第十七話「プレゼント」
第十七話「プレゼント」
給料日の翌日。
「小雪ー!」
渚が大きく手を振った。
「おはよう」
「今日はありがとう」
「全然大丈夫だよ!」
渚は笑う。
「買うもの決めてるの?」
「うん」
小雪は頷いた。
「お父さんにはネクタイ」
「大将にはエプロンかな」
「いいじゃん!いいじゃん!」
渚は嬉しそうに言う。
「じゃあ、とりあえずデパート行こう!」
「うん」
二人はデパートへ向かった。
紳士服売り場。
「うわー」
渚が周囲を見回す。
「こんなお店初めて来た」
「なんか緊張するね」
「そうだね」
小雪は少し笑う。
「渚も緊張とかするんだ」
「どういう意味!」
渚が頬を膨らませる。
「私だって緊張するよ!」
二人はネクタイ売り場へ向かった。
色とりどりのネクタイが並んでいる。
「なんか色々あって悩むなー」
小雪が呟く。
その横で。
「たっか!」
渚が声を上げた。
「二万円だって!」
「ネクタイってこんなするの!?」
「うわ……」
小雪も驚く。
「予算は?」
「五千円くらいかな」
二人でネクタイを見比べる。
なかなか決まらない。
その時。
店員が声を掛けてきた。
「何かお探しですか?」
「え、あの……」
急に話しかけられ、
小雪が固まる。
すると。
渚がすっと前に出た。
「この子、お父さんにネクタイをプレゼントしたいんです!」
「渚!」
小雪が慌てる。
店員は優しく笑った。
「そうでしたか」
「素敵ですね。私がお手伝いします」
小雪は少し照れながら頭を下げる。
「よろしくお願いします」
店員は並んだネクタイへ目を向けた。
「お父様はどんな方ですか?」
「お仕事は?」
「サラリーマンです」
「無口なタイプです」
店員は頷く。
「普段はどんな色のネクタイが多いですか?」
「青とか紺とか……」
「でしたらこの辺りですね」
いくつかのネクタイを並べてくれる。
しかし。
小雪はどこかしっくりこない。
その時だった。
一本のネクタイが目に入る。
淡いピンク色。
「これ……」
店員も気付いた。
「ピンクも素敵ですよ」
「明るい印象になります」
小雪は少し考える。
「絶対似合わない」
小雪は小さく笑った。
「でも、これ付けてるお父さん見てみたい……」
渚は大きく頷く。
小雪は少し悩む。
そして。
「じゃあこれにします」
店員は嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます」
「きっとお父様も喜ばれますよ」
小雪は大事そうに箱を受け取った。
「よし!」
渚が気合いを入れる。
「次はエプロンだね!」
「渚も買うの?」
「うん!」
「昨日、お金取り上げられてたけど大丈夫?」
「お年玉持ってきました……」
「乖乖だね」
小雪は少し笑った。
売り場へ着くなり。
渚が叫んだ。
「あー!絶対これ!」
手に取ったのは。
二枚で一つになるペアエプロン。
合わせるとハートになる。
「見て見て!」
「めっちゃ面白いじゃん!」
「子供みたい」
小雪が呆れる。
「こういうのがいいの!」
渚は胸を張った。
小雪もエプロンを探し始める。
色々見て回る。
派手な物。
可愛い物。
高そうな物。
その中で。
一枚の黒いエプロンが目に留まった。
余計な飾りは無い。
シンプル。
でも。
丈夫そうだった。
「私はこれかな」
「おお、大将っぽいね」
渚が覗き込む。
「うん」
小雪も頷いた。
毎日使う物だから。
きっとこっちの方がいい。
そんな気がした。
買い物を終えた二人。
「買い物終わったねー!」
渚が大きく伸びをする。
「うん」
小雪も紙袋を見る。
ネクタイ。
エプロン。
どちらも。
自分で働いて買ったものだった。
「今日渡すの?」
渚が聞く。
「うん」
「楽しみだね!」
渚が笑う。
「渚もでしょ?」
「そうだね!」
二人は顔を見合わせて笑った。
渚はペアエプロンの入った袋を抱える。
小雪はネクタイとエプロンの入った袋を抱える。
最初は、お金を貯めることしか考えていなかった。
でも。
初めての給料で買ったのは、
自分の物じゃなかった。
大切な人へのプレゼント。
「カフェ寄ってから帰ろうー!」
「うん」
今日は少しくらい、
寄り道してもいい気がした。
紙袋を抱えた二人は。
どこか誇らしげだった。
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