155.対面
思わぬハプニングもあったがアキラとヴィクセンはラクーリアへと戻る。
2日が経ちミネルヴァから返事が来たと報告を受けた。
「ふぇふぇふぇ、どうやらエラリーエ女王は話を聞きたい様だね」
「とりあえず第一関門突破だな、ありがとうミネルヴァ」
アキラは心の中でガッツポーズをする、おそらくミネルヴァが上手くアキラを売り込んでくれたのだろう、ミネルヴァに感謝の言葉を告げた。
「早速王都へと向かいましょう」
ヴィクセンの言葉にアキラは頷く。
「ワシも行って構わないかい?」
「「?」」
ミネルヴァからの思わぬ言葉にアキラとヴィクセンはキョトンとしている。
「なに、久しぶりに教え子と曾孫の顔が見たいだけじゃ」
それは建前でミネルヴァの本音は、何か面白いものが見れそうだと期待していた。
アキラはそれを快諾する、こうしてミネルヴァの同行が決まった。
(リノアの実家は王都に有る、宮廷魔術師見習いになったイヴも王都に居るし2人に会うのは王都に着いてからいいだろう)
2人に会うのを楽しみにするアキラ、早る気持ちを抑えながらも荷物を纏め早速皆を連れ王都に向かった。
夕暮れになる頃に王都に着く、護衛達は馬を預けに、ヴィクセンは部屋を借りに、アキラとミネルヴァはロビーで待つ。
「ワシの孫が宮廷魔術師団の団長をしていてのお、おそらくどこかしらで会うじゃろ、少々口は悪いが見逃してやってくれんか?」
ミネルヴァはジールの事を思い出しながら言う。
ジールはよく言えば表裏が無い、悪く言えばガサツだ。
エラリーエ女王はそんなジールを気にいっているが、アキラはどうかわからない。
「イヴの親父さんだろ?俺は特に気にしないから大丈夫だよ」
「すまんのお、ワシはこの後先に城に行ってエラリーエと会って来る」
「わかった」
そんな話をしている内に、宿を借り終えたヴィクセンが戻って来た。
皆自室に荷物を置きに行った後アキラ、ヴィクセン、ジェイド率いる護衛達はロビーに集まる、ミネルヴァは「行ってくる」と言って城へ向かった。
「よし、明日の最終打ち合わせをするか」
アキラの一言で皆の顔が引き締まる。
「おまえら、嘗められるんじゃねえぞ、気合い入れて行け」
ジェイドのドスの効いた言葉に護衛達は頷く、護衛が弱そうで頼りないと思われればそれを仕えさせているアキラが侮られる、それは最終的にアクティースの損害に至る。
「さて、いろいろと準備しましょうか」
ヴィクセンは何やら本を取り出すとページを捲りチェックする、それはエルフの知恵が書き連ねた本だ、おそらくそれが学園での指導で使う教科書なのだろう。
各々が最終チェックを済ませると、アキラを踏まえどのように会談を進めていくかの話し合いが進められるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぇふぇふぇ、久しぶりじゃの」
その頃ミネルヴァは謁見の間に居た、謁見の間にはエラリーエ女王とミネルヴァの2人だけで護衛も付けずに会う、それはエラリーエ女王がミネルヴァに絶対的な信頼を寄せている事を表していた。
王冠を付けたブロンドのロングヘアーに、煌びやかなローブを来た美しい女性が壇上から降りてくる。
「ミネルヴァ先生お久しぶりです、全く急な事で驚きました」
「すまんの、じゃがおそらくこの会談を流せば、ラマダグェン法国にとって最大の損失になると思ってのお」
「ミネルヴァ先生がそこまで言いますか……」
「エラリーエも驚くぞ、ふぇふぇふぇ」
「それは楽しみです、手筈通り準備はできています」
エラリーエ女王は子爵以上の貴族、宮廷魔術師団と宮廷騎士団の上位20名、そしてラフトリカ海洋貿易商会のヴィンセントと、ルル、アイリス、リノア、イヴを明日の会談に立ち合わせる予定だ。
「かなり急ぎましたよ」
「ふぇふぇふぇ、アキラへのちょっとしたサプライズじゃ」
ミネルヴァはアキラから手紙が来た時点で既に会談が決定する事を詠んでいたのだ、その時点でエラリーエ女王に皆を集めさせていた。
「……これだけやって拍子抜けだったら困りますね」
エラリーエ女王は若干の不安を滲ませる、所詮神樹国アクティースは建国したばかりの国だ、一体そんな国に何ができるのかと侮っていた。
「明日になればわかる」
そう言うとミネルヴァは只々笑みを浮かべる。
◇ ◇ ◇ ◇
そして翌日、アキラ一向は城へと向かう。
城へ着くと先触れが現れ「こちらへどうぞ」と言いながら誘導する、門の鉄格子が全て上がりきると、アキラの乗った馬車と護衛達は門を潜った。
城の雰囲気から歴史を感じる、それはラマダグェン法国が滅ぶ事なく今現在まで存在している証だ、正に強国だと見て取れる。
(着いたか……)
アキラとヴィクセンは馬車を降りる、そして護衛達を連れ城の中へと入った。
案内人の後を着いて行くと、これまた歴史を感じる重厚な扉の前に着く、おそらくこの先は謁見の間だろう。
案内人が扉を開ける、中に入ると多くの人達が居た、王座にはエラリーエ女王が座る。
(え!?何でリノア達も居るんだ!?)
アキラはリノアとイヴに視線を合わせる、2人はアキラを見て何か言いたげだか流石にこの場で勝手に発言などしなかった。
ルルとアイリスはアキラの堂々たる態度を見て見惚れている。
少ししてエラリーエ女王が王座から降りアキラの前に立つ。
「よくぞ参った神樹国アクティースのアキラ王よ、私はラマダグェン法国の女王、エラリーエだ」
「初めましてエラリーエ女王、俺の名前はアキラ、会談の場を設けてくれた事に感謝する」
アキラとエラリーエ女王は握手する。
「何やらおもしろいものを見せてくれるそうだが期待しているよ」
「ミネルヴァが何か言ったのかな?まあ期待に応えるよ」
アキラは苦笑いを浮かべる、ミネルヴァに視線を移すとニヤリと笑っていた。
アキラは(ハードル上げるなよ!)と心のなかで悪態をつく。
そして暫しの雑談の後エラリーエ女王は言う。
「早速会談と行こうか、さてまず神樹国アクティースの狙いを聞こうか」
「では私から述べます」
ヴィクセンが前に出ると、謁見の間が騒つく。
それはヴィクセンがエルフだからだ。
「その前にそなたはエルフか?」
「はい、内務局長を担っているヴィクセンと申します」
ヴィクセンは恭しくお辞儀をする。
「……もしや神樹国アクティースはエルフを味方に付けたのか?」
「はい、我々エルフはアキラ様に絶対的な忠誠を誓っています」
ヴィクセンの言葉に更に謁見の間は騒ついた。
どの国も成し得なかった事を、アキラは成し遂げていたからだ。
「……そうか、ん?どうしたリオルマよ?」
宮廷騎士団長のリオルマの顔色が悪い事に気づいたエラリーエ女王は、リオルマに問う。
「……失礼、貴殿の名はジェイドで合っているか?」
リオルマはジェイドを見る。
「そうだが、それがどうした?」
ジェイドからの返答で更にリオルマの顔色が悪くなった。
「どうしたリオルマ?何かあったか?」
「……伝説の傭兵、豪剣のジェイド」
リオルマは思わず呟いてしまう。
その名を聞いた誰もが驚愕していた、それほどまでにジェイドの武勇は知れ渡っている。
「……何故貴殿がここに」
リオルマは続けて問う。
「決まってるだろ、俺もアキラに忠誠を誓ったからだ」
「……であるか」
リオルマは戦慄した、ジェイドは覚えていないがリオルマはジェイドと戦った経験がある。
思いのままに名誉を手にしたリオルマが唯一勝てなかったのがジェイドだ、軽くあしらわれ止めも刺されなかったリオルマのプライドはズタズタに引き裂かれた、それからその事を思い出す度に蕁麻疹が出る程苦手意識を持ってしまった。
そんなジェイドが忠誠を誓うアキラはいったい何なのか、リオルマの心の内は恐怖と畏怖で埋め尽くされて行く。
だが表には決して出す事なくリオルマは定位置へと戻って行く。
(……後でリオルマに詳しい話を聞かなければ)
エラリーエ女王に新たな予定が加わる。
そして頭を切り替え再びヴィクセンの方へと向き直す。
「さて、話を戻そう、貴国の要求を聞きたい」
こうしてラマダグェン法国との会談が始まった。




