148.亜人移住面接 Part2
今日は第2回亜人移住面接がある。
各種族の長達は外に控え、アキラとヴィクセンは古屋の中で椅子に座り待機する。
少しして準備は整い早速面接は始まった、1人目の長が失礼しますと言いながら入室して来る。
「始めまして、私の名はジュカと言います」
そう言うと蛇人族の長ジュカは深々と頭を下げる。
下半身は蛇、上半身は人の姿をした種族だ、ラミアの目は魔眼であり同族以外目を合わせた者は石化する、面接の為目隠しているが何も見えないわけでは無い。
生物の体温を感じる赤外線感知器官と、振動を感知する触覚が異常に発達している為どの生物よりも危険察知に長けている、目隠ししていてもまるで見えているかの様に行動できるのだ。
「どういった理由でアクティースに移住を決めたのですか?」
ヴィクセンは質問を投げ掛ける。
「アクティースの庇護を得る為です」
そう言うとジュカは暗い表情を見せた。
「庇護?」
アキラは首を傾げる。
「はい、私達の皮を狙われ多くの同胞が殺されました……」
ラミアの蛇皮は高値で取り引きされる、その為多くの闇ギルドに雇われたハンターが一攫千金を狙いラミアの住処を襲撃した。
本来それは世界的に違法とされているが、裏社会に巣食う闇ギルドにはそんな道徳など持ち合わせてはいない。
「でも何故アクティースに?もしかしたら俺達だって悪人かもしれないよ?」
「ふふふ、リザードマンの長に聞きました、アキラ様は素晴らしい人だと」
ジュカはアキラの吹っ掛けに、ニコニコと笑っている。
「え?ゾゴと知り合いなの?」
「はい、部族を引き連れて流浪している時に、食糧を分け与えた事があります」
「そうなんだ、世間は結構狭いんだな」
そう言うアキラの中でラミアの好感は爆上がりだ、アクティースに移住してくるなら悪人より善人の方が良いに決まっている。
「うん、ラミアの移住を認めるよ」
「本当ですか!?」
嬉しいのか、ジュカの尾がピンと伸びる。
「あぁ、これからよろしく、それとどこに住みたいとか希望はある?」
「でしたら、沼地が良いです」
「わかった、ヴィクセン、後で案内してやってくれ」
「わかりました」
ヴィクセンはそう言いながらメモ帳に予定を記入した。
ルンルンで退室するジュカと入れ替わりで、2人目の長が入室して来る。
「初めまして王よ、私の名前はヒュンメと言います」
翼人の長ヒュンメは、片膝を突き頭を下げた。
見た目は人だが腕は翼、足は鳥特有の趾になっている。
ハーピィは飛行速度が速く群れで狩りをする、また同胞を殺されたら地の果てまで追いかける程執念深さが強い。
「先ずはお立ちください、それでは移住を決めた理由をお聞かせください」
ヴィクセンの言葉にヒュンメは立ち上がると頷く。
「一重に言えば縄張り争いに負けたからです」
「戦ってたの?」
「はい、鳥人との長年の争いに敗北しました」
ヒュンメ率いるハーピィが住んでいた場所は正に弱肉強食がより顕著で、魔物が多い事もさる事ながら1番の厄介点は鳥人との諍いが絶えなかった事だ。
150年近く争い続けていたが、近年鳥人側に多くの屈強な戦士が生まれた事でとうとう住処を追われてしまった。
「なるほどね、アクティースの情報は誰から聞いたの?」
ヒュンメから詳細を聞き納得すると、アキラは更に質問する。
「たまたま上空を飛んでいた時に商人が話をしているのを耳にして、その商人に詳細を聞きました」
ヒュンメの表情が少し強張る。
(……何か様子が変だな)
アキラはヒュンメの些細な変化を見逃さなかった。
「……本当に?」
そう言いながらヒュンメの目を見つめる。
少しして唐突にヒュンメは頭を下げた。
「……申し訳ございません、嘘をつきました」
「本当の事を聞きたい」
「本当は商人を襲いました」
ヒュンメは食糧を運んでいた商人を襲い、商人の手帳に書かれていたアクティースの情報を見て存在を知った事を話す。
その事を知られたら、アクティースの移住を見送られると思い嘘をついた。
「「…………」」
アキラとヴィクセンは案の定苦い顔をする。
「その商人はどうなりました?」
鋭い目をしたヴィクセンが問い掛ける。
「決して殺してはいません!!気絶したので放置しました!!」
ヒュンメは必死にそう訴える、だが先程嘘をついてしまった為その言葉を信じていいのかわからない。
「んー、その商人の見た目は?」
「……猫人でした」
「おそらくマタタビ商会だな、今からヴィクセンはイルームに襲われた商人がいたか聞いてきてくれ」
「わかりました」
そう言うとヴィクセンは退室する。
その間アキラはヒュンメにどういった生活をしていたのかなどを聞いて過ごした。
暫くしてヴィクセンが戻って来る。
「ただいま戻りました」
「それでどうだった?」
「確かに襲撃を受けた者がいたそうです、その者はヒュンメの言う通り気絶しただけで軽傷だそうです」
「わかった、ヒュンメの言った事は本当だったな」
「……申し訳ございませんでした」
そう言うとヒュンメはしょぼんと項垂れていた。
「どうして襲撃したの?」
「……同胞が飢えていたからです」
魔物を狩って食べていたが多くの同胞を養うにも限界がある、日に日に皆痩せ細っていったそうだ。
「……まぁ、同情の余地はあるか」
「アキラ様どうなさいますか?」
「アクティースで受け入れるよ」
「……本当ですか!?」
俯いていたヒュンメの顔が明るくなる。
「その代わりその襲撃した猫人に謝る事、それと暫く無償でマタタビ商会の手伝いをする条件でだ、食った分は働いて返してね」
「……わかりました、本当にありがとうございます」
ヒュンメは涙を浮かべている。
少しして落ち着くと退室した、入れ替わりで最後の長がやって来る。
「初めまして王よ、私の名前はメルティナと言います」
「ん?ヒューマンだよね?」
アキラはメルティナの姿を見て疑問を浮かべる、どこからどう見ても普通の人だ。
「いえ、私は人魚です」
マーメイドは滅多に人前に姿を現さない、海深くに住んでいる事くらいしか生体がわかっていない。
一説にはマーメイドの肉を食べると不死になれるという噂があるだがその噂はデマであり、発生源はマーメイドが薬の精製に長けている為それに尾ひれがついて徐々に捻じ曲がった形に成りあられも無い噂になったそうだ。
「でも足生えてるよね?」
「これは人魚の秘薬による効果で、一時的にですが足を生やす事ができます」
「すごい秘薬だね、驚いたよ」
驚くアキラに、ふふふとメルティナは笑顔を見せる。
機を見てヴィクセンが話を戻す。
「ではアクティースに移住したい理由をお聞かせください」
「はい、アクティース周辺の海域に食糧が溢れているからです」
「「そうなの(ですか)?」」
アキラとヴィクセンは思わぬ情報に驚く。
「たまたま近くを通り掛かったのですが、まさか見捨てられた地周辺の海域が一変しているなんて驚きました、興味本位で近づいてみたら豊富に海の幸が有り更に驚きましたよ」
(これを生かさない手は無いな……)
どのみちアキラの考えの中に港を作る計画があった、アクティース周辺の海域も豊かになっていたのは嬉しい誤算だ。
漁業が盛んになれば更にアクティースは潤うだろう、農業、鉱業、漁業、林業それら全てができるとは、ユグドラシルに感謝してもしきれない。
「マーメイドの移住を受け入れる」
「え?よろしいのですか?」
アキラの早すぎる決断に、メルティナはキョトンとした顔をする。
「受け入れる代わりに、アクティース周辺の海域の探索と警備をお願いしたい」
密漁を防ぐ事と、更なる調査を第一優先に考えた。
「お安い御用です、精一杯努めさせていただきます」
「よろしく頼む」
一礼するとメルティナは退室する、これで全員の面接が終わった。
「アキラ様、思わぬ情報が手に入りましたね」
そう言いながらヴィクセンの顔が綻ぶ。
「あぁ、これからまた忙しくなりそうだな」
同じ様にアキラの顔も綻んだ。
こうして第2回亜人移住面接は旨い結果に終わった。




