153.アイリスとの再開
授業の終わりを告げる鐘が鳴る、ルルはすぐ様身の回りを片付けるとアキラの元へ向かった。
「終わりました!」
その機敏な動きに女生徒達はポカンとしている、真面目なルルは授業が終わっても、わからなかった部分がある女生徒の質問に答えている事が日常だからだ、それが今日に限ってはこの有様だ。
「ははは、早いな」
真剣な表情をしているルルとは打って変わってアキラは苦笑いを浮かべる。
「それで今まで何してたんですか!?」
ルルは前のめりになりながらアキラを叱る様に問い詰める。
「いろいろあってな、今は神樹国アクティースと言う国で王様やってる」
「へ?」
思わぬ言葉にルルは理解が追いつかない。
そこにヴィクセンが入る。
「アキラ様の仰っている事は本当です、私はアキラ様の側近で内務局長を務めさせていただいているヴィクセンと申します」
ルルは知的そうなヴィクセンとアキラを交互に見る。
「ええーーーーーー!!!!!」
嘘では無いと察すると思わず大声を上げてしまったルル、そのおかげでまた女生徒達の注目が集まった。
「ルル、声大きいって!」
アキラの言葉で我に帰るルルは、恥ずかしさから頬を赤くする。
そしてアキラは今までの事を全て話した、どこで何をしたのか誰と出会ったのか、そして2人の恋人ルクレリアとイルームの事も……。
「……そうなんですか」
途端にルルの顔が暗くなると共に俯く、アキラに少しでも見合う様に勉強や女磨きなどを自分なりに精一杯頑張って来た、だがアキラは更に遥か遠くの存在になりおまけに恋人までいる、ルルの心の中は焦燥感やルクレリアとイルームに向けた嫉妬が入り乱れて混沌としていた。
(……淡い片想いですか)
できる男ヴィクセンは瞬時にルルの気持ちを悟った。
「アキラ様も2人の恋人だけで満足してもらっては困ります、私の娘フェルシエもそうですが、もっとたくさんの恋人を作って娶ってもらわねば王として失格ですよ」
ヴィクセンの話を聞いたルルは顔を上げた。
「え?何で急に?」
急なヴィクセンからの叱責にアキラは困惑している。
「今現在アクティース1番の問題は後継が居ない事なのですから、もっと自覚を持ってください」
「わ、わかったよ」
「きっとアキラ様の知らない所でも好いている女性がいると思いますよ」
そう言いながらヴィクセンはルルに向けて微笑んだ、ルルはヴィクセンの意図を悟ると微笑み返す。
まだまだ自分とリノア達の入る隙間が全然ある、その事を知ったルルの心の内は嘘の様に晴れやかになった。
「……諦めませんからね!」
「え?何が?」
「ふふふ、内緒です」
ルルの唐突な宣言にアキラは疑問を浮かべる、だがルルは笑みを浮かべるだけでそれに応えない、アキラへのちょっとした意趣返しだ。
「リノア、アイリス、イヴは今何をしているんだ?」
その3人の事も気になっていたアキラはルルに問いかける。
「リノアさんとアイリスさんは御実家で家の手伝いをしていて、イヴさんは宮廷魔術師の見習いになったと聞いています」
「皆それぞれの道に行ってるのか」
「絶対に皆に会いに行ってくださいね!!これは義務ですよ!!」
ルルの瞳の奥は燃えている様だ、これを破約したらかなり怒られるだろうと思ったアキラは絶対に行くと決意した。
「わかった、必ず行くよ」
「絶対ですからね!」
念を押すルルに向かってアキラは頷く。
そして暫く思い出話に華を咲かせその場を後にした。
学園を出て宿を取る、自室で誰から会いに行こうかとアキラは頭を悩ませる。
「うーん、港開発の件もあるしアイリスから行くか」
ルルからラフトリカ海洋貿易商会の本部がある場所を聞いていたアキラは、港開発をスムーズに始める事も兼ねて先ずはアイリスの実家に行く事にした。
そうと決まれば即実行に移す、アキラはヴィクセンを連れ都市の外へと出る、人気が無い所でヴェルサスを召喚しアイリスの実家がある都市ノリタナルへと向かった。
都市ノリタナルから少し離れた所でヴェルサスの背から降りる。
少し歩くと都市へ入る門に到着、門番はアキラの高貴そうな服を見てぎょっとしていた。
それを尻目にアキラとヴィクセンは中へと入った。
「へー、結構賑わってるね」
アキラはノリタナルに入ると辺りを見渡し感想を零す、流通が盛んなのか多岐にわたる人種が多く見られた、海に近い事もあり露店には多くの海の幸などが並んでいた。
ヴィクセンが店の店主からラフトリカ海洋貿易商会はどこにあるかを尋ねている、アキラはその間に露店で売られていたホタテの貝柱串を買い美味そうに頬張っていた。
少ししてヴィクセンが戻って来る。
「アキラ様、ラフトリカ海洋貿易商会はこの先の奥にある大きな建物だそうです」
「わかった、これヴィクセンの分ね」
アキラはもう一つ買っておいた串をヴィクセンに渡す。
「……これから商談もあるかもしれませんのに、全く……少しは緊張感も持ってください」
ヴィクセンは串を受け取ると貝柱に齧り付く、なんだかんだ言ってもやはり美味そうな匂いには負けるのだろうか。
小腹も膨れ、再びアキラとヴィクセンはラフトリカ海洋貿易商会へと向かった。
「おー、でけぇ……」
巨大な建物を見上げるアキラは側から見れば田舎者に見えるだろう。
「アキラ様、中に入りましょう」
ヴィクセンはアキラの背中を押す様に商会の中へと入った。
内部は多くの人が忙しそうに行き交っていた、邪魔にならない様アキラ達は隅を通り受付へと向かった。
「すみません、会長さんは今居る?」
「ヴィンセント会長なら外出しておりますがどちら様でしょうか?」
「俺の名前はアキラだ、アイリスの友達だから本人が居たら確認してみるといいよ」
「……少々お待ちください」
そう言うと受付嬢はその場を去って行く、暫くすると誰かが大急ぎでこちらへと向かって来るのを見てとれた。
「アキラさん!!」
それはアイリスだった。
アイリスはアキラ達の前で止まると、息切れを落ち着かせる。
「……アキラさん、会いたかった」
目に涙を浮かべながらアイリスはアキラの手をぎゅっと握った。
「おやおや、これはどういう事だ?」
そこに金色の髪を七三分けにし黒のスーツを着た男がやって来た。
「ヴィンセント会長、お帰りなさいませ」
受付嬢は流麗な動きでお辞儀をする、どうやらアイリスの父親の様だ。
「お父様、この方がアキラさんです」
アキラはヴィンセントに軽く会釈する、ヴィンセントは「ふむ」と言いながらアキラを頭からつま先までじっくり観察していた。
「とりあえず、ここで話すのも何ですから客室へと行きましょうか」
ヴィンセントの提案にアキラ達は頷く、そしてアイリスも一緒にアキラとヴィクセンはヴィンセントの後ろを付いて行った。




