159.娘さんをください。
今日は神樹国アクティースとラマダグェン法国の友好を、大々的に発表する式典が開かれる。
馬車に乗りパレードをするアキラは笑顔で手を振る。
エラリーエ女王が学園都市ラクーリアで起こったアンデット事件を解決したのはアキラだと公式で発表した為、より注目が集まっていた。
(これはこれで疲れるな……)
王としての威厳と皆から好かれる様な態度を醸し出し続けるアキラは精神的な疲労を覚えていた、前世で平のサラリーマンだったアキラは会社のトップは楽そうで羨ましいと思っていたが、上に立つ者の方が苦労が多い事を知った。
暫くしてパレードは無事終わり、次はパーティが始まった。
パーティには多くの領主貴族とその家族が出席している、貴族の娘達は皆過去1のお洒落をしていた、何故ならばアキラに見初められたいからだ。
アキラに挨拶に来る貴族達はこぞって娘を紹介した、中には小学校低学年くらいの女の子もいた、これには流石にアキラの顔は引き攣ってしまった。
少し休憩させてくれと言い会場の隅に行く、そこにワイングラスを片手に持ったエラリーエ女王がやって来た。
「モテモテだね、アキラ王は」
「笑えませんよ、8歳の女の子を紹介される俺の身にもなってください」
エラリーエ女王は愚痴を吐くアキラを見てクスクスと笑っている。
「そんな事はどこの王も同じよ、寧ろその年齢の子と結婚する者もいるわ」
「え!?マジで!?」
「まぁ政略結婚的な要素もあれば、ただ単に幼女趣味の人もいるけどね」
「そ、そうなのか……」
アキラは王とは儘ならないのだなと感想を抱いた。
「今度アクティースに遊びに行ってもいいかしら?」
「別に良いですけど?」
「ふふ、楽しみが増えたわ、それとありがとう、ラマダグェン法国を友好国に選んでくれて」
急に畏まるエラリーエ女王を見てアキラの表情も真剣になる。
「それは俺も同じだ、心強い味方ができて嬉しいよ」
「できる限りの協力をするわ、予感がするのアクティースは大国になるって、だからこれは打算よ」
「ははは、そうなる様に頑張るよ」
そう言うとアキラはワインを呷る。
その後もエラリーエ女王との会話を楽しみパーティは終わる。
酔いが回ったアキラが城を歩いていると、リノア達4人がやって来た。
「居たわ!」
リノアが指差すとルル、アイリス、イヴが近づいて来た。
「ん?どうした?」
皆目を爛々とさせている事に疑問を浮かべる。
「アキラさん!恋人になってください!」
ルルはアキラの右腕にしがみつく。
「私も恋人になりたいわ!」
アイリスは左腕に飛びつく。
「わ、私も恋人になりたい……!!」
イヴはアキラの胸に顔を押し付けた。
どうやら3人はリノアにけしかけられた様だ、3人共正式に恋人になったリノアを見て気が気で無い。
そして普段はチキンで優柔不断なアキラもこの時ばかりは漢を発揮する、殆どは酒の勢いだが。
「俺が纏めて幸せにしてやるよ!!」
3人の顔はパァっと明るくなる。
アキラはリノアも交えて4人纏めて抱きしめた。
「はっはっは!!」と笑うアキラ、そしてそんなアキラにリノア達は各々がにゃんにゃんとイチャついている。
ーいやぁ、何事もなくて良かったですー
ーそうだな、帰ったら俺も一杯やろうー
そこに聞き覚えのあるパパ達の声が近づいて来る。
「はっはっはっ!!……あ……」
「「…………」」
高笑いしているアキラと、ジール、レントンの視線が合う。
アキラはフリーズしジールとレントンは少しの沈黙の後唐突に魔法を詠唱し始めた。
バトル勃発かと思いきや、エラリーエ女王とミネルヴァが偶然その場に居合わせた。
「ちょっと何やってるの!?」
声を荒げるエラリーエ女王。
「いや、ちょっとこの不届き者を滅殺しようかと」
それに真顔で応えるジール。
「……はぁ、何があったか教えて」
エラリーエ女王は呆れていた。
リノア達はエラリーエ女王に事情を説明する、エラリーエ女王は「あらあら」と言いながらニマニマしていた。
「おめでたい事じゃない、何が不満なの」
「そうじゃぞ、これで皆安泰じゃぞ」
エラリーエ女王とミネルヴァのツイン攻撃にジールとレントンはたじろぐ。
だがここで引き下がれば娘をこの男に取られると思い必死の形相を浮かべる、ちなみにウルヴェン子爵はリノアがアキラの恋人になると泣いて喜んだ、ヴィンセントも商人気質なのかアキラが有用な存在である限りアイリスともし恋人関係になってもそれを認めていた。
「……そういう問題じゃねぇ!!」
ジールは突っかかるが理論的な説明が出来ないでいる。
そこにクールで冷静沈着と評判のレントンが出る。
「お言葉ですが、ルルには早すぎる!!」
食い気味に反論するレントンに、エラリーエ女王とミネルヴァは呆れている。
「じゃあいつならいいんじゃ?」
「……そ、それは……」
「ワシみたいな婆さんになるまで自分の元に置いておく気か?死んでからも娘に恨まれ続けられるぞ?」
「く……!」
早速論破されるレントン、そんなレントンにジールは「もっと根性見せろ!!」と発破をかけていた。
そこにエラリーエ女王が追撃を掛ける。
「それにもちろん貴方達には奥方がいるわよね?貴方達もその奥方のご両親から愛する娘をもらったのよ?まさか自分の番になってごねるなんて最低よね?」
「「…………」」
人とはここまで喋れなくなるのかとジールとレントンは実感していた。
「何か反論は?」
ジールはフル回転で思考を巡らす、そしてある事を閃いた。
「そ、そうだ!オルティナは許すはずがない!」
「エミールもきっと反対する筈だ!」
2人にはもうそれに縋る手段しか残されて無かった。
「きっと俺の妻なら同じ気持ちだ」と信じているジールとレントンの瞳の奥は燃えている。
「それじゃあ聞いてみましょうか」
エラリーエは執事を呼ぶとオルティナとエミールを呼んでくる様にと伝える、命令を受けた執事は一礼しその場を去っていた。
暫くするとオルティナとエミールがやって来た、オルティナは次女のエルを連れている。
2人の表情から有無を言わせない凄みを感じる。
「あなた、死にたいの?」
エミールはレントンの耳を引っ張る。
「……信じてたのに!!」
期待を裏切られたレントンの顔は絶望していた。
「ジール、流石にダサいわよ」
「お姉ちゃんにイジワルするパパ嫌い」
2人の重い言葉のボディブローを受けジールはKO寸前だ。
「これでわかったじゃろ、ふぇふぇふぇ」
ミネルヴァは上機嫌に高笑いする。
だがそれでもジールは食い下がった。
「……まだだ、弱い奴には俺の娘はやらん!勝負しろアキラ!!」
「え?」
「……私も参戦しましょう」
「だから、え?」
何この流れ?と思いながらアキラはキョトンとしている。
「……わかったわ、アキラ王よ2人をコテンパンにしてやって!」
悪ノリしたエラリーエ女王はそう告げる、本心はアキラの実力を見れる絶好の機会だと思っていた。
「ふぇふぇふぇ、おもしろくなってきたのお」
ミネルヴァもエラリーエ女王と同じ気持ちだった。
ーアキラ!私達を奪って!ー
リノア達はどこぞの姫の様な展開に心を躍らせていた。
「え?俺の意志は?」と思いながら置いてけぼりにされるアキラは引き摺られる様に訓練場へと連れ去られた。




