日本文化を知っていると、こんなこともわかるわけで・・・
「映画は楽しかった?お2人さん」
映画が終わってしばらく。2人の感想合戦も終わりころかなと思い迎えに行くことに。迎えにいくっていったら「感想言いあいたいから映画後すぐはちょっと」と言われたので、行く予定だという喫茶店について聞いていたのだ。
そんなわけで、カメラを構えながら近づき、声をかける。笑顔で振り返ってくれたから楽しかったんだなぁとこっちもうれしくなる。
が。
私に気づいた彼女たちはすぐに動きを止めた。
「それって……」
「まさか……」
「「嘉月さまの推しコーデ?!」」
「ピンポーン!」
うわぁ、想像以上にいい反応してくれるわ。
そう。私は推しでもあり、紅蓮と希蝶の父親である嘉月の推しコーデをしてきた。いやぁ、推しコーデだとわかってくれるの、うれしいわ。
黒髪長髪和風美人。そう。私の萌要素を詰め込まれた彼。大っっっ好きなんだ!メガネがあればさらに完璧なんだが、まぁその希望すらかすむほどの美形だからオールオッケー。番外編にあった、奥さんと出会ってから結婚までなんて、もう悶えに悶えた。あのツンデレ溺愛夫婦の過去があんなだなんて……。作者様ありがとう!ってなったよね。
そんな宮守家当主・宮森嘉月の推しコーデ。
黒の着流しに黒の羽織。羽織紐にはツンデレしつつも溺愛している奥さん・マリアの象徴である百合に、紐はマリアの髪色であるシルバーにしてみました。帯も白ベース、しかも百合柄。嘉月は腰まである髪だけど、さすがにそこまで長くないのでポニーテールにだけして簪も百合と家紋の月モチーフのを刺してみた。2人に合わせてブーツは黒、髪も黒という、全身真っ黒☆不審者極まりない格好である。いやだって、嘉月ってば紅蓮以上に真っ黒なんだもん。まぁ、主家である家の護衛隊長兼隠密隊長でもあるから致し方ないのかもだけど。その割には目立つ美形だけども!そこもまた良き!
唯一の黒以外な色がマリアモチーフの羽織紐と帯と簪だけという、超極端。まぁ、ある意味ツンデレ奥さん溺愛系旦那ってところも表現している気もする。子煩悩なところもあるから子供たちの要素も入れようかとも思ったけど、それはさすがに詰め込みすぎかと思いやめた。なんでも詰め込めばいいってもんじゃないのだ。
さて、実は。今回の映画で宮守家当主夫婦の活躍は結構ある。実は私も映画、すでに見てたんだよねー。でも2人はまだだったみたいだから、きものとか小物とか選んでいたときのオタトークには入らずコーディネーターに徹していたのだ。ネタバレしたらだめだからね。まぁ、友人同士の会話に入るのもどうかって話だけど。
で。そんな宮守家当主夫婦のが大活躍した映画のあと、推しトークしていた時にそんなタイミングでその片割れの推しコーデをした私が現れた、と。しかも当人たちはその子供たちの推しコーデをしているわけで。映画の後の興奮も相まった結果どうなるかというと。
「「写真撮っていいですか?!」」
……まぁ、そうなるわな。ちょっと狙っていたところあるけど。でも、ただ真っ黒なだけなんだけどなー。そこまで萌える?と思わなくもないけど。まぁ、オタクにしかわからないところはあるっていうのは私も理解できる。オタクなので。
「顔は撮らないでね」
「「はい!」」
うーん、いいお返事!だがしかし、いろんな角度から写真を撮られるなんて普段ないことなのでどうしたらいいかわからん。
「……ここであえて、マリアみたいに穏やかに手を組んで立ってみる?」
「嘉月コーデで?!」
「いや、でも、ありかも?!」
ちょっとバグっているっぽい2人を置いて、私はマリアがいつもしているように立ってみる。古き良き日本の奥方のように、旦那の3歩後ろを歩くみたいにちょこんと手を組み、ちょっと微笑んでみる。あ、顔は映らないんだった。
でも2人には好評だったようで……。めっちゃ楽しそうに連写し始めた。そこまでかぁ?
「……あぁ、そういえば。手を組むで思い出したんだけど。実は手を前で組む時どっちの手が上かっていうのにも意味があってね」
「え、そうなんですか?」
シャッター音がとまり、ちょっとほっとする。一応ここも動画にしているからね、音声だけだけど。まぁそれ以前に、私は注目されるのは苦手。つまり写真も苦手なのだ。今回はコーデを撮っているってわかっているから抵抗なかったけど。なら動画投稿するなって話なんだけど。でも布教したい欲が天元突破しちゃったんだよ!仕方ないんだ!
なんて、内心のあらぶりは置いておいて。聞く体制に入った2人に説明するか。うーん、素直でいい子たちだなぁ。
「そう。基本、手を組むときは右手を包むように左手を上に重ねるの。刀ってあるでしょ?刀を抜くのは右手。だから右手を左手で抑えるように手を組むことは「あなたに危害はくわえません」っていう意思表示にもなるの」
「「へぇー」」
「だから希蝶が前世の宿敵、正時の転生者であるアレクに会う時だけは、いつも右手が上なのよね」
「「……え?」」
「初対面の時から手の組み方が違ったから、なんかあるのかなぁとは思ったけど、案の定だったなぁ」
「「……え」」
そう。紅蓮と希蝶の前世の主たちを殺した、桂正時の転生者・アレクの正体がわかる前……というか最初っから希蝶はアレクを毛嫌いしていた。表情はいつもの優しいほほえみだったけど、あれは間違いないね。手の組み方だけでなく、オーラがそんなだったと思う。いや、手の組み方を見てから笑顔に嫌悪感を隠していたと気づいたんだったかな?まぁ、でも、最初からアレクを嫌っていたのは確かだから、どっちでもいいか。あれも元妖刀の直感だったのかねぇ。にしても、布石が細かいよね作者様。わかる人にしかわからない布石。すごいと思う。
「アレクと希蝶が最初に出会った8巻からずーっと、希蝶ってばアレクの前でだけは手の組み方逆なんだよね。『隙あらばたたっ切ってやる』っていう、言葉にしないけど強い意志を感じたわ……」
「「……」」
「……あれ?2人ともどうしたの?」
反応がなくなったでござる。
2人に視線を戻し、ぎょっとした。え、なんでそんな暗くなってんの?
「……最初からそんな布石があったなんて……」
「知らなかった……」
「こうしちゃいられない!早く読み返さないと!」
「ねぇ、待って!それでいくとそんな感情抑えていつもの笑顔浮かべてごきげんようとか言ってたの?」
「そうじゃない?私は希蝶とアレクのシーンはほのぼのしてるけど殺伐しているなぁって思ってたよ。希蝶がしゃべるたびに『殺してやる』って副音声が見えたね!」
「「あー!!」」
発狂してしまったでござる。
ま、伏線に気づいたら読み返したい・見返したいって気持ちはわかる。もう知らなかったころには戻れないから、叫んでしまうのも分かる。
でも公共の場だから、叫ばないで?田舎とはいえ、苦情でるよ?
「……これ、動画にあげるとき『伏線ネタバレ注意』って言ったほうがいいですよ」
「あ、それもそうね。ありがとう。注意書きに書いとくわ」
そっか。この2人みたいに知らない人もいるかもなのか。私はそういうものだと思っていたけど、この2人みたいに発狂してしまう人も出してしまうかもだしね。ある意味このタイミングでこのこと知れてよかったかも?
「……じゃ、着替えがてら、うちに行って初対面のシーンだけ見返す?数ページくらいならそこまで時間もかからないでしょ」
「……とってもひかれますけど、全シーン見返したいのでさっさと帰ります」
「うん……」
「オッケー。じゃ、移動しようか」
「「はーい……」」
こうして、私の初めての「動画で布教活動しよう!」計画は終わったのである。
初めての動画投稿だから視聴者もそんなに多くはなかったけど「きもので推しコーデを考えたことがなかったから新鮮」「そんな伏線があったとは……」「きものって遠いものだと思っていたけど、ブーツとかでもいいんだって思ったら身近に感じられた」とか、コメントをもらえて本当にうれしかった。不慣れなところとか、音声やら編集やら。後から見なおすと粗ばかりだが、いい思い出である。




