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172.思わぬ登場

サンドフィッシュの群れとアキラ達がぶつかり合う直前にそれは起こった


「な、何だ!?」


昼間だったのにも関わらず、一瞬にして世界は夜に変わる。

そして紅い月が見えるとそこから大量の蝙蝠が飛び出してきた。

それは何百万という数だろうか、サンドフィッシュの群れに向かって行くとたちまち喰らいついて行く。


「わーはっはっは!!妾参上なのじゃ!!」


聞き覚えのある声が上空から聞こえてる来る、上を見上げるとそこには黒い翼を生やし飛んでいるレティがいた。


「レティお嬢様、流石でございます」


変態執事のファルスが和やかな顔をし、後ろからアキラ達の元へとやって来た。


「な、なんでお前らがこかに居るの!?」


ごもっともな質問だろう、アキラは捲し立てる様にファルスを問い詰めた。


「いえ、レティお嬢様のちょっとしたサプライズでございます」


そう言うとファルスは恭しくお辞儀をした。


「答えになってねぇ!!」


アキラのツッコミが響き渡る、そして満足気なレティが地上へ降りて来た。


「戦争が近いのじゃろ?妾もアキラの役に立つのじゃ!!」


小さい胸を反りながらドヤ顔をしているレティに、皆困り顔だった。


「いやいや、気持ちは嬉しいがこれはレベルを上げる為にしてる事だから、主従の絆を結んでないレティが倒しても意味ないだろ」


「なら妾もそれを結ぶのじゃ!!」


「他国のお姫様に結べるわけないだろ!!魔王に殺されるわ!!」


アキラの懸念はごもっともだった、レティ絡みで過保護の魔王を敵に回したら一生恨まれそうだ。


「……先程のあれは何なのですか?」


そこにシルヴィアが話に入り込んでくる、皆聞きたがっていたのか耳立ていいた。


「あれは妾のジョブスキル【紅夜の(グラム)晩餐(・コミュニオン)】の力じゃ」


レティは広範囲殲滅特化の使い手である、数多の蝙蝠が喰らいついて来る光景は正に恐怖だ。

そして蝙蝠を媒介に血を取り込む、そしてジョブスキル【我ガ血ニナリテ(サクリファイス)】は血を取り込む程強くなるスキルだ。


「何だその凶悪な力は……」


ベルギムは思わず言葉を洩らした。


「ていうかよくこの場所に居るとわかったな」


「それは私の魔法です」


ファルスは時空魔法を使う、空間転移でこの場所までやって来た様だ。


「ほう空間転移とな」


「そんな魔法があるのか」


「すごいねー!!」


ムゲン、ロイズ、ライムはファルスに感心している。


そもそも時空魔法を使える素質を持って生まれるのは稀有な例であり、1000万人に1人居るか居ないかの確率だ。


「……とりあえず帰ってくれ」


「いやじゃーー!!」


アキラの言葉にレティは地団駄を踏む。

こうなるとテコでも動かないのがレティだ。


「……はあ、わかった」


アキラはため息を吐く。

このままではレベル上げどころじゃ無くなると思い折れた。


「カムとアレイを守ってやってくれ」


「「よ、よろしくお願いします!!」」


カムとアレイはレティとファルスに向け深々と頭を下げた。


この中では自分達は完全なお荷物だとは理解している、ましてや本来はカムとアレイの実力でS級ダンジョンに潜る事自体が身の丈に合っていない、アキラ達の様な強者に囲まれて成り立っている様なものだ。


「任せるのじゃ!!」


さっきの地団駄は何だったのだろうか、レティは満面の笑みを見せた。


「気を取り直して進むぞ、レティとファルスは最小限の動きで居てくれよな」


レティとファルスはウインクしながら親指を立てる、その自信が逆に不安になる。


いくつか魔物と遭遇し、倒しながらもアキラ達は進む。


サボテンが背中に生え棘を飛ばすラクダの魔物のバルモーや、砂でできたゴーレムの魔物のアモスマン、ギザギザの口が特徴のベルタワームなど様々な魔物だった。


暫く歩くと遠くで何かの建物が見えて来た。

そしてどんどん近づくと、それが何なのかわかった。


「ぴ、ピラミッド……。」


「わわわーおおきーいっ!!」


ライムは見た事もない物に興味津々で飛び跳ねていた。


砂漠と言えばピラミッド、ピラミッドと言えば砂漠、まさにテンプレな展開がそこにあった。


「ピラミッド?」


ベルギムは首を傾げた。


「え?ピラミッド知らないの?」


「聞いた事無いです」


どうやらこの世界にはピラミッドという存在が知れ渡って無い様だ。

ベテラン冒険者のベルギムですら知らないのだから、それ以外のメンバーも知る由も無かった。


「ピラミッドは昔の王様を祀るお墓の様なものだよ」


アキラはピラミッドの大まかな説明をする。


ピラミッドで有名なのはツタンカーメンの墓だ、世紀の大発見をし調査に入った考古学者や調査部隊が軒並み病気や不慮の事故、行方不明になるなどが起こり、墓を荒らしたものは呪われる事で有名だ。


「ほう、勉強になります」


ベルギムは懐からメモ帳を取り出すと、その説明を書き留めていた。


「墓か、それだと中には我らの様なアンデットが多そうだ」


ムゲンの意見は的を得ていた、十中八九ピラミッドの中は碌な事になってないだろうと予想がつく。


「中に入ればわかるのじゃ!!」


レティはずかずかと入口に向けて歩きだした、怖いもの知らずなのか自らの強さに自信があるのかわからないが、もう少し慎重になるという事を覚えた方が良い、ここにヒューリーがいればまた説教タイムが始まるだろう。


「考えても仕方ないか……皆も行くぞ」


半ば諦めた様にアキラは歩き出す、それに皆も続く。


中に入ると道が二手に分かれていた。


「……どっちに行くか」


まさかの展開にアキラは困惑する、一旦引き換えそうかと思った程だ。


「二手に分かれるのじゃ!!もちろん妾はアキラと一緒じゃぞ!!」


レティの陽気な声に、デートスポットにデートに来たのかと勘違いしそうな感覚に陥りそうだ。


「いやいや、ここで戦力分散させるの危険すぎるだろ!!」


素人でもわかる懸念だ、未知の場所など特に自殺行為だ。


「いや、ここは分散させましょう」


ベルギムのまさかの言葉にアキラはギョッとした。


「え?何で!?」


「他のダンジョンにもいくつかの建造物が確認され調査されています、()()()()中は入り組んでおりいくつかの仕掛けを解かないと先へは進めなくなっている事が多い様です」


この内容には真実と嘘があった。


今のままでは人数が多く、ベルギムはこの状況を利用しあわよくばアキラを暗殺しようとしていた。


「……まぁベルギムが言うなら」


素人が考えるよりもベテランの意見を取り込むのは最もだった。


「じゃあメンバーを決めようか」


皆で集まり暫しの話し合いが続く。


左に進むメンバーは、アキラ、ベルギム、レティ、ライム。


右に進むメンバーは、シルヴィア、ロイズ、ムゲン、カム、アレイ、ファルスだ。


左メンバーの主な理由はアキラとレティはセット(レティが駄々をこねる)ベルギムの探索知識、保険でライムの完全回復があれば充分だろう。


アキラ達は主にピラミッド探索メインで進む。


右メンバーの主な理由はカムとアレイを守る役だ、シルヴィアの硬さとスキル【リバース】のオート回復で壁役になる、ムゲンとロイズの強さは折り紙つき、そしてヤバい時はファルスの空間転移で逃げられる、これなら安心だろう。


シルヴィア達は主にレベル上げを優先させる事にした。


「よし、何かあったらミニライムを使って連絡交換をしよう」


スキル【増殖】で分裂したミニライムは通信手段として有効だ、シルヴィアの懐にミニライムが入り込む。


「お気をつけてマスター」


「シルヴィアもリーダーとして皆を頼む」


「お任せください」


アキラはシルヴィアの肩を叩きながら安心させる為に笑う。


「安心するが良い、妾がいれば安心じゃぞ!」


「レティお嬢様と離れ離れで、爺や寂しい……。」


「アキラと初デートなのじゃ!」


レティに華麗にスルーされた爺や、そういうプレイも好きなのか体をくねらせながら、毎度の事恍惚な表情を浮かべていた。


「……緊張するな」


「……足を引っ張らない様にしよう」


カムとアレイは緊張しながらもどこか楽し気だ。


「ライムよ、主を頼むぞ」


「ムゲンよ、ライムの回復があれば大丈夫だろう」


「えっへん!まかせて!」


ムゲン、ロイズ、ライムは和気藹々としている。


だがこの男だけは顔に作った笑顔を貼り付けながら、不穏な空気を出さない様心の中でほくそ笑む。


(……さて、暗殺の機会は訪れればいいがな)


こうしてピラミッド探索は始まる。




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