152.懐かしきアルフィリオ魔法女学園
ー誰かしら?ー
ーえ、エルフ!?ー
馬車を降り敷地内を歩くアキラ一向は注目を浴びていた。
アキラの煌びやかな王服と、ヴィクセンの尖った耳がより拍車を掛けていく。
そんな事がありながらも教員に学園長室へと案内される、護衛を外に待たせアキラはヴィクセンを連れ中に入った。
「ふぇふぇふぇ、よく来たね」
アキラの姿を見てミネルヴァは笑みを浮かべる。
「久しぶりミネルヴァ学園長、隣のエルフは俺の側近のヴィクセンね」
ヴィクセンはアキラの紹介の後にお辞儀をした。
「よろしく、それよりも見ない内にえらく男前になったねえ、驚いたわい」
「ははは、いろいろあってね、今では王様やってる」
「噂は聞いていたさ、まさか本当にアキラじゃったとはね、アキラも忙しい身じゃし早速本題に入ろうか、そこの椅子に座っておくれ」
アキラとヴィクセンは用意された椅子へ、ミネルヴァと向かい合う形で座った。
「さて、神樹国アクティースはラマダグェン法国と友好を結ぶ事が目的で大丈夫かい?」
「ああ、最終目標はそれだ」
ミネルヴァの言葉にアキラは頷く。
「わかった、友好を結ぶ理由を聞いていいかい?」
「それは私から、1番の理由は神樹国アクティースの後ろ盾になって欲しいからです」
その後にヴィクセンは事前にアキラと擦り合わせた内容を簡潔に伝える。
ミネルヴァはそれを只黙って聞いていた。
「なるほどねえ、理由はわかったわい」
「……やっぱ厳しい?」
ミネルヴァの微妙そうな反応を見たアキラは不安になった。
「それはアキラの口説きしだいじゃわい、とりあえず城に手紙を出さんとのお」
「ありがとう、気になったんだけど王族の知り合いって誰なの?」
「ん?エラリーエ女王じゃけど?」
「「ブフォ」」
まさかの現女王にアキラとヴィクセンは吹き出した。
ミネルヴァの顔の広さは底なしかと戦慄すら覚える。
「女王と知り合いってまた何で?」
「エラリーエはワシの教え子じゃ」
「女王が教え子って……ほんとミネルヴァ学園長は謎だらけだな」
「ふぇふぇふぇ、伊達に永く生きとらんわい」
アキラの呆れた顔を見て、ミネルヴァは上機嫌に笑っていた。
「……失礼ですが本当にヒューマンですか?」
300年以上生きている自分より貫禄がある為、思わずヴィクセンはミネルヴァに尋ねてしまう。
「正真正銘ヒューマンじゃ、ワシをなんじゃと思っておる」
((魔女だと思ってる))
アキラとヴィクセンは偶然にも同じ印象を思い浮かべていた、無理もない、ミネルヴァの見た目は絵に描いたような魔女の姿だからだ。
「何を思い浮かべているかは聞かないでおくわい、それより城から手紙の返事が来るのに少し時間が掛かるのじゃがどうする?」
「んー、どうしようかな……」
アキラは腕を組みながら悩んでいる。
「アキラ様、それならご学友に会われてみてはどうでしょうか?」
「それ考えてたけど、今何処に居るかわからないんだよね」
アキラもヴィクセンと同じ事を考えていたが断念した。
それを聞いていたミネルヴァが会話に入る。
「ルルちゃんならこの学園に居るぞ」
まさかの情報にアキラの目は見開いた、そして前のめりになりながら問いただす。
「マジで!?また何で!?」
「教員実習生として研修中じゃわい」
アキラを落ち着かせる様に詳細を話した。
ルルは卒業後、両親を説得し教員になる道を選んだそうだ。
「……夢を掴んだんだな」
あのルルが自分の意志を貫き通した事に、アキラはどこか感慨深くなった。
「この時間は授業中じゃったのお、ちなみにルルちゃんが居る教室は一年四組じゃ、少し顔を出してみたらどうだい?」
「え?いいの?」
「ふぇふぇふぇ、あまり授業の邪魔をしない条件付きじゃがな」
ミネルヴァの粋な計らいにアキラの顔は綻んだ。
「ありがとう、早速行ってくる!ヴィクセンはどうする?」
「私もヒューマンが行う授業に興味があります、ご一緒してよろしいですか?」
学園で教える魔法がどの程度なのかをヴィクセンは知りたい様だ。
「わかった、一緒に行こう」
そう言うとアキラは飛び出す様に部屋を出た、ヴィクセンもミネルヴァに一礼した後退室する。
ミネルヴァはそんな2人を微笑みながら見送った。
早る気持ちを抑えつつもアキラは教室へと向かう、皆授業中な為廊下にはアキラとヴィクセン以外誰も見掛けなかった。
そして一年四組の教室の前に着く、鼓動が高鳴りながらもとりあえず少しだけ扉を開け中を除いてみた。
ーこの魔法の特徴はー
扉を開けるとルルの声が聞こえアキラのテンションはMAXになる、そして教壇に立つルルを見る、髪型や背丈は変わっていないが黒縁メガネを掛けたルルの姿が見てとれた。
「アキラ様、中に入らないのですか?」
扉の前で右往左往しているアキラを見て、ヴィクセンは苦笑いを浮かべる。
「どんな顔して会えば良いかわからない」
「普通にしていればよろしいと思いますよ、取り繕う必要などございません」
「……わかった、中に入るぞ」
ヴィクセンからアドバイス受けたアキラは意を決して教室内に入る。
誰かが入って来た事に気づいた生徒達からの注目が、アキラとヴィクセンに集まった。
「ん?皆さんどうし……」
本を持ちながら黒板に図形を描いていたルルは、生徒達の騒めきに気づき振り返る、そしてアキラの姿を見た途端に固まった。
無意識に本を落としてしまうルルにアキラは久しぶりと言いながら、軽く手を挙げる。
「……アキラさん」
そう呟いたルルは一目散にアキラの元へと駆け出す、そしてその勢いのままアキラに抱きついた。
アキラは思わずルルを抱きしめ返した。
ーえ!?ルル先生の彼氏!?ー
ー嘘!?全く男の気配無かったのに!?ー
ー待って、ルル先生の彼氏結構イケてるよねー
ーていうか、隣の人エルフよね!?ー
抱き合う2人を見た生徒達は更に騒めき始めた。
ミネルヴァから授業の邪魔をしないという約束を早速破ってしまい、ヴィクセンは物憂げな表情だ。
「アキラさんのバカ!!いったいどこで何してたんですか!!」
手紙すら送って来ないアキラにルルは今まで言いたかった事をぶつけた、アキラはそんなルルに平謝りする。
「ごめんいろいろあってね、とりあえず一旦離れようか、生徒達が見てるよ」
周りを見渡したルルは、抱きつく姿を見られている事に気づくと途端に顔が赤くなった、そして慌てて距離を取る。
「授業が終わるまで待つよ、後ろの席で見てていい?」
「恥ずかしくて緊張しますけど、アキラさんが見たいなら……」
目を離した隙にまた何処かに消えてしまったら嫌だ、そう思ったルルは恥ずかしい気持ちを押し殺した。
アキラとヴィクセンは1番後ろの席へと着席する、隣に座る女子生徒はヴィクセンの端正な顔立ちに見惚れていた。
「そ、それでは授業を再開します!」
騒つく女生徒達を何とか落ち着かせたルルは、再び本とチョークを手にした。
女生徒達は何倍も明るくなったルルの表情を見て、やはり彼氏なのかと推測しては羨ましがっていた。




