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BIO DEFENSE ~Mother phage~   作者: こばん
吸血鬼と仲間

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16/52

2-3 銃砲店

「アイちゃんありがとぉ、怖かったぁ~」


そう言って抱き着いてくるマイの頭を軽く叩く。


「あなたまた目をつぶったでしょ?一発で仕留められなくてもいいから、まずは当てないと!」


そう言うと、マイはしゅんとして謝った。


「まぁ、ぶっちゃけ倒せるとは思ってなかったし、まあいいわ。次は気を付けてね」


あっさりそう言って歩き出したアイに、マイはあんぐりと口を開けた後ぷくっと頬を膨らませる。


「もうっ!私がダメダメなのはわかってるけどっ!自覚してるけど!それでも悔しい!」


そう言ってアイの背中をポカポカと叩く。アイはそれに取り合わず周囲の警戒に戻っている。それを見てマイはもう一段階頬を膨らませると、最後にパシッとアイの背中を叩いた。

たいして痛くもない不満げな攻撃を背中に感じながら、アイはどこかホッとしている部分もあった。マイがガンガン感染者を倒して回る世界。そんなのにはなって欲しくないと思う。近接戦闘は自分がやるし、マイには後方で射撃の腕を磨いてほしいと思う。


性格的にも、マイよりも射撃に適性がなかったアイはもう少し射撃訓練をしてもらおうと考えながら、背中に感じる衝撃に少しだけ頬を緩ませていた。


「ねえ、アイちゃん」


さっきまでと違う真剣な声にアイは立ち止まってマイを見た。マイは道を挟んで向こうの建物を見ている。


「どうしたの?何かのお店?看板も何もないけど」


マイの所まで戻り、そう聞くとマイも首を振る。


「分かんない。でもさ、なんか必死に開けようとしたように見えない?」


アイに言われ、改めて見ると確かにそう見えた。正面の入り口と思われるところにはシャッターが下りているが、むりやり曲げてある隙間からその奥に鉄の格子が見えている。個人商店レベルの防犯対策じゃない。一階には窓もなく、横にある従業員の出入口っぽい扉も、鉄製の頑丈なものだ。


「ほんとだ。やたら頑丈だから開けきれずに諦めたのかしら?あのシャッターも扉も、あれを破ろうと思ったら、壁を壊した方が早いんじゃないかしら」


無理やりこじ開けようとした形跡がいくつもあるが、どれも失敗に終わっている。


「そこまでして開けようとするのって、なんのお店なのかな?」


確かに。あそこまでがっちり防犯対策がしてあれば、さっさと諦めて他を探した方が早いはずだ。……とても貴重な物か、もしくはあそこにしかないものがある?


少し興味が出てきたアイは建物を調べ始めた。マイも気になるのか一緒になって調べている。建物を調べていると急に聞きなじみのある最近聞かない音が鳴り響いた。


ぴんぽ~ん


「ちょ、ちょっとマイ!なにしてんのよ!チャイム鳴らすなんて正気なの?」


慌ててマイに近寄ると、マイは少しぽかんとした顔で、アイの前にある物をかざした。


「……それ、どこにあったの?」


「チャイムにカバーがあって、それを開けないと押せないようになってたんだけど……そこにかかってた」


それはキーリングに通してある鍵だった。少し複雑な形状をしている。マイが渡してくるので、受け取ったアイが裏口の方に行く。


「まさか……でしょ」


そう言いながら鍵穴に差し込むと、抵抗なく入る。少しひねると扉の向こう側でガチャっと音がした。


「うそでしょ?」


二人で顔を見合わせてそう言った。重く頑丈な扉を開けて中に入って、アイもマイも口を開けたまま固まった。壁にはいくつかライフルがかけてあって床にあるショーケースには銃弾らしき箱がたくさん入っている。


ポカンとしていると、マイが慌てて入ってきた裏口の方に行って施錠する。


「そうね、ありがとうマイ。それにしても、あれだけ防犯対策がしっかりしている意味がわかったわ。銃砲店だったのね」


それはなんとしても中に入りたがるだろう。特に銃器が出回っていない日本では、銃の存在感は大きい。仮に弾が入っていなくても向けるだけで一定の効果はありそうだ。


「よく気付いたわねマイ。お手柄じゃない」


そう言うと、アイから褒められたことが嬉しいのか、マイはにっこりと微笑んだ。


◆◆◆◆


「これは凄いね。よく無事だったもんだ」


とりあえず無線でゼンさんを呼んで見てもらった。二人とも詳しくないのでどれが使えるのかもよく分からない。ここはゼンさんに任せて、アイたちは薬局に探索に行くことにした。


薬局でも思ったよりたくさんの物資を見つけることかできた二人は、ホクホク顔で銃砲店まで戻って来た。二重のシャッターは少しだけ上げてあり、そこにマイキーを横づけして塞いである。中に入ると、ライフルを手に取って見ているゼンさんと、洋館の方の偵察を終えたのか庄司の姿もあった。


「やあ、お帰り。その顔は収穫があったみたいだね?」


戻って来た二人の顔を見てゼンさんは顔をほころばせる。その隣で庄司は難しい顔をしていた。


「うん!欲しいものは大体あったよ。こっちは?」


アイがそう聞くと、ゼンさんは少し表情に影を落とした。


「……奥に店主らしき遺体があったよ。奥さんらしき人と並んでね。遺書もあった。鍵をマイちゃんが見つけたんだって?どこにあったんだい?」


そう聞かれ、場の雰囲気に話しづらそうにマイは言った。


「えと……ドアチャイムを押すとこです。ボックスになってて開けたらありました」


マイがそう言うと、ゼンさんは笑って庄司を見る。庄司も少し笑みを浮かべている。


「そうかそうか。確かに略奪しに来てチャイムは鳴らさないか。じゃあこれは君の物だよ」


そう言ってゼンさんは一丁のライフルをマイに差し出した。


「えっ?それって……どういうことですか?」


少し怯えたように言うと、ゼンさんはとても大事なものを渡すように、マイのライフルを持たせた。


「奥で亡くなっていたご主人はね、奥さんが感染してしまったらしい。奥さんはライフルを固定しておくための、防犯用の鎖で少ししか動けないようにしてあった。奥さんが感染して、ここが銃砲店だと知っている者は略奪しにきて……ご主人もなやんだんだろうね。店舗にあるライフルはすべて内部の部品が抜かれて使えないようにされていた。そうしているうちに、ご主人は奥さんに噛まれてしまった……」


淡々と語るゼンさんの言葉に、マイはライフルを抱えたまま目を潤ませている。


「でもそれが何であんなとこに鍵を?」


アイがそう聞くとゼンさんは少しだけ笑って言った。


「そこがねぇ、このご主人のすごいところというか、高潔なところというか。ご主人は銃というもの取り扱っている責任を強く持っていたんだろうねぇ。ここにあるすべてのライフルが使えなくされているのにもよく表れている。よほど自分が取り扱っていた銃が略奪者なんかに使われるのが嫌だったんだろう。でもご主人も奥さんによって噛まれてしまった。そこで自分で始末をつけてしまおうと考えた。でも心残りがあった。後に残る銃だ。自死する前に奥さんを撃って、それから自分を撃ったらしいけど、そしたらその銃が撃てる状態で残るだろう?そこでご主人は考えた。少しでもいい人に使ってもらいたいとね」


「それが馬鹿正直にチャイムを鳴らしたアイだったと」


「ちょ、アイちゃん!馬鹿正直はないと思うな。私はもし誰か生き残りの人がいたらって思っただけで……」


ムキになってそう言うマイに、アイは微笑んで言った。


「そういう所が馬鹿正直って言うのよ。普通は物音立てないようにこっそり入ろうとするものよ」


「むうう!」


アイの言葉に何も言い返せなくなったのか、マイはまた頬を膨らませてうなりだした。


「まあまあ、それがマイちゃんの美徳でもある。そのおかげでここのご主人から銃を譲ってもらえたわけだし」


そう言われ、マイは改めて受け取ったライフルを眺める。ピカピカに磨かれていている。丁寧な手つきでライフルを見ているマイにゼンさんは言った。


「マイちゃん、レシーバー……えっと、ライフルの横側を見てごらん。銀色の部分だ多分特注品だろうねぇ」


意味ありげにそう言われて、マイはライフルを横にして、引き金がある上の部分に目を止めた。


「え……これって」


マイの声と瞳が震えている。何があったのか、アイも近づいてマイが見た所を見る。


「あっ!」


そこには銀色のプレートにきれいな彫刻が施してあって、宙を舞う鳥と漢字で一文字、「舞」と入れてあった。

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