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169.紙一重の攻防

森の観測者ララガイアとの死闘が始まった。

ララガイアはただ杖を振るうだけで木々を操っている、アキラ達はひたすら逃げながら追ってくる蔓に攻撃するが、なまじ蔓自体が固く完全に切断するのに時間がかる、その上切断しても直ぐに生えて来るので焼石に水だった。



「ちぃ!やけに固えな!」


大剣を振るいながらジェイドが叫ぶ。


「あっしが姿を消して一撃狙いやす、奴の気を引いてくれやせんか?」


「我が道を開こう」


ルージュの提案にデストが応える。

デストは【風魔の左腕】を使い地面を殴る、土煙がララガイアの視界を塞いだ。


「ジェイド行くぞ!」


「合わせろ!アキラ!!」


土煙に合わせアキラとジェイドが動き出す。

アキラは後ろから、ジェイドは右側から剣を上段に構えながらララガイアに叩きつける。

そしてそのタイミングでルージュは【インビジブル】で姿を消しララガイアの頭上へと飛ぶ、だが……。


ーザシュー


「「「ぐあぁ」」」


攻撃を仕掛けた3人のうめき声が聞こえた。

そして土煙が晴れる、そこには老人の体から枝が伸び3人の体を貫通していた。

3人は無理やり枝から自分の体を引き抜き脱出する。


「あるじー!!」


アキラにくっついていたライムが慌ててアキラに回復を掛けた、順にジェイドとルージュも回復させていく。

傷は癒えたが様子がおかしい、傷口だった場所から芽が出て来る、それは徐々にだが成長していた。


「何だこれ!!」


引き抜いても同じ様に芽が出て来る、しかも引き抜く事に芽の成長スピードが上昇していた。

そして徐々に3人の体が木になっていき、動けなくなってしまう。


「アキラ様!!」


ヴィクセンは顔を真っ青にして叫んだ。

怒りをぶつける様に精霊火魔法を唱える。


陽炎(ボルケーノ)


火炎放射器をぶち撒けた様な熱気がララガイアへ向かう。


「!!」


ここでララガイアが初めて動きを見せた。

蔓がララガイアの腕に絡みつくと逃すように後方へ下げた。


「弱点はやはり火か!!」


危険を感じたララガイアが操る蔓がヴィクセンに集まる。


「させぬ!!」


「ぼくもたたかうよー!!」


デストの雷と風の拳とライムの酸が蔓を散らす。


「連続で詠唱します!時間を稼いでください!」


ヴィクセンは確実に精霊火魔法をララガイアに当てる為に、逃げられない様足止めの魔法を唱える事にした。


「承知!」


「まかせてー!!」


デストとライムが応える様に動き回る。

だがララガイアは甘くは無かった、再び杖を振るう。

ひらひらと上空から木の葉が舞い落ちて来る、それは剃刀の様な鋭利さを持っていた。


「ヴィクセン殿には触れさせぬ!!」


デストはヴィクセンの前に立つ、その巨大を生かし捨て身で全ての木の葉を受け切ろうとした。


「ぐうう」


デストが呻く、木の葉に切り裂かれた箇所から出血が止まらない。

デストの血は地面に滴り、その血を吸った蔓は凶暴さが加わり捻る様にデストの体を貫いて行った。


「だめーーー!!」


ライムの【回復魔法/パーフェクトヒール】がデストの傷を癒す、だが木の葉と蔓がまた傷をつける、まさしくイタチごっこだった。

傷は癒えるがアキラ達と同じ様にデストの体中から芽が出て来た。


「ライム!!後は頼んだ!!」


芽は成長しきりデストの体もまた木になって行く。


(落ち着け……焦れば終わりだ)


ここでヴィクセンはスキル【ポーカーフェイス】を発動する。

これは心を落ち着かせるスキルだ、明鏡止水の如く他の雑念を消し高速詠唱に集中しきる。


「まだーーー!?」


スキル【分裂】で2つになったライムは、ひたすら酸を放ち続けていた。

ライムの声はヴィクセンの耳には届いていない、だが少しして上空に魔法陣が出来上がって行った。


「終わりました!!」


ヴィクセンは手を掲げ呪文を唱えた。


暴風神の逆鱗(パンデモニウム)


「!!」


上空から地上に吹き荒れる暴風が降り注ぐ、とてつもないGが木の葉と蔓を巻き込んで、ララガイアをうつ伏せに地に縫い付けた。


「まだです!!鬼火の鉄槌(イフリート)


火炎で作られた鬼の巨人が、縫い付けられたララガイアに拳を落とした。


「ガァァァァァ!!」


ララガイアは身を焦がしここで初めての声を上げた。

手を抜かず更にヴィクセンは魔法の出力を上げる。


ほぼ全ての魔力を出し切ったヴィクセンは膝をついた、それと同時に鬼火も消えていく。

縫い付けられたララガイアの体からプスプスと煙が上がっている、そして少しした後光となって消えて行った。


「やったか……」


額に脂汗を溜めたヴィクセンは重たい体を起こしてアキラに駆け寄る。

木になっていたアキラ達は、元の体に戻っていた。


「「「「……うぉぉぉ!!」」」」


木になっていた間、記憶が無いアキラ達はまだ戦闘中だと勘違いして声を上げ構えた。


だが冷静になり周りを見渡すと全てが終わった事に気づいた。


そしてアキラの脳内に声が響く。


["森の観測者ララガイア"を獲得しました、キャパシティ500を使用します。YES/NO」


どうやらボスクラスになると軍編成で使う容量が大きくなる様だ。

だが迷いなくアキラはYESと唱えた。


異空の(ディメンシオン)楽園(・エデン) 700/2000】


残りの容量はあと1300になった。


「大丈夫ですか!?」


ヴィクセンは心配そうにアキラ達に問いかける。


「何ともないな」


「俺もだ」


「あっしも」


「我も何も無い」


「良かった……」


ヴィクセンは膝から崩れ落ちる。


「すごーくしんぱいしたよー!!」


ライムはぴょんぴょんと飛び跳ねながらアキラ達を怒っていた。


「世話になったな」


ジェイドがヴィクセンに手を差し伸べる、ヴィクセンはその手を取り立ち上がった。


「とりあえず、、、今日は帰ろうか」


アキラの一言により皆帰路に着いた。

そして戻った直後……。


「ばっかやろーーー!!」


ヒューリーの怒声がアキラ達を迎えた。

唐突な事にアキラ達は困惑していた。


「ダンジョンをなめてんじゃねぇ!!死にてえのかおまえら!?」


アキラ達は何もわかっていなかった、事前の情報収集やボス部屋前では何をするかなど知ろうとすら思わなかった、ましてやS級ダンジョン、いくらアキラ達が極めて強いとはいえ、気をつけてても死ぬ時は死ぬ、深層心理ではダンジョンを甘く見ていた事をこっぴどく叱られた。


2時間にわたるヒューリーの説教にアキラ達は肩を落としながら黙って聞いていたのだった。









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