157.渾身の土下座
ラマダグェン法国と無事友好を結び3日後に式典が開かれる。
その前にアキラはリノア、イヴと会う事にした。
先ずはリノアが住むウルヴェン子爵邸へと向かった。
「ここか、めっちゃ豪邸じゃん」
リノアは金持ちなんだなと感想を抱きながら門番に話しかける。
「リノアの友達のアキラが来たと伝えてもらえます?」
「は、はい!!」
門番は声を引き攣らせ慌ててその場を去る、アキラはウルヴェン子爵に家を訪る事を予め伝えていた為門番も超VIPのアキラの事を知っていたのだろう。
少ししてウルヴェン子爵自らやって来る。
「お待ちしておりましたアキラ様、こちらへどうぞ」
畏まったウルヴェン子爵は深々とお辞儀をした、アキラはウルヴェン子爵と共に敷地内へと入る。
ーいらっしゃいませ、アキラ様ー
敷地内を進むと豪邸に入る扉の前で、ウルヴェン子爵に仕える執事とメイドが総出でアキラを出迎える。
中へ入るとウルヴェン子爵の妻リーリア、息子ライオネル、そしてリノアが待っていた。
ウルヴェンは家族を紹介していく、その都度皆深々とお辞儀をしているがリノアは何故かむすっとしていた。
客間に案内されふかふかのソファーへと座る、メイドが高級そうな紅茶とお菓子を配膳し一礼して去って行った。
「まさかアキラ様がリノアのご友人とは」
ウルヴェン子爵の表情はにこやかだ、貴族は人脈を何よりも大切にする、まさかリノアが他国の王族の友人を持っていたとは思わなかったのだろう、しかもその友人はとんでもない力を持っている、ウルヴェン子爵も会談で度肝を抜かれた貴族の中の1人だった。
「何が友人よ、連絡も寄越さないで」
リノアはボソと呟くがその声は皆が聞こえていた、途端にウルヴェン子爵とその家族に緊張が走る。
「リノア、態度を改めなさい」
リーリアは優しくリノアを諭そうとするが、リノアの態度は変わらない。
「ごめんリノア、反省しているよ」
10対0で自分が悪いと思っているアキラは只謝る事しかできない。
頭を下げるアキラを見てウルヴェン子爵は慌てている。
「父上、ここはとりあえず和解する為にアキラ様とリノアを2人っきりにさせてみてはどうでしょうか?私達がいれば話したい事も話せないと思います」
ライオネルはリノアを見ながら困った顔をして提案する。
それもそうだなと思ったウルヴェン子爵は頷く、そしてアキラとリノアを残し皆退室して行く。
室内に残った2人の間に暫しの無言が続いた。
(き、気まずい……)
怒ってるだろうとは思ったが、まさかここまでとは思わなかったアキラはどう弁明しようか頭を悩ませる。
「……私達の事忘れたのかと思ってたわ」
そんなアキラに向かってリノアは寂しそうに告げた。
その言葉にアキラの胸は締め付けられる。
「……忘れるわけないよ」
振り絞って出した言葉がそれだけだ、我ながら不甲斐ない事に情けなくなってしまった。
「そう……」
その言葉を後にまた無言の時間が続いた。
どうしようかとまた頭を悩ませるアキラはふとリノアの胸元を見る、学園祭準備の時にサリアを成仏させた事で手に入れたトゥルーティアーズを加工したペンダントが目に入った。
「そのペンダントの石、俺があげたやつ?」
「そうだけど……」
「大切にしてくれているんだなすごく嬉しいよ、それにとても似合ってる」
「そ、そうかしら?」
リノアは少し頬を赤くさせながらソワソワし始めた、ここに来て初めて見せる好感触を感じアキラは言葉で畳み掛ける。
「見ない内に更に可愛くなったなリノア」
アキラの言葉を聞いてピクンとリノアは反応した。
「ふん!ご機嫌を取ろうとしたってそうはいかないわよ!」
「いや、素直な感想だよ、謁見の間で思わず見惚れてしまった」
リノアのツインテールがぴょこんと揺れる、嬉しいと反応するのかはわからない。
「ほ、本当……?」
リノアは上目遣いでアキラを見る。
「あぁ本当だ、恋をすると綺麗になるって言うし恋人でもできたのか?」
「いないわよ!バカ!」
リノアの口調が強くなる。
地雷を踏んだかと思った焦るアキラをリノアからしてみれば「何でアキラが好きな事に気づかないのよ?」と問い詰めたくなっていた。
「相変わらずアキラはアキラね……」
ため息を吐くリノアは諦めた様に愚痴をこぼした。
そして最終手段に出る。
「ルルもアイリスもイヴも皆アキラの事が好きよ、もちろん私もね」
「へ?」
アキラは阿呆みたいに口を開け固まる、アイリスとは再開した時にわかったがまさかルル、リノア、イヴもそうだとは思っていなかった。
「友達の好きじゃないわ、異性としての好きだからね」
「…………」
「学園に居た時から皆そうだったわ、私達が涙を堪えてアキラを見送ったのにとうのあんたは連絡を一切寄越さない、この気持ちがわかる?」
「……すみません」
アキラはソファーに座るのを辞め自ら正座した。
「……あんなカッコいい姿見れば好きにもなるわよ、どう責任取るの?」
説教じみた声色でリノアは問い詰める、心なしかそのアキラの姿は小さく見えた。
「……責任と言われましても」
ーバンッー
リノアはテーブルを強く叩いた。
「ルルから聞いたわよ、あんた2人も恋人いるそうね?」
ゴゴゴとリノアの背後に薄らと般若が見えた様な気がした、あきら「ひぃぃ!」と引き攣った声を洩らす。
「心が張り裂けそうな思いでアキラの帰りを待っていたのに、あんたは恋人達とよろしくやってたのよね?」
アキラはこれ以上無いくらい額を床に擦り付けた、もしこの光景をウルヴェン子爵が見てしまったら泡を吹いて倒れるだろう。
「私が怒ってる理由がわかったでしょ?」
「わ、わかりますっ!!!!」
「女泣かせよね、私達の知らない所で他にも好きな人いるんじゃ無い?アキラはどうせどっちつかずで、その子達にも同じ思いさせているのでしょ」
リノアの言葉にアキラはピクンと反応する、図星なのがバレバレだった。
「はぁ……図星なのね、仮にも王様なんだからもっとしっかりしなさいよそこら辺」
「……面目無い」
この場にヴィクセンがいたら良く言ったと絶賛しているだろう。
「それでどうするの?」
リノアは寂しそうに告げる、心の内は全部ぶち撒けたこれでフラれても本望だった。
「……本当に俺でいいのか?」
「良いに決まってるじゃない……」
「もう少し国が落ち着いたら必ず4人を迎えに行く、だから今はこれで許してくれ」
アキラは立ち上がるとリノアの唇を奪う。
リノアは静かに目を閉じた。
少しして唇を離すと途端にリノアの顔が赤くなる。
「いきなりすぎるわよ!」
「これは俺なりの誓いだ」
急に男らしくなったアキラの表情にリノアの心はドキドキだ。
「……全く、迎えに来るって言ったけど、おそらく皆そっちにおしかけるわよ」
「ん?」
「当たり前じゃない、あれだけ待ったのにまた待たされるのはごめんよ、何かしら理由をつけてアクティースに行くわ」
「わ、わかった」
溜飲が下がったリノアの顔は穏やかになった。
そこにウルヴェン子爵達が戻って来た。
「どうやら和解が済んだ様だな」
ライオネルは妹の晴れやかな顔を見る、アキラの顔が疲れた表情をしている事はあえて触れなかった。
「そうだ!皆に紹介するね、私の恋人になったアキラよ」
リノアはアキラの腕に飛びつく。
これでもうアキラは後に戻れない、リノアの完全勝利に終わった。
「そうなったから、以後よろしく」
シャキッとしたアキラとにゃんにゃんしているリノアを見て、ウルヴェン子爵一同は「え?洗脳されてない?」と思いながら只々立ち尽くしていた。




