第十四話「旅費」
第十四話「旅費」
昼休み。
教室には、
弁当の匂いと話し声が広がっていた。
「ねー小雪」
渚が机へ身を乗り出す。
「お盆って、
どこ回るの?」
「んー……」
小雪は少し考える。
「お母さんのお墓がある山梨と、
北海道かな」
「北海道も行くんだ!」
渚の目が輝く。
そして。
「東京寄る時間あるかな!?」
完全に観光気分だった。
小雪は少し苦笑する。
「うーん……
どうだろ」
「行きたいなら、
寄ってもいいけど」
「マジ!?」
渚が勢いよく立ち上がる。
「めちゃ楽しみ!!」
その瞬間。
周囲の視線が集まる。
「うるさ……」
友達が呆れていた。
でも。
渚はすぐ、
少しだけ気まずそうに座り直した。
「……ごめん」
小雪は小さく笑う。
「別にいいよ」
渚は少しだけ窓の外を見る。
東京へ行きたい。
それは本音だった。
でも。
今回の旅は、
目的が違う。
渚は小さく息を吐き、
少し反省した。
そして。
再び小雪を見る。
「あのさ、
旅費ってどれくらいあれば足りるかなー?」
「うーん……」
小雪は少し考える。
「十五万円くらいかな」
「え」
「最低でも、
十万円は欲しいかも」
渚の顔が固まる。
「えっ……
マジでそんなかかるの……?」
「だから言ったでしょ」
小雪は少し笑った。
「やっぱりやめとく?」
すると。
渚は即座に首を横へ振る。
「……やだ」
その目は、
思ったより真剣だった。
「絶対行く」
小雪は少し驚く。
「良かった。
もう、お父さんがチケット手配してくれたから」
「え、マジ!?
お金どうしよ」
「大丈夫。
私もバイト代入ったら返すから」
「でも、
そんな大金……」
渚は少し視線を落とす。
「早く返さなきゃ」
「大丈夫だって」
小雪が小さく笑う。
渚にとって最初の小雪は、
ただの“東京から来た子”だった。
でも今は違う。
まだ出会って数日。
それなのに。
小雪はもう、
大切な友達になっていた。
小雪は少し笑う。
「じゃあ、
バイト頑張ろうね」
そして。
少しだけ優しい声になる。
「食事と宿泊は、
心配しなくて大丈夫だから」
「ほんと!?」
渚の顔が一瞬で明るくなる。
「あー、楽しみだなー!!」
「美味しいものたくさん食べようね」
「うん!」
渚は大きく頷いた。
お墓参り。
北海道。
山梨。
まだ先の話のはずなのに。
その未来を考えるだけで、
少しだけ毎日が楽しみになっていた。
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