141.ドワーフの国へ。
アキラ、ヴィクセン、ゴードンは会議室で頭を悩ませていた。
鉱山開発に向けて開発者の奴隷や移住者を探したが、やはり収穫は無しだった。
「見つかるまで中止するか……」
アキラは残念な表情を浮かべる。
「そうですね、こればっかりは」
ヴィクセンもアキラに続く。
「一つだけ方法がある」
諦め掛けた時、ゴードンから声が挙がる。
「その方法は?」
アキラは首を傾げる。
ゴードンは腕を組み目を瞑る、苦肉の策なのだろうか。
「ウォーガレフ王国に頼むしかないわい」
ゴードンはウォーガレフは王国の現状を説明する、その話を聞いて風前の灯だなとアキラとヴィクセンは感想を抱いた。
ここでヴィクセンが、仮にウォーガレフ王国の手を借りる場合の難点を口にした。
「ですがウォーガレフ王国の王族と、面会できるツテがありません」
ヴィクセンの意見は尤もだ、アポ無しで会える程王族も暇では無い、仮にアポを取れたとしてもどこだかわからない国に突然鉱山開発の提携を求められても怪しむだろう。
そんなヴィクセンの言葉に、ゴードンは遂に自分の素性を明かす事にした。
意を決した目をするゴードンに、アキラとヴィクセンは何事かと構えた。
「……アキラに言ってない事がある」
「言ってない事って?」
「ワシの本当の名前はガザレフ、元ウォーガレフ王国の国王じゃ」
「「…………」」
予想を遥かに上回る爆弾発言にアキラとヴィクセンは固まった。
「黙っててすまんかったの」
「「ええええええええ!!!!」」
アキラとヴィクセンは絶叫した、その声を聞いた執事やメイド達が駆けつけるが我に帰ったアキラは、何でもないと言ってそれらを帰した。
再びアキラはゴードンに向き直る。
「……何であんな所にいたの?」
1番の謎に迫るアキラ、ゴードンはこれまでの事を詳細に話した。
それを聞いたアキラとヴィクセンはゴードンを慰めた。
「そりゃ誰だって放り出したくなるわ……」
「私も同じ立場ならキレてますね……」
「もう終わった事じゃ、それとガザレフではなくこれまで通りゴードンと呼んでくれ」
ゴードンの言葉にアキラとヴィクセンは頷いた。
ゴードンは話を続ける。
「という事ですごい嫌じゃがワシがウォーガレフに付いてってやるわい」
「……良いのか?帰りたくないんだろ?」
「ワシはもうアクティースの民じゃ、国の発展の為なら重い腰を上げるわい」
「……ありがとう」
そう言いながらアキラは頭を下げる。
「王が軽々しく頭を下げるな、そう言う時はどんっと構えてよろしく頼むとでも言えば良い」
ゴードン呆れている、だがこの素直さもアキラの良さだと思っていた。
「それではいつ出立なさいますか?」
ヴィクセンはメモ帳を取り出す。
「手紙を出して返事が来るまでじゃから……だいたい5日後じゃな」
「わかりました、それまでに手土産を用意しておきます」
ヴィクセンはアクティースで造られた、最上級の果実酒を思い浮かべた。
やはりドワーフといえば酒だろう。
「よろしく頼む」
アキラは早速ゴードンに教わった事を実践する、ダメな所は直さなければ配下の皆が恥をかいてしまう。
こうして鉱山開発の兆しが見え、一旦解散となった。
そして5日後。
白を基調とした煌びやかな服を着たアキラは、豪華な馬車に乗る。
アキラが乗る馬車を多くの騎兵が守る、それを纏めるのはジェイドだ、これで誰かしらに襲われても大概は大丈夫だろう。
ヴィクセンとゴードンはアキラの対面に座る、それは最終防衛ラインの護衛も兼ねていた。
そして皆に見送られながら馬車は出発する、アキラは窓から手を振り返した。
馬車内はアキラの緊張が伝わり、無言の時間が続いた。
ウォーガレフ王国に着くまでに、これでは気疲れしてしまうと思ったヴィクセンはアキラに話しかけた。
「フェルシエとは最近どうですか?」
「どうって?」
「おや?手を出してないのですか?」
「ぶふぉ!」
今ここでその話題!?と思ったアキラは思わず吹き出す。
「フェルシエも待っていますので、アキラ様もお覚悟をなさってください」
「ぜ、善処する」
その言葉にニッコリとヴィクセンは笑う、その笑顔にはどこか凄みがあった。
ヴィクセンの策略かアキラの緊張は嘘の様に解けていた。
これなら大丈夫だろうとゴードンも安心している様だ。
そうこうしている内にウォーガレフ王国に着く。
アクティースの先触れが門番に近づく、要件を話すと門番は慌てて上司を呼びに行った。
少し待つとベテラン兵の顔つきをしたドワーフの男がやって来た。
「馬上から失礼します、私が誘導しますので付いて来てください」
アキラの馬車はゆっくり進み始める、大きな門が開くと王都の街並みが姿を現した。
街並みを一言で言うなれば無骨、背の小さいドワーフ使用なのか家々は平家が多い、彼方を見ればシュコーと音を立てながら煙突から煙が上がっている、そして何処からか機械の音が所狭しと鳴っている、まさに巨大な工業地帯の様だった。
アキラは一風変わった風景を窓から眺める。
「ほえー、すげぇな」
「あの頃からちっとも変わっとらんな」
驚くアキラを尻目にゴードンは不機嫌そうだ。
街中を進んでいくと民達の歓声が響く。
ーウワァァァァ!!ー
アクティース神樹国とウォーガレフ王国の旗を持った民達が、暖かく迎えてくれていたのだ。
アキラからすればすごく喜ばしい事だがこんな事をするのはどの国も当たり前だ。
今回アキラがウォーガレフ王国にやって来た理由は国交である、ウォーガレフ王国側にとってはより良い条件を引き出す為に相手の気分を昂揚させる常套手段である、既に外交という名の戦は始まっているのだ。
「思ったより歓迎ムードだな!」
案の定アキラは浮かれていた。
だが年の功かヴィクセンとゴードンは冷静だ。
「アキラ様、今日の会談では私の姿をよく見ておいてください」
「え?どうして?」
「見ればわかります、国相手というものがどれだけ手強いかわかるでしょう」
「わ、わかった」
ヴィクセンの目が鋭くなるのを見て、アキラは浮かれていた気持ちを引き締める。
「まぁワシもおる、あやつの性格は熟知しておる」
ゴードンは久方ぶりに会う弟の顔を思い浮かべる、おそらくあの野望に満ちた目は変わっていないだろうと思いながら。
「間もなく城へ到着します!」
誘導者が声を挙げる、少しして城が見えて来た。
それは城というよりは要塞と言うべきか、機能性を重視した巨大な建物だった。
ー開門!!ー
門番の声と共に重厚な扉が、ゴゴゴという音を立てながらゆっくりと開く、護衛に挟まれる形でアキラが乗る馬車は門の中へと進んで行った。
そして間もなく会談が始まる……。




