146.アマテラス
初めての戦争を圧勝したアキラ達はウォーガレフ城に戻った。
戦後処理を済ませる為に皆会議室に集まる、アキラの隣にはゴードンとヴィクセンが控える。
バルムス王を筆頭にウォーガレフ王国側の貴族達は皆顔が青い、それは神樹国アクティースの軍事力を思い知ったからだ。
味方ながらも戦慄する強さに、会談で見せた態度を只々後悔していた。
「……お主最後に会談で言いかけていた事があったようじゃが、何て言おうとしたのじゃ?」
そう言いながらゴードンはバルムス王を見る、本当は宣戦布告をしようとしていた事はわかっていたが、これまでの意趣返しする為にあえて話題に出した。
バルムス王の顔は更に青くなる、額から脂汗が滴る程に。
そんなバルムス王を見てグリンドが意を決して前に出た。
「……勘弁してくださいガザレフ前王よ、もう私達は何も抵抗しません」
ゴードンからしたらほんのイタズラのつもりだったが、グリンド達からしたらこれ程タチの悪いものは無い、これ以上バルムス王が独断で宣戦布告をしようとした話を掘り下げないで欲しかった。
「……まあ良いじゃろ、それで属国になるのか?」
ウォーガレフ王国側の陰鬱な表情を見れて一先ず満足なゴードンは、これで良しとし話を切り替えた。
ゴードンの問いの答えは既に出ている、今回の戦争の活躍は9割方アクティースに分配が上がる、ここでごねて属国になる事を反故にしたらその力は次はウォーガレフに向けられるだろう。
「……約束だ、属国になろう」
そう言うとバルムスは俯く顔を上げる、会談での強気な態度は嘘の様に消えていた。
それとは裏腹に心の中には不安が渦巻いていた、属国になるという事は無理難題を吹っ掛けられてもNOと言う選択肢は無いからだ。
バルムス王はアキラを見る、その腹の中にはどんな邪悪なものを飼っているのか考えていた。
どの国の王も自国の発展の為なら冷酷な決断を平気でする、現に自分もそうして来たからだ。
自分がアキラの立場なら属国と言う名の奴隷国にするだろう、財源を搾り取り最悪王家を解体する事を考える。
「……1つお聞きしたい、アキラ王はウォーガレフ王国をどうなさるおつもりですか?」
バルムス王の意を汲み取ったかはわからないが、今1番バルムス王が聞きたかった事をグリンドが先に質問した。
グリンドの心の内はこの国に止めを刺すなら早く刺してくれという半ば諦めの心情だ。
「え?開発者を派遣して欲しいだけだけど?」
ーえ?ー
ウォーガレフ王国側の全員が呆けた顔をする。
「……それだけですか?」
「他に何かあるの?」
アキラはキョトンとした表情をする。
それを見たグリンドはフル回転で思考を巡らす、これは罠なのかそれとも素なのかと。
静寂する会議室内に、唐突に笑い声が響き渡る。
「わっははは!ここまで来ると大物だなアキラは!」
その笑い声の正体はゴードンだ、この喜劇の様な状況に笑うのを耐えられなかった。
「何故属国となったウォーガレフ王国から金を領土を民をむしり取ろうとしない?今ならこやつらは何でも言う事を聞くぞ?」
確信をついたその言葉に、ウォーガレフ側の者達の表情は強張る。
「なんかそういうの好きじゃないんだよね、俺の国に危害を加えない様なら仲良くするさ」
アキラは即答する。
その言葉を聞いてゴードンとヴィクセンは柔らかく微笑んだ。
この世界においてそんな崇高な考えを持つ王は、きっとアキラ只1人だと思ったからだ。
王としてその考えは失格だが人としては最高の在り方、その性格だからこそ人が集まりそして慕う。
それは正に光を照らす太陽の様だ。
「聞いたかお主ら?これがアキラじゃ」
ゴードンは自分の事の様に誇らしげだ。
バルムス王は静かに涙を流す、アキラと自分を比べると人として自分がちっぽけで汚れているかを思い知らされたからだ。
そして同時に感動もしていた、生涯の友になりたいとすら思っている。
「……アキラ王よ」
バルムス王は涙を拭いアキラを見据える。
「ウォーガレフ王国は何があっても神樹国アクティースの味方になると誓おう」
決意を胸にバルムス王はそう告げる。
グリンド達貴族も皆同じ心境だ、その瞳の奥は燃えている。
「俺も誓おう、ウォーガレフ王国を友好国として共に歩んで行く事を」
アキラとバルムス王は堅い握手をする。
そして会議室は歓声に包まれた。
◇ ◇ ◇ ◇
3日後属国ではなく友好国となった祝いの式典が開かれた。
ウォーガレフ王国城ではパーティが開かれ、皆盃を交わし合う。
バーカウンターで火酒を飲むゴードンの横にバルムス王がやって来た。
「……兄貴」
「その呼び方は久しぶりじゃな」
「今まですまなかった」
そう言うとバルムス王は深々と頭を下げた。
「何じゃ急に?」
「……俺は自分を誰よりも優れていると勘違いしていた」
「…………」
ゴードンは何も言わずグラスに入った火酒を呷る。
「兄貴を超えたかった、いつも親父に褒められる兄貴が羨ましかった、そしていつしか兄貴に対抗意識が芽生えていた、それで自分の政策の方が正しいと証明する事で兄貴より優れていると思いたかった」
バルムスもグラスに入った火酒を呷る。
「お主はいつも親父に怒られていたからの、もっと先を考えろとな」
「……ははは、耳が痛いぜ」
バルムス王はそう言いながら苦笑いを浮かべる。
「最初は上手く行っていた事が更にその思いに拍車を掛けた、だが時が経つに連れ国が傾き俺の政策は愚策だと思い始めていたが、それを認めず強情になる事でちっぽけな俺を守っていた、認めてしまえば俺は只のバカだからだ」
「……確かにそうなるの」
「あぁ、だが目が覚めたよアキラ王に会って、優れているとかどうでもよくなった、背伸びせずあるがままの自分を受け入れるよ、そしてバカはバカなりに泥臭く足掻いてこの国を立て直すさ」
「……全く、バカな弟じゃ」
バルムス王の穏やかな顔を見て、ゴードンは微笑んだ。




