161.甘いひと時
無事に式典を終えたアキラ達は、港開発を始める為再びラフトリカ海洋貿易商会へと来ていた。
「すげー、船とかこんなまじまじと見たことないからなー」
アキラは港に停めてある巨大帆船を見上げる、この帆船はヴィンセントが所有している物であり最新式の船だそうだ。
「ははは、お褒めに預かり光栄です」
船を誉められ上機嫌なヴィンセントは船の詳細を話す。
「特殊な材木を使用してまして、強固で軽く普通の船の倍のスピードを出せます、また迎撃用の大砲の飛距離も長いです」
「なるほど、やはり海は危険なのですか?」
そうヴィクセンが尋ねる。
「はい、まず海には強力な魔物がいます、そして1番厄介なのは海賊です」
「やっぱ海賊いるんだ」
思わずアキラは片手がフックの船長を思い浮かべた。
「少なくない被害が出ていますね、魔物とは違って海賊は知恵が回る、ここ最近では海の覇者達という海賊団が勢力を拡大しています」
ヴィンセントは眉間に皺を寄せた。
「海岸沿いの村まで被害が及び男は皆殺され、女、子供、財産を全て奪われたなんて所もあると聞きました」
「……やはり警備の面が重点的になりそうですね」
そう言いながらヴィクセンはメモ帳に要点を記入している。
「……んー、メルティナ達だけじゃ不安だから、アクティースに戻ったらメルティナに移住して来そうな海の亜人を聞いてみるか」
アクティースは現状船乗りが居らず海上警備はマーメイドに任せるしかない、奴隷から探せばいるかも知れないが、開発者が見つからなかった件の二の舞にならない様に様々な手段をアキラは模索する。
「わかりました、私が通達しておきます」
ヴィクセンは新たにペンを走らす。
「それなら私の商会から幾人かの船乗りを送りましょう」
「よろしいのですか!?」
ヴィンセントからの思わぬ提案にヴィクセンの顔が綻んだ。
港が出来上がる前に船乗りの育成もできて、その後はスムーズに漁業、海運業に乗り出せる、これぞ一石二鳥だ。
「もちろんですとも、ですが見返りを求めたい」
ヴィンセントの目が商人の目に変わる。
「わかっています、ラフトリカ海洋貿易商会を神樹国アクティースのお抱え商会とします」
ヴィクセンの言葉を聞いてヴィンセントはニッコリと笑う。
「さすがヴィクセン様、私の狙いはお見通しでしたね」
ヴィンセントの狙いはアクティースでの海運業の独占だった、アクティースの海はまだどの商会にも手を付けられていない宝の山、それを独占するれば大商会に大きく近づく。
「どのみちアイリスの為にもそうするつもりだったよ」
恋人の商会を贔屓しない王などいない、アキラも例に漏れなかった。
「ははは!、アイリスをよろしくお願いします」
ヴィンセントはマーガレットとセルフィの「アイリスは豪運」という言葉を思い出す、そして「豪運どころか天運を持ち合わせるているだろう」と考えた、何せ連れてきた恋人は多種族を束ね驚異的な力と人望を持つ王なのだから。
「もちろん、幸せにするよ」
「ラフトリカ海洋貿易商会も安泰ですな」
ヴィンセントの笑いは止まらない、マタタビ商会の会長はこんな気持ちだったのかと認識した。
「あとは灯台や防波堤などの設備面も考えないといけませんね」
「その辺の事は私共の技術者達がアクティースを視察してからにしましょう」
「わかりました、今日の所はここまでにしましょう」
ヴィクセンの提案にアキラとヴィンセントは頷いた。
それを見計らっていたのかアイリスがアキラの元へやって来る。
「アキラさん、お仕事終わりました?」
「あぁ、今終わった所だよ」
アイリスはアキラの手を握ると上目遣いをする。
アキラは照れながらもアイリスの頭を撫でた。
「おやおや、私共はお邪魔にならない様退散しますか、どうですかヴィクセン様この後一杯?」
ヴィンセントは酒を呷る様なジェスチャーをした。
「そうですね、行きましょう」
「では参りましょうか」
ヴィンセントはヴィクセンを連れ去って行った。
残されたアキラとアイリスは海を眺める。
少ししてアイリスが話を切り出した。
「……ルクレリアさんとイルームさんってどんな方何ですか?」
「ルクレリアは優しくて包み込まれる様な人、イルームはすごく大人な考えの人かな」
「……そうですか、私もその方達とつり合うといいな」
アイリスはどこか不安気だった。
「アイリスにはアイリスの良さがあるよ、それはルクレリアもイルームも持っていない」
「例えばどんな良さですか?」
「たまに背伸びしちゃう所が可愛い」
「もう!恥ずかしいです!」
アイリスはアキラをポカポカと殴る。
通り過ぎて行く船乗り達は口から砂糖が出るほどの甘い光景を見て今夜は娼館に行こと涙を流しながら心に決めていた。
「アキラさんはまだ他に好きな人いるんですか?」
「……あと2人くらいね」
「もしその2人も恋人になったら私も入れて8人になりますね」
「そうだな、近々その2人にも思いを告げるよ」
「ふふ、アキラさん本当に男らしくなりましたね」
「考え方が変わったのはあるかな、恋人達を幸せにできないなら民の幸福を担う王様なんて務まらないってね」
「……何だかアキラさんがずっと遠くの人に思えて来ます」
「……そんな事はないさ、いつまでもアイリスの側にいるよ」
そう言うとアキラはアイリスの肩を抱き寄せた。
アイリスはコテンとアキラの肩に自分の頭を置く。
「……約束ですからね」
「約束だ」
2人の時間はどこまで続いて行く。




