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隻腕の虎  作者: コアラ
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『現代の虎』

俺――藤田虎徹ふじた こてつは藤田家の一人息子として生まれた。

生まれつき左前腕が無く、左肩に獣の噛み跡のような痣があった。

父親はその痣が虎の模様のようだと、虎徹って名前をつけた。


片腕ながら俺の体は特に鍛える事はなかったが、筋肉質でがっしりしていた。


スポーツでは何するにも大会記録を叩き出すため、『隻腕の虎』と呼ばれた。


そんな俺は中学の終わりに美術に魅了された。

高校に入ると迷わず美術部に入った。

ただ、絵の才能はなく、努力で補った。


同級生には『とら』と呼ばれ慕われていた。


「虎ー、明日野球の助っ人来てくれよ。4番が怪我しちゃってさー」

クラスメイトが放課後助っ人を求めに来る。


「だめだめ、明日は部活だ。俺だけ絵遅れてんのよ」

「美術部やめて野球部入れよ。適材適所だろ?絵向いてねぇよ」


「なんだと?」

「す、すまん!言い過ぎた!」


「虎ー、剣道部に……どうした?」


今度はわざわざ隣のクラスから剣道部が来た。


「俺の素晴らしい絵への情熱をバカにされてね」

「俺もお前はスポーツのが向いてると思うけどな」


「片腕なのに?」

「補って余りあるだろ」


そんな充実した毎日を送っていた。


◇放課後


「藤田くん、絵上手くなったね」

「あ、わかる?吉田のアドバイスを参考に勉強してるんだよね」

吉田可奈よしだ かなは同じ美術部の同級生で、おさげでメガネ。地味な部類だが一緒にいると楽しくて妙に安らぐ。

「でも吉田みたいになかなか上手くならなくてね」


「そんな事ないよ〜、最初の頃よりすっごく上手くなってるよ」

「吉田先生みたいに描けるよう、精進いたします。部内で一番上手いと思ってるから」

そう言うと大袈裟だよぉ、と笑っていた。


「私、もう帰るけど藤田くんどうする?」

「俺はもう少し残るよ」


「じゃあ、私も残ろうかな」

「お、そうかい?なんか悪いね」


「藤田くん、ほっとくといつも根詰めるから」

彼女はふふっと笑った。

その笑顔を見て俺も照れくさくて笑った。


「……ねぇ、藤田くん」

「ん?」


「……好きな人って、いる?」

「え?」


「あ!いや、なんでもないの!ごめんね!変なこと言って」

「いや!……あ、あのさ」

俺は思い切って話を切り出した。

「今度の日曜日、一緒に美術館行かない?」

「え!……うん!」


「そ、そっか、よかった……!」


しばし、沈黙が流れると、吉田は恥ずかしさを誤魔化す為か最近の噂に話題を変えた。


「藤田くん、最近放課後オバケ出るって噂、知ってる?」

「オバケ?またオカルト?好きだねぇ。どんなの?」


吉田は怖がりの癖にオカルトに詳しい。

逆に俺は女の幽霊が立ってた、みたいなのに恐怖を感じたりしなかった。

だって、立ってるだけで無害じゃん。


「なんかね、腕が4本で顔がなくて口が大きいオバケなんだって」

「それどっちかと言ったらオバケじゃなくてバケモノじゃん」


◇日が暮れ、夜中近くになった時。


「あ、もうこんな時間」

「ほんとだ!ごめんね!こんな時間まで付き合わせて」


「ううん、全然いいの。一緒に帰ろ」

「うん、帰り支度するからちょっとまってね」


身支度をしている時。

廊下からヒタ……ヒタ……と素足で歩くような音がした。


「なんだろ?この音。廊下から?」

「オバケかもよ〜」


俺は吉田をからかった。


「ま、まさか〜、きっと先生だよ。ちょっと見てくるね」

「あ、ちょっと待ってよ、俺も――」


そして、吉田が美術部のドアを開けた時だった。


――バクッ!


「え?」


そいつは吉田の頭を食った。

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