163.暗雲立ち込める
1週間のラマダグェン法国滞在を終えたアキラは神樹国アクティースへと戻った。
リノア達は各々準備をしてからアクティースへと来るらしい、その時はルクレリアとイルームにリノア達を改めて紹介する。
アキラは執事に執務室にヒューリーを呼ぶ様伝える。
暫くしてヒューリーが執務室に入って来た。
「何の用だい?」
急に呼び出されたヒューリーは疑問を浮かべている。
「お待たせ、そろそろ冒険者ギルドを設立しようかと思ってね」
「やっとだね、大まかには本部に通達はしてあるよ」
「助かる」
港開発の着手はもう少しかかりそうなので、先に冒険者ギルドを設立する事にした、それに並行して商人ギルドも進める、商人ギルドの設立はマタタビ商会のアムール会長に任せる事にした。
「アクティースのギルドマスターは私に任されたよ、まぁここに慣れたし妥当な判断だね」
「アルベルムのギルドマスターはどうなるの?」
「それは副ギルドマスターが担う事になる、本人も昇格して嬉しいだろう」
アキラとしてもヒューリーがギルドマスターになってくれたら何かとありがたい、考えの不一致や粗野な人柄だとそれこそ問題が増えていくからだ。
「副ギルドマスターは本部から派遣されて来る、手紙に名前はベルギムと書かれていた」
「わかった、ベルギムとは知り合い?」
「いや、顔も見た事ない、まぁ本部から寄越すのだからまともな奴だろう」
ヒューリーはベルギムがどんな奴かは特に気にしてない様だ、ヒューリーの性格的にベルギムが生意気な奴だったらシメるつもりなのだろう。
「わかった、ギルド運営を担う従業員はこちらから選抜するよ」
「よろしく頼む」
話を終えヒューリーは去って行く。
そしてヒューリーはすぐさま本部に手紙を出した。
◇ ◇ ◇ ◇
3日後。
ベルギムはアクティースに向けギルド本部から出発した。
ベルギムの性格は義理堅いだ、多くの人に慕われ実力も申し分ない、それが評価され副ギルドマスターへと昇格した。
「ふう、出会う魔物に苦戦もしないし、これなら早めにアクティースに着くな」
腰には片手剣をぶら下げたベルギムは汗を拭う、ベルギムの周りにはオークとゴブリンの死体が散らばっていた。
地図を見ながらベルギムは再び道を歩き出す。
「あと2日くらいか、今日は近くの村に泊まるか」
ここ2日野宿だった為、今日こそはゆっくりするぞと意気込むベルギムの足取りは軽い。
「……誰だ!?」
夕暮れに近づきもうすぐ村に着く頃に何者かが追跡している事に気づく。
木の陰から黒いローブを着てカラスマスクをつけた男が現れた。
「……寝込みを襲おうと思ったがなかなか勘が鋭いな」
男はそう言いながらベルギムに近づく、それに伴いベルギムは片手剣を構えた。
男は両手剣を構える、そしてベルギムに向け走り出した。
「早い!!」
男の速さにベルギムは驚愕する、だがそれだけでは無かった。
ーガキィンー
ベルギムは男が振り下ろした両手剣を受け止める、だがパワー負けしてしまいたたらを踏んでしまった。
すぐさま態勢を整え持ち直しを図る。
(……冒険者ランクでいえばおそらくSランク相当の実力か)
ベルギムの額から冷や汗が流れる。
「何が目的だ!?」
ベルギムは冷静さを保ちつつ相手から情報を引き出す事にした。
「……冥途の土産に教えてやるか、アキラが狙いだ」
「!?」
アキラと言えばアクティースの王だ、それが狙いなら尚更ベルギムは報告しなければならない、自ずとベルギムの緊張が増していく。
「……さて死んでもらうよ」
男は再度両手剣を構えた。
ベルギムは地面の土を掬い男へと投げつけた、そして踵を返して走り出す。
(このままではやられる……)
ベルギムは荷物を置き去りにしてひたすら走る、本能が死への警鐘を鳴らしていたからだ。
ーブシュー
「……ガハッ」
ベルギムの口から鮮血が滴る、胸から刃が生えていた。
「逃すと思うか」
「……チクショウ」
男は背後から突き刺した剣を抜く、ベルギムは前のめりになりながらその場に倒れた。
「やれやれ、とりあえず出だしは順調だな」
そう言いながら男はうつ伏せに倒れたベルギムをひっくり返すと顔を触った。
たちまち男の顔はベルギムの顔に変わっていく。
「これで良し」
顔だけではなく声までもベルギムと遜色変わらないものになった。
そしてベルギムの片手剣を持つと立ち上がる。
「準備は整った、行くとするか」
カラスマスクを鞄に入れ男は歩き出す。
「……璽金の鶏冠の恐ろしさをとくと味わせてやろう」
そう言いながら男はニヤリと笑った。




