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145.開戦

ザフグリエ連邦国軍の女性指揮官ヴァネッサは、戦場を見渡していた。

自軍の兵は16000、敵軍の兵はざっと見て12000だと推測する、そして敵軍の兵が萎縮している間に短期決戦に持ち込む腹積りだ、さすが歴戦の将というべきか経験豊富だ。



「進めー!!」


剣を掲げ号令するヴァネッサ、それを聞いた兵達が雄叫びを上げながらウォーガレフ王国軍へと駆け出した。

ウォーガレフ王国軍も負けじと雄叫びを上げ迎え撃ち交戦が始まった、だがここでヴァネッサにとって予想外の事が起こる。



「うぉぉぉぉぉ!!」


大剣を持った男が単騎で突っ込んで来た、そして縦横無尽に自軍の兵を薙ぎ倒して行く。



「あ、あれは……」


ヴァネッサはその男を鮮明に覚えていた、初めてその男を戦場で見た時は心底肝を冷やし絶対に戦ってはいけないと脳裏に刻みつけた程に。



「……なぜ豪剣のジェイドがいるんだ」


ヴァネッサは絶望しながらそう呟いた。


◇ ◇ ◇ ◇


ジェイドが先陣を切るとアクティースの兵達もそれに続く。

ジェイドからの指示はただ1つだけ、"好きに暴れろ"だった。

陣形や作戦を考えたが2000の兵だけではあまり効果は望めない、かといってウォーガレフ軍と足並みを揃えても逆に動き辛い、付け焼き刃な事はせず個々の能力を生かす事にした。



「アレイ行くぞ!」


「もちろんだよカム!」


アレイのソバットに合わせカムの飛び蹴りが繰り出される、それをくらった敵兵達は宙を飛んだ。


アクティース軍で天才の狐兄弟と言われるカムとアレイは、ジェイドを囲もうとする敵兵をシルヴィア直伝の体術で蹴散らしていく。

頭蓋を砕き、首を折り、内臓を内側から破裂させる、それをくらう敵兵達は悲鳴を上げていた。



「「「ぐぉぉぉぉぉ!!」」」


ゲンガ、ゲンブ、ゲンジのジャイアント三兄弟は各々の武器を振るう、重鎧部隊は重厚な盾を構えるが盾ごと敵を吹き飛ばす。

盾はもちろんの事鎧もひしゃげて重鎧などあって無い様なものだ。

その圧倒的なパワーに臆した兵達は、踵を返すと我先にと逃げ出した。


それを皮切りに次々とアクティース軍の兵達は交戦を始める、ヒューマン、獣人、魔人、亜人の混成軍を見たザフグリエ軍の兵達はその異質さに驚愕している。


ヒューマン、ドワーフ、獣人、魔人が居るのはまだわかる、だが何故エルフが、リザードマンが、フェアリーが、ジャイアントが居るのかわけがわからない。

それら部族は多種族との馴れ合いを滅多にしない、それが手を取り合いながら戦っているのだ。



「さすが風人の風魔法ですな」


「エルフ族の魔法もこれほどとは」


エルフと風人の男達が笑い合う、幾つもの大竜巻が戦場を走り多くの敵兵達を巻き込んで行く。



「ワレラハツヨイゾ」


リザードマンの男達は独自の文化から生み出した武器を振るう、それは森のキノコや虫から取れる猛毒を応用した武器だ。

敵兵達は槍の先端に付いた猛毒に体を侵され、緑色の顔をし泡を吐きながら倒れる。



「私達の幻惑魔法に耐えれるかしら?」


フェアリーが放つ幻惑魔法は幻覚を見せつける、味方が急にアンデットに様変わりしパニックになった敵兵達は同士撃ちを始めた。


特殊な力を持たない兵達も負けてはいない、アキラのジョブスキル【帝の鼓舞(ゼーロス)】によって力を底上げされた事により、各々が難無く敵を葬って行く。

仮に怪我を負ってもミニライム達がすぐに完全回復させる為、もはやアンデットもビックリの不死身の軍だ。



「チッ、雑魚が」


ハヤテの周りには血塗れの敵兵達の屍が積み上がっていく、中にはそれなりに名のある将もいたがハヤテにとっては皆等しく雑魚だった。


「隙ありー!!」


1人のザフグリエ兵が死体のフリをしてハヤテに奇襲をかける。


「絶妙剣 ー桜花ー」


だがハヤテの華麗な剣捌きによって死体に成り果てる、遠くでそれを見ていたウォーガレフの兵達はその光景を見て、地獄から来た辻斬りだと思い味方ながらも震えていた。



「……もし私が相手の立場だったとしたらこの理不尽さに呆然としてますね」


そう言いながらヴィクセンは精霊魔法を放ち続ける。

大地が割れ敵を飲み込み、高圧水流が敵を吹き飛ばし、大突風が敵を上空へ打ち上げ、火柱が敵を骨まで焼き尽くす。

そのオーバーキルな魔法を受ける敵兵達からしたら、おまえも理不尽だろと嘆いているだろう。  


アクティース軍のここまでの被害は0に等しかった、まさに2000の兵が何十倍もの兵数の働きを見せていた。



ークソォォォォォ!!ー


ヴァネッサは雄叫びを上げる。


このまま国に帰れば皆の笑い者だ、指揮官という役職は外され一生日の目を見る事は無いと思ったヴァネッサは、後衛に控えていた精鋭6000を引き連れて突撃した。

城に戻りこの状況を説明してもきっと言い訳の為の嘘だと言われるだろう、現に同じ立場だったら自分もそう思うからだ。


手塩に掛けて集中的に育てた精鋭達と合わせた自分ならきっとこの戦況を打開できる、そう信じて突き進むヴァネッサの心を無情にもアキラは折る。



「さて、俺達も行くぞ」


アクティース軍を除いた兵達の時が止まった。


ーえ……竜だと……?ー


皆頭上を見上げる、太陽を隠すかの如く巨大な赤竜が姿を現した。

そしてその赤竜から3人の人影が飛び降りて来る。



「主の命により、参る」


着地と同時にデストはスキル【雷魔の右腕】を発動させ右拳を地面に当てる、クレーターが出来上がるとそこから紫電が周囲を走った。

感電した敵兵達は口から黒い煙を吐きながら続々と倒れる。



「マスターの邪魔をする者は排除する」


シルヴィアは蹴り技の合間に、スキル【メタモルフォーゼ】で手を変幻自在にリボルバー銃へと変化させ、スキル【鋼生成】で銃弾の形になった鋼を敵兵の頭目掛けて放つ。



「我が君に歯向かおうとは何と愚かな」


アンヴァルに乗ったロイズは暗黒剣で敵を斬り伏せていく、スキルを使うまでも無くアンヴァルの【人馬一体】で殆ど一撃で敵兵は絶命して行く。



「我も暴れるか」


ヴェルサスの獄炎魔法が1000人単位で敵兵を焼き尽くした、熱風を吸い込んだだけで肺が焼けるその魔法に敵兵は成す術も無い。



「新しい魔法試そうかな……コキュートス!!」


アキラの氷魔法により辺り一面銀世界になった。

氷付いた敵兵達は少しして粒子レベルの雪結晶になる、まさに骨も残らなかった。



「な、何なのだあれは」


ヴァネッサと精鋭6000人は呆然とその光景を見ていた、その戦力に勝てる国など存在するのか、こんな事があって良いのかと自問自答する。

答えなど出ない、我に帰りそう悟ったヴァネッサは声を上げる。



「撤退しろ!!」


その伝令が瞬く間にザフグリエ軍に伝わって行く、武器を放り投げ脱兎の如く我先にと逃げ出す兵達。

敵が撤退するのと同時にアクティース軍とウォーガレフ軍は勝ち鬨を上げた。


こうして初の戦争は圧勝に終わった。





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