143.着地点
休憩が終わり再び会談が始まる。
ウォーガレフ側は先程と同じくグリンドが前に出た、アクティース側はゴードンが前に出る。
グリンドはゴードンを前に緊張しているのかゴクリと生唾を飲み込んだ、無理も無いゴードンはウォーガレフ王国の前王なのだから。
意を決して最初にグリンドが切り出す。
「……先程の話ですが」
「この国はつくづく愚かだの」
グリンドの話を遮る様にゴードンが溜息混じりの言葉を放つ。
会談の場で相手の国を堂々と罵倒する、これには室内に居る全員が面をくらった。
「もういっそのこと滅んでしまえ」
「い、いくら前王だとはいえ、言い過ぎではないですか!?」
ここまで言われればグリンドも黙っていられなかった、だがゴードンはその事を鼻にも掛けてない。
「グリンド、お主もわかっておるじゃろ、ウォーガレフ側が頭を下げるのが本来の筋じゃと」
「…………」
グリンドは沈黙する、そんな事は百も承知だった。
そして会談前の事を思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇
宰相のグリンドは日々頭を悩ませていた、どうしたら財政難を抜けられるかと。
ガザレフ前王が取り組もうとした政策を実行に移してはみたものの、結果が出るのには時間が掛かる為即効性が無かった。
鉱山開発で齎される富の上で胡座を描いていただけの自分を呪った、それは国王を除いてウォーガレフ王国に住む全員が同じ気持ちだった。
そんなグリンドは前王から来た手紙の内容を見て涙を流した、開発者が欲しければこんな弱りきった国など侵略して全てを奪えば良いのにそれをしないアキラを聖人とさえ思えていた。
この吉報にウォーガレフの内政を担う者たちは、肩を組み合って喜び合った。
アクティースとの会談前に話し合いが行われた、今回の会談の終着点を決める為だ。
皆満場一致でアクティースとの友好条約を結び信頼関係を作るだった、鉱山開発の利権がどうこうはその後だ、差し込んだ一筋の光を閉ざしてはいけない。
「さて、どうやってアクティースから鉱山をむしり取ろうか」
だが国王の思いは違った様だ。
その言葉を聞いた者達は驚愕していた、強欲すぎるだろうと。
「バルムス王よ、よくお考えになってください」
グリンドはその後もやんわりとバルムスに諭そうとするが、バルムスは馬の耳に念仏だった。
あれよあれよとバルムス王の考えが取り入れられ、会談の終着点が決まって行った。
それを咎める者はいない王の決定は絶対だ、頑なに反論すれば国家反逆罪として罰せられる。
「一体どうしたら……」
グリンドは再び頭を悩ませた。
◇ ◇ ◇ ◇
ウォーガレフ側はゴードンの言葉に皆悲痛な面持ちを見せている。
「……わかっています」
グリンドはボソッとそう呟く。
無意識に心の内が洩れていた、そこにバルムス王が前に出る。
「……下がれ」
バルムス王の言葉にグリンドは、俯きながら席へと戻って行く。
「やっと出てきおったか」
「ふん、顔も見たくなかったがな」
ゴードンとバルムス王が向かい合う、久しぶりに会った第一声がお互い悪態をつく、つくづく仲が悪い事が窺えた。
「バルムスよ、国を破滅に導く気持ちはどんな感じじゃ?」
「破滅?この国の国土は大きくなり富に溢れた」
「それも頭打ちじゃろ?あとは衰退して行く一方じゃ」
「打開策などいくらでもある!」
「どうせその打開策を考えるのは宰相や貴族達に丸投げじゃろ?お主は本当に目先の事しか見てないのお」
「おまえみたいな世捨て人に言われたくない」
ゴードンとバルムスは睨み合う。
その兄弟喧嘩を皆黙って見守る。
「その内お主のせいで、この国にいる者達全員が世捨て人になってしまうじゃろ」
「そうはならない」
「何も根拠が無いのにそんな事を言うなバカ者が」
バルムス王の額から青筋が浮かぶ、ゴードンの煽りに怒りの沸点が限界に近い。
「……侵略すれば良い」
「ははは!とことんバカ者じゃの」
「最初からこうすれば良かったのだ」
バルムス王はアクティースに宣戦布告を述べようとした矢先、扉が勢いよく開かれた。
「た、大変です!」
伝令の男が息を切らしている。
「うるさい!何事だ!?」
バルムス王は声を荒げる。
「ザフグリエ連邦国から宣戦布告の書状が届きました!」
伝令の男は書状をバルムス王に渡した、バルムス王は書状を読むと顔を青ざめさせた。
「な、何故だ……」
ザフグリエ連邦国は長年友好を共にして来た国だ、それが裏切る事はかなりの衝撃だ。
「まぁ、こうなるじゃろ」
ゴードンは予想していた様な口振りだ。
「領土と国力が見合ってないからこうなる」
あらゆる所から買収した領土を守る力が無いのだ、、ザフグリエ連邦国側にとっては数多の国に喧嘩を売って領土を侵略するよりも、ウォーガレフ王国が領土を拡大しきった所を掻っ攫う方が敵は1人で都合がいいのだ。
それにウォーガレフ王国と友好を結ぶ旨味がもう無い、鉱山はもうすぐ枯れる事は把握済みであり輸入量も年々減っている、軍事面から見ても突出した凄さは無く、他国から侵略された場合援軍としても正直頼りなかった。
ーもう終わりなのかー
ー全てのツケが回って来たー
貴族達はお通や状態だ、どんよりとした空気が漂う。
「1つだけ解決策がある」
ゴードンの言葉に皆の注目が集まる。
「……教えてください!!」
グリンドはそう言いながら深々と頭を下げた。
ゴードンはグリンドを一瞥すると口を開く。
「ウォーガレフ王国が神樹国アクティースの属国になることじゃ、そうすればアクティースがウォーガレフを守ってくれるぞ」
場の空気が凍り付く、少ししてバルムス王は憤慨する。
「できるかそんな事!!それに建国したばかりの国に何ができる!?」
バルムスの意見は最もだ、貴族達も頷いている。
「アキラをそこら辺の王と一緒にするな」
ゴードンは不敵に笑いながら言う。
その言葉のお陰でアキラに注目が集まるが、どこからどう見ても只のヒューマンだろと皆心の内で呟いた。
「それでどうする?」
「……侵略を阻止できたら属国でも何でもなってやる」
バルムス王はアクティースの力を微塵も信じていない、負ける所を見て嘲笑ってやろうと思っていた。
言質は取ったぞと言うとゴードンは席へ戻る。
「アキラよ、これで開発者も何とかなりそうじゃの」
「ははは、話がとんとん拍子に進んで行ったな」
ゴードンを見てアキラは苦笑いを浮かべる。
「すまんがこの国を守ってくれぬか?」
「任せろ」
アキラはニカッと笑うとゴードンも笑みを返す。
「ヴィクセンとジェイドは兵の派遣準備をする為、一旦アクティースに戻ってくれ」
ーは!ー
ヴィクセンとジェイドは命令を受け速やかに行動に移す。
「開戦はいつ頃?」
「9日後じゃな」
「わかった、間に合わせるよ」
「よろしく頼む」
こうして初めての戦争が始まる。




