第二十五話「雲の上」
第二十五話「雲の上」
飛行機が飛び立った。
成田空港までは約三時間半。
窓の外では、
台湾の街並みが少しずつ小さくなっていく。
「飛行機最高ー!」
渚が窓に張り付く。
「飛行機怖い」
小雪はシートに深く座ったまま言った。
「なんで?」
「高いところ苦手だから」
「えー」
渚は笑う。
「ワクワクするじゃーん」
小雪にはよく分からなかった。
しばらくして。
渚がふと思い出したように言う。
「ねー」
「ん?」
「小雪って彼氏いたことある?」
小雪は首を横に振った。
「ないよ」
「なんで?」
「なんとなく!」
渚は笑う。
小雪も少し考えた。
「付き合うとかよく分からないかな」
「だよねー」
渚も大きく頷いた。
そして。
今度は小雪が思い出したように聞く。
「そういえば」
「ん?」
「この前、夏くんに呼ばれてなかった?」
渚の動きが少し止まった。
「あー」
「なんだったの?」
「…告白された」
小雪が目を丸くする。
「すごいじゃん」
「でもなー」
「なに?」
渚は頭を掻いた。
「私も付き合うとかよく分からないし」
「だから断った!」
「断ったの?」
「うん」
「優太は好きだけど」
「友達としてかな」
小雪は頷いた。
「そっか」
「二回目なんだよね」
渚が続ける。
「優太から告白されたの」
「一回目も断ったの?」
「まあね」
少し沈黙が流れた。
そして。
渚は突然胸を張った。
「私!」
「東京の男と結婚するから!」
「うわ」
小雪が小さく笑う。
「いいの!」
「私は今を楽しむの!」
渚は満足そうだった。
小雪は少し考える。
「でも」
「なに?」
「夏くんの何がダメなの?」
渚は即答した。
「幼い!」
「あと台湾県民!」
「なにそれ」
小雪は思わず吹き出した。
「夏くん、かっこいいと思うけどな」
今度は渚が驚く。
「え」
「小雪もかっこいいとか思うんだ」
「思うよ」
「へぇー」
そんな他愛もない話をしながら。
飛行機は雲の上を飛んでいた。
小雪は窓の外を見つめる。
山梨も北海道も、
久しぶりだ。
そういえば。
翔ちゃん元気かな。
ふと。
そんなことを思った。




