158.パパの圧力
リノアと結ばれた翌日、アキラは宮廷魔術師団本部へと来ていた。
事前に行くと通達してあった為、アキラが来ても団員達は落ち着いてる、アキラを見ると皆深々とお辞儀をしていた。
(えーと、イヴはどこかな?)
アキラは訓練中の団員達を高台から見下ろす、隈なくチェックしていると訓練場の端でイヴの姿を見つけた、他にも見習いと思しき人達も居て皆真剣な顔つきで基礎訓練をしていた。
アキラは早速イヴの元へ向かう。
ーもっと魔力を練ろ、詰めが甘いぞー
近づくにつれ教官らしき人の声が聞こえて来る。
アキラは邪魔をしない様少し離れた所からイヴを見守る、イヴもアキラに気付いたのか頬を赤くしながらチラチラとアキラを覗っていた。
暫くすると教官がアキラに気付いたのか近づいて来る、見習い達はそのまま訓練を続行していた。
「アキラ王、どうされたのですか?」
とてもクールそうな教官がアキラに話しかける。
「ちょっと友達に会いに来た」
「そうですか、よかったらその者だけ中断させましょうか?」
「そこまでしなくていいよ、こうして訓練を見るのも楽しいし」
「そうですか」
ーお父さん!お弁当忘れてるよ!ー
教官と話していると、誰かが慌てた声を上げながらこちらへとやって来る。
それはルルだった、ルルはアキラに気がづくとその場で立ち止まり、身嗜みをチェックして再度駆け出した。
「アキラさん!」
ルルはアキラに会えて嬉しいのか満面の笑みだ、その顔を見た教官は何故かギョッとしていた。
「奇遇だなルル、慌ててどうしたんだ?」
「お父さんがお弁当忘れたから届けに来ました!」
「そうなんだ、偉いなルルは」
照れ笑いを浮かべるルル、そこに教官が割り込んで来た。
「失礼ですが、娘とはどういったご関係ですか?」
「今のところは友達です」
「…………」
今のところの部分が引っかかるのか教官は何も言わずソワソワしている。
そんな父を見てルルはクスクス笑いながらもアキラに父を紹介した。
「この人は私のお父さんで名前はレントンって言います」
「これは失礼、自己紹介がまだでした、ルルの父レントンです、団では新人の指導を担ってます」
レントンはそう言うと頭を下げる。
「どうも、もう知っていると思うが神樹国アクティースの王、アキラだ」
アキラも軽く会釈した。
「まさかルルがアキラ王の知り合いとは驚きました」
「まぁ、いろいろあってね」
「いろいろの部分を詳しくお聞かせください」
やはり娘が心配なのか、レントン話しを掘り下げようとする、そんなレントンをルルは「お父さん!恥ずかしいから!」と言いながら怒り出した。
アキラは今は子供は居ないが、もし子供ができたら将来レントンの様になるのかなと考えると感慨深くなった。
「アキラ!」
そこに休憩に入ったイヴがやって来た。
アキラは軽く手を挙げ応える。
「久しぶりだな、イヴ」
「そ、そうだな」
イヴは頬を赤く染め俯きながらモジモジしている。
既にリノアからルルとイヴも自分の事を好きだと知らされたアキラもその反応を見てどこかぎこちなくなる、もしリノアから知らされなかったらこうはならなかっただろう。
「強くなれたか?」
「私などアキラに比べたらまだまださ」
「そうか、でも訓練を見ていたがイヴが1番上手かったよ」
「ほ、本当か!?」
「あぁ、今度俺に魔法を教えてくれ」
「もちろんだ!」
徐々に打ち解け合うアキラとイヴ、ルルはそんな2人を微笑ましく見ていた。
「ようレントン、様子はどうだ?」
そこにイヴの父、宮廷魔術師団の団長ジールがやって来た。
レントンはジールに向けて一礼する。
「ジールさん、皆覚えも良く今年は粒揃いです」
「そうか、それは何よりだ」
レントンの報告にジールは上機嫌だ。
次にジールはアキラに話しかける。
「ようアキラ王、こんな所に何の用だ?」
「ははは、少し見学に」
ミネルヴァからジールはガサツだと聞いていたが、まさかの想像を超えて来た為アキラは苦笑いだ。
それが不快かと問われればそうでもない、むしろこのくらいの距離感の方がアキラとしても話しやすかった。
「そうか、まぁ気がすむまで見ていってくれ、、ん?」
ジールはイヴの違和感に気づく、それは妻オルティナと結婚する前に、オルティナがジールと話している時に見せた反応と同じな事に。
ジールはアキラとイヴを交互に見る、そして全てを悟るとジールの目は途端に鋭くなった。
「アキラ王よ、俺の娘に何かしたか……?」
「え?」
「……だから、何かしたか?」
メンチを切る様に顔を近づけるジール、その凄みにアキラは思わず後ずさった。
「お父様!やめてください!」
その光景を見たイヴはジールの服を引っ張る。
だがそんな事はお構いなしに、ジールは「お?コラ?」と言いながら更にメンチを切った。
エラリーエ女王がこの場に居たらジールは鉄拳制裁をくらっただろう、だがそんな好都合な事は起こるはずもなく、アキラは苦笑いを浮かべながら後ずさる。
レントンはジールを止めない、寧ろ心の内は「団長!その調子です!」と応援していた。
そこに救世主が現れる、それはミネルヴァだ。
「ふぇふぇふぇ、ジールよ、何しとるんじゃ?」
「げ!?婆さん!」
途端にジールは借りて来た猫の様になる、アキラはイヴパパにはミネルヴァ学園長が有効と即座に脳内に刻み込んだ。
その後はミネルヴァの説教が始まる、ジールは舌打ちしながらも黙って説教を聞いていた。
「すまないアキラ、お父様の事を嫌いにならないでくれ」
イヴとしてはアキラに自分の父親がめんどくさいと思われたら恋の障害になる、何としてもそれは阻止したかった。
「少し驚いたけど悪い人じゃ無さそうだし嫌いにはならないよ」
アキラは安心させる様な口調で言う。
暗かったイヴの表情はパァっと明るくなった。
そこに説教を終えたミネルヴァとジールが戻って来る。
「レントンもジールを止めなきゃダメじゃぞ」
「……すみません」
どうやらミネルヴァはどこでも顔が効く様だ、本当に何者なんだこのお婆さんは。
「全く……2人の恋路を邪魔するでないわい、それじゃワシはもう行く、ふぇふぇふぇ」
最後に特大の爆弾を置いて笑いながら去っていくミネルヴァ、ルルとイヴは湯気が出そうな程顔が真っ赤になり、アキラは「絶対遊んでるだろあの婆さん!!ふざけんな!!」と心の中で呪詛を吐く。
ーガシッー ーガシッー
アキラの両肩を片方づつ何者かが掴む、そして徐々に握力が強くなり指がめり込んで来る。
「「お話しようか?」」
ジールとレントンのダブルパパが額に青筋を浮かべニッコリと笑う。
(誰か助けてー!!!)
その後アキラの思いは誰にも届かなく、ルルとイヴが正気に戻るまでダブルパパの圧力は続いて行った。




