイクで再現していたらしい。今は普通の若い少女らしい血色のいい顔色でミィシアは悪びれもせず、そう語った。


「そういえば、洋館にはお宝や食料がたくさんあるらしいって噂も聞いたわね。興味なかったから覚えてなかったけど……いっ!ちょっとマイ、痛いんだけど……」


話を聞きながら、アイはミィシアの居住スペースで傷の治療をしていた。


「そんなこと言われても、銃で撃たれた人なんてどう処置したらいいかもわかんないよぅ……」


泣きそうな顔をして、マイは傷口を丁寧に洗浄していた。それを見てアイは少し微笑むと、「消毒して強めに縛ってくれればいいから」と言った。


あとはマイキーに戻ってからお母さんにやって貰えばいい。

……まぁ、怒られるだろうが。


「へぇ、自分らこんな世界を旅しとんの?ほーん、凄いっちゅーか、命知らずっちゅーか……」


感心しているのか、呆れているのかよくわからない感想を言うミィシアを半目で睨みながら、つまらなそうにアイは言う。


「わたしだって、平和に過ごせるならそうしたいわよ。たまたま避難した場所がクソみたいなとこだったから、少しでもマシなとこを探してるの!」


そう言うと、マイがギュッと包帯を強めに縛る。


「いたっ!痛いって、マイ……もう少し優しく」


そう言うと、マイはムッとした顔で言った。


「もう!アイちゃん、女の子が汚い言葉使っちゃダメってお母さんからいつも言われてるくせに!戻ったらお母さんに言うからね!」


ぷんぷんと文字が浮かんでそうなマイがそう言うと、アイは慌てる。


「ちょっ!お母さんには言わないでよ。お願い!」


アイもお母さんには弱いのか、両手を合わせてマイにお願いしている。


「くくく……なんや自分ら見てると、ガッコ行ってた頃を思い出すわ」


そう言って笑うミィシアを睨んだアイは、マイが応急処置をしてもらって、下着をつける。


「それにしても……」


洋服を着ながら周りを見て、アイは嘆息する。

設備は立派だし、守りも固くいい拠点と言える。ただ、散らかり放題に散らかっており、アイ達がいるテーブルとpcが置いてあるデスクの周り以外は、すでに足の踏み場もなくなっている。


今はアイの応急処置のため、席を外して別の部屋を探索している庄司が部屋に一歩足を踏み入れて硬直していたことを思い出す。


「いや、そやねん。ウチめっちゃ片付けるの苦手やねん」


「……苦手ってレベルじゃないわよ」


アイもそれほど得意というわけじゃないが、それでも言葉がなくなるレベルだ。

間違っても一人暮らしをさせてはいけないタイプの人間だ。しかも……


「アンタほとんど食べ物もないじゃない。どうするつもりだったのよ」


そもそも、ミィシアがマイキーに忍び込もうとしたのも、こっそり食料を盗むつもりだったらしく、今もお腹を押さえている。


「どーもこーもないわ。お手上げや。この屋敷に入って来た奴から奪ったりしてたけど、そもそもうろついてる人が少ないし、久しぶりの獲物やぁってノリノリでおったら逆に捕まるし……も、あかん。ウチもゾンビになるねん。美少女ゾンビとして有名になるねん」


そう言って、アイ達の方をチラチラと見ている。何を言いたいのかは明白だが、館に入ってきた奴らから奪うのはいいのに、分けて欲しいとは言いにくいようだ。


その時、部屋の扉がノックされる。


「俺だ」


ドアが厚いのか、くぐもった庄司の声が聞こえる。


「もう終わったわよ」


まだ下着をつけただけの姿だというのに、そう返事したアイにミィシアはギョッとした顔をして、マイが慌てて立ち上がってドアの方に走りながら声を上げる。


「わぁ!待って庄司さん!アイちゃん!?」


ドアを押さえながら、マイが眉を逆立たせてアイを見る。


「もう、ほとんど着てるじゃない……。別に減るものでもないし、おじさんもこんな色気もクソもない女の子の下着姿見ても嬉しくもないわよ」


ぶつぶつと言いながらアイがしっかりと服を着たのを見て、マイは庄司に大丈夫と声をかけた。


庄司は部屋に入るなり察したようで、アイを見てため息をつき、部屋の惨状を見てもう一度ため息をついた。


「綺麗好きで可愛い清楚な女子高生なんて、幻想よおじさん」


「ええこと言うな。そやで?」


そう言うアイとミィシアを見て、庄司は三度目のため息をついた。


「なによ、胸に手を当ててきゃー!とか言えばいいの?」


アイがため息をつく庄司にそう言うと、庄司は想像したのか小さく「いや、いい」とだけ言った。


「俺に向かって可愛らしくする必要はないが、今この世界が狂っていることを忘れるな。男の理性のタガも弛んでるんだ。お前達は可愛らしいんだから、無駄に挑発するようなことはやめろ」


庄司が真剣な顔でそう言うと、キョトンとしたアイがサッと目を逸らした。


すすすと近寄ったマイが、アイの頬をつつく。


「あれぇ、アイちゃん照れてる?耳が赤いよ?」


「うるっさいわね!ちょっと暑いだけよ!」


そう言って顔を逸らすアイに、ミィシアが「いや、まだまだ肌寒いがな」とツッコミを入れていた。


そんな三人を微笑ましく見ていた庄司だったが、表情を改めて話し出す。


「館内を見させてもらったが、一階の防備はまだ大丈夫だが、二階は脆弱だな。本気で侵入しようと思えば簡単に忍び込める。それをさせないための吸血鬼の噂だったんだろうが……」


庄司がそう言うと、「そうだったの?」とアイが言う。

ミィシアはそう聞かれて、スーッと視線を逸らしたことから、吸血鬼の噂にそういう意図はなかったようだ。


ピクッと庄司の顔がひきつりかけたが、軽く首を振って修正した。


「……太陽光発電も、パネルの半分が死んでいる。なんとか充電はできているが、そう長くはもたんぞ。やはり設備には定期的なメンテナンスが必要だ」


庄司にそう言われ、ミィシアは苦笑いしている。一見完璧そうなこの館も、残された寿命はあと僅かということらしい。





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