149.マタタビ商会と晩餐会
第二回亜人移住面接が無事終わったのも束の間、夜はマタタビ商会の会長、幹部達との晩餐会がある。
前世のサラリーマン時代にもこういった経験はいくらでもしてきたアキラは、特に気負う事なくマタタビ商会へと向かった。
少ししてマタタビ商会に着く。
「アキラ様、ようこそいらっしゃいました」
煌びやかなドレスを着たイルームがアキラを出迎えた。
イルームはアキラの腕に自分の腕を絡ませる、毎度の事ながらスキンシップが激しい。
免疫がついたのか前と比べれば特に気にしなくなった、寧ろエスコートしながらイルームと一緒に歩く。
「そういえばイルームの両親と会うのは今回が初めてだな」
「お父様もお母様も忙しい身なのです、アキラ様とお会いできるのを楽しみにしていましたよ」
イルームはそう言うと笑みを浮かべた。
働き者なんだなと呑気にしているアキラはイルームの思惑を知らない。
イルームの狙いは家族絡みの付き合いをする事で、よりアキラに結婚の意識を持たせる事だった。
もしアキラにその気が全く無いのなら、この激しいスキンシップを何処かで止められていただろうとイルームは考える、イルームの考え通りルクレリアの気持ちを知ったアキラも悪い気はしていなかった。
話をしている内にVIP専用の客間へと着く。
中に入ると賑やかな話し声が止まり、皆立ち上がる。
「アキラ様をお連れしました」
イルームはそう言うとアキラを指定の席へ案内する。
それを見計らいミケ柄の猫人が声を挙げた。
「お初にお目にかかりますアキラ様、私はマタタビ商会の会長を務めるアルームと申します」
アルームは深々とお辞儀をする。
「アルームの妻、ユーリと申します」
大人な色気を漂わせるヒューマンのユーリも、アルームに倣いお辞儀をする。
ユーリとイルームはどことなく似ている、きっとイルームの美しさは母親譲りなのだろう。
「次女のウルームと申します」
活発そうな人型猫獣人の女の子がぺこっとお辞儀をした、そして興味深々でちらちらとアキラを見ている。
「アキラはん……やないな、今はアキラ様か、お久しゅう」
学園都市ラクーリアで出会った虎柄猫人のエルームが不慣れそうにお辞儀する、アキラは手を挙げそれに応えた。
オルームとは度々顔を合わせていたので紹介を省く。
「神樹国アクティースの王であるアキラだ、マタタビ商会には建国当初から我が国に貢献してくれている事を感謝する」
アキラの堂々とした態度が様になっていた。
「ありがたきお言葉恐悦至極でございます、アキラ様もお忙しい身、早速晩餐会としましょう」
そう言うとアルームはパンパンと手を叩く。
するとメイドがコース料理のオードブルを配膳し出す、全て終わると一礼して後ろに控えた。
その後にシェフが前に出る、ふと見るとシェフは静子だった。
「オードブル、トマトと生ハムのブルスケッタでございます」
静子は料理の説明をした後、同じ様に後ろに下がった。
こういう事をやりたかったのか、その目は今までで1番イキイキしていた。
「おいしそー!」
まだ代表のアルームの挨拶が残っていたが、ウルームはパクパクと料理に手をつけ始めた。
慌ててユーリがそれを止めようとする。
「ウルームちゃん、料理は美味しい?」
「アキラ様、すごく美味しいですよ!」
無邪気な笑顔にアキラの顔も綻ぶ。
「皆提案がある」
「……提案ですか?」
アルームはアキラの言葉に首を傾げた。
「今日は無礼講でいこう、好きな様に振る舞ってくれて構わない」
「で、ですが……」
思わぬ言葉にユーリは戸惑っていた。
「ふふふ、お母様、アキラ様がそう言っているのです、無礼講でいいじゃありませんか」
母のおどおどした姿を見てイルームはクスクスと笑う。
「さすがアキラはん、堅苦しいのは苦手や」
エルームは息を吐く。
「アキラはんがそう言うても、エルームは限度を忘れてはあかんで」
オルームは早速無礼講を始めるエルームを戒める。
「わかりました、アキラ様がそうおっしゃるのなら」
賑やかになりつつある状況にアルームは物憂げだ。
スープ、ポワソン、ソルベを食べ終えた頃には酒も入った事で、皆と急速に打ち解けていった。
「ほほう、港を作る予定なのですか」
「ああ、近い内には着手する予定だ」
アルームはアキラのグラスに酒を注ぐ。
「本当に恵まれた土地ですね、将来アクティースは世界有数の大国になるやもしれませんな」
「ははは、そうなったら嬉しいよ」
「港を作るにあたり何か必要なものはございますか?」
「んー、そこら辺はまたヴィクセンと話してから決めるよ」
「お父様、お仕事の話はそれまでにしてもっと楽しみましょう」
「そうよあなた、性根逞しいのも程々にね」
ほろ酔いのイルームとユーリが話に入り込んで来た。
「あの2人が酔うとめんどくさいで」
「エルーム兄、ワイに介抱を押し付けるのは無しやで」
「「聞こえてるわよ」」
小声で話すエルームとオルームに、ユーリとイルームは凄みのある笑顔を見せた。
地獄耳すぎやろと言いながら2人は苦笑いを浮かべた。
お腹いっぱいになってしまったウルームはミニライムと一緒に遊んでいる。
「そういえばイルームはアキラ様と婚姻を結べたのかしら」
「もう少しかかりそうですわ」
「せっかくそんな武器があるのだからもっと活用しなさい」
ユーリはイルームの大きな胸を指差した。
「もうお母様ったら」
「最悪、裸で襲いなさい」
(……丸聞こえなんだけど)
わざと聞こえている様に話しているかはわからないが、姦しい話題が聞こえアキラはタジタジだ。
「申し訳ございません、妻と娘が困らせてしまって」
「なんとか大丈夫だ」
「ですがアキラ様がよろしければ、娘をいつでも迎えに来ていただいても私は一向に構いません」
実際アキラと結婚すれば将来安泰な為、アルームもちゃっかりアピールする。
(おまえもかいっ!!)
アキラは心の中で盛大にツッコんだ。
各々が楽しむ中晩餐会も終わりが近づく。
「アキラ様、イルームを家まで送って行ってはいただけませんか?」
ユーリは露骨に困った顔をしていた。
イルームもアキラにもたれかかりお願いしますと耳元で囁く、心なしかアキラのアキラが元気になった様な気がした。
「わ、わかりました」
「私も一緒に行……」
ユーリはウルームの口を咄嗟に塞ぐ、そしてほほほと笑いながら引きずる様に部屋を出た。
エルームとオルームは親指を立てがんばれと言うとニヤニヤと笑う、アルームはキリッとした目で娘をよろしくお願いしますと言う、そのよろしくお願いしますにはきっといろんな意味が込められているのだろう。
アルコールのせいかイルームの火照った体が少し汗ばんでいる、それを目にしてしまったアキラはゴクリと生唾を飲み込んだ、そしてアキラのアキラが更に元気になった様な気がした。
そして4人を見送り少ししてアキラはイルームを連れ外に出た。




