表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千葉弥咲の布教活動~きっかけ作り、はじめました~  作者: 日沖 伊朝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

これにて決着!

 なんだかんだで、振袖が決まりました。ここまで1時間半。いいペースだわ。


 最終候補に残ったのは、莉央さまが最初に選んだ辻が花と、お母さまが選んだ赤色の振袖。やっぱね、お母さまの審美眼っていうか、お嬢さまへの思いっていうのは大きいのよ。

 で、結局はお母さまの選ばれた振袖に決定。


 いや、ね。いろいろ理由はあるのよ。正直、莉央さまも辻が花のを着ないという選択をすることにかなり悩まれていた。でもまぁ、そこは個人・家庭の事情。最終的には納得してくださったからオールオッケーということで。赤色のきものも大変気に入られていたから、ま、大丈夫でしょ。


 さて、ここからはまた別に気合を入れるぞ!


 お嬢様、コーディネートのお時間です。


 振袖は決まったけど、決めるまでに時間がかかったから少し休憩して。さっそく決められた振袖を再度着つけていく。今回はウエスト当たりの腰ひもまで。胸元はこれからいろいろするので一旦結ばない。


「さて、莉央さま。ここからも迷わせていきますからね」

「え、怖い」


 そんな身構えないでくださいな。でも、惑わせていくのは本当。

 振袖は、ね。きもの選んで『はい終わり』じゃないんだよ。


「きもの50%、帯30%、小物20%といわれています。小物1つで雰囲気はかなり変わりますからね」

「あー、わかるー」


 先日推しコーデをした実央さまには、よくわかる言葉だったのだろう。そうね。きもの選んだ後も大変だったものね。あのコーデを完成させるまで、いろいろ迷っていたんだよ。


「ふふ。少し驚かれせてしまいましたね。でも、きものもなんだかんだで選べましたし。ここからも莉央さまがテンション上がるものを選んでいただければいいですよ」


 さて、どれが似合うかな。正直、振袖がかなり華やかだから小物はシンプルでもいいとは思うけど、そこは本人の希望だからな。


「あ、半衿だ」

「あら、みおさま。よく覚えていらっしゃいましたね」


 私はいくつか半衿を選び、鏡横に置いてある撞木しゅもくにかける。それに反応したのは先日さんざん悩んだみおさま。


「今みおさまがおっしゃったように、こちらは半衿と言ってこの白い部分をさします。ここに刺繍を入れたりすることが主流になって来ていますね。ただ、これはオプションにはなります」


 レンタルセットは、わかりやすく言えば一番シンプルな形だ。それよりも華やかにしたいとかいろいろ盛りたいってなるとオプションになる。まぁ、これはレンタルあるあるでしょ。


「いろいろ当てていきますが、先ほどもお伝えしたように大事なのは莉央さまのテンションです。莉央さまがお似合いになるだろうものをもってきていますので、いるいらないの判断は莉央さまのお好みで大丈夫ですよ」


 そう言って両方の衿に別々の半衿を入れてみる。片方はシンプルに白とところどころに金が入っている桜柄。もう1つは同じデザインだけど桜にも色が入っているタイプ。


「うわ、同じ柄なのに全然雰囲気変わる」

「どちらの衿がお好みですか?ちなみに、『つけない』でも大丈夫ですからね」

「え、3択?!」

「ほかにも種類ありますから、選びだしたら際限ないですよ」

「あー!!」


 うーん、姉妹だな!先日のみおさまと同じ反応。


「……これなら、金色だけが入っているやつかな……」

「わかりました。では、桜色の半衿は下げますね。ちなみにこちらはいかがです?」


 先ほど当てていた半衿を外し、今度はそちらに黒地に金の刺繍が入っているものを当てる。莉央さまの希望が『きれいかっこいい系』だったからね。それに選んだのが赤地のきものだから黒の半衿も似合うんだよ。これが紫地の辻が花だったら同系色過ぎてなかなかおすすめできなかった。


「え、やば、かっこいい」

「お姉ちゃんの語彙力が死んだ」

「え、これは語彙力死んでも仕方なくない?」

「まぁね」

「刺繍は控えめな柄で主張しすぎないですからね。うーん、重ね衿も当てちゃいましょうか」

「「重ね衿?」」


 ほんと、仲いいなぁ。よく声が重なっているから、いっそすがすがしいわ。


「先日の推しコーデに入れていませんでしたからね。重ね衿っていうのは、こういう風にもう1枚きものを着ている風に見せてくれるものなんです。ほんの数ミリですけど、印象変わりますでしょう?」


 黒の半衿のほうに、薄金の重ね衿を。白地に桜の半衿のほうには緑色にパール付きのものを入れる。


「え、また雰囲気変わった!」

「もちろん、逆の半衿にこちらの重ね衿を入れることも可能ですよ。ね、迷いますでしょ?」

「ですね……」


 鏡に近づき、手を当てて隠したりしながら比較している莉央さま。真剣すぎて、ほほえましいなぁと思う。


「そうですね、黒のほうがかっこいい寄り、白のほうがきれい寄りでしょうか。きれいかっこいいでも、どちらに比重を置くか、ですね」


 そして薄金の重ね衿を外し、白と金の2色の重ね衿にしてみる。


「レンタルでの重ね衿は一色がセット内容ですので、こちらのパールと2色使いのものはオプションになるのですが……白を入れると上品さも加わりますよね」

「あー!!」

「お姉ちゃんのその顔、ウケる」

「先日の実央さまそっくりですね」

「え?!」


 そんな、ショックですみたいな顔されましても……。まんま一緒だよ?さすが姉妹。あれ、この感想何回目だっけ。


「重ね衿は『幸せが重なりますように』という意味で入れます。後は豪華さですね。きものを何枚も重ねてきているように見せてくれるので。昔の十二単のように着るのは大変ですから、衿だけ入れることで華やかさを足しているんです」

「あ、だったらこっち」


 あれ、まだまだ悩むと思ったんだけど。何が琴線に触れたのかな。あっさりと決められた莉央さまは、黒地のほうを選んだ。


「幸せが重なるんでしょ。だったら白と金で2色重なったほうが幸せ倍増しそう。パールは上様っぽくないし。後黒の衿がかっこよすぎるし似合いすぎる」


 なるほど、紫地の辻が花はあきらめたけど、部分的に上様要素を入れることにしたのか。

 だがしかし。選択肢はまだまだあるよ?


「違う色の2色使いの重ね衿はありますよ?」

「上品さも欲しいから、もうこれで!」


 選択肢を増やすなということですね、かしこまりました。まぁ、黒の半衿だったら、重ね衿は強い色入れちゃうとぼやけちゃうしなぁ。私もほかの色は何入れたらいいか迷ってたから、決めてもらってよかったかも。


「承知いたしました。ではこちらで行きますね。あ、ちゃんと伺った予算内に収まるようにしていますのでご安心くださいね」


 胸元を腰ひもで結びながらお母さまに伝える。好き勝手にはやってないからね!

 

「そこは千葉さんを信頼していますので、疑ってないですよ」


 なんで??


 そんな信頼されること、言った覚えがないんだが……?……あれか?さっき振袖選びの時迷っている莉央さまに「1番は莉央さまのテンションですが、予算も大事ですからね。販売員としては高額な方を選んでいただけたらぶっちゃけうれしいですけど、莉央さまだけでなくご家族皆様に喜んでいただきたいですから、お母さまやみおさまと相談してみてくださいね」って言ったことかな?それとも、私がいたら正直に話すのがはばかれるかもと席外したし、その時みおさまが何か私のこと話したんかな?


 まぁ、信頼されているならありがたい。その信頼を裏切らないよう、全力を尽くしますよ!


「では、次は帯ですね。半衿が黒ですから、黒地に金の刺繍のものも似合いますし、振袖にも重ね衿にも金が入っていますから金色も似合いますよ。赤地の帯は同系色過ぎるので沈んでしまいますが、小物で別の色を入れるのもありです。シルバー系の帯もありですね」


 こっそり選んでおいた帯をいくつか持ってくる。実際はもっと色々な飾り結びになるけど、まぁ雰囲気だ。順番に簡単な飾りを作り、背中に当てていく。


「あー!!」

「発狂しとる」

「それはするでしょ。千葉さんが持ってくるもの持ってくるもの、全部合うんだから」


 お母さまの言葉に、思わず口角が上がるのが分かった。めっちゃうれしい。


「光栄です。……そうですね。『迷う』ということは『似合う』ということですから。迷うものは正解ですよ。ですので、後は好みの世界です」

「そうなんですか?」

「えぇ。似合わないものはあっさり却下ですから。先ほどの振袖選びの時も、紺色のものは肩にかけただけでなしって言われましたでしょう?似合わないものはすぐに選択肢から外れますから」

「へー」


 そう。似合うから迷うんだ。だから大いに迷ってほしい。本人は大変だろうけど。


「人生一度のハレの日です。妥協しないでいただけたら嬉しいです」

 


 そこからは帯選びも迷いに迷った。だよね。


「きもの1枚、帯3本という言葉があります。きものが1枚でも帯で雰囲気を変えられるという意味です。実感できましたでしょ?」

「えぇ……とっても」


 ぐったりされているでござる。さもありなん。

 悩みに悩み、決めたのは黒地に銀の刺繍が入ったもの。迷いすぎていたから帯揚げから選んだんだよね。ちなみに帯揚げは白。重ね衿とも合うしってことで。帯揚げはすぐに決まったから、帯揚げときものと合う帯選びってしてからはスムーズにいった。


 では、最後の仕上げです。


「さて、最後が帯締めです。昔は重ね衿・帯揚げ・帯締めは同じ色と決められていましたが、今は好きにして大丈夫です。セットについているのはこの何もついていないシンプルなものになります。ただ、最近はかなり進歩しまして……色々飾りがついているものが主流ですね」


 まずはセットに含まれるシンプルな帯締めから。これでも可愛いと思うんよね。合わせるなら白とか赤とかかな?


「あ、締まる感じ。可愛い」

「うん」

「ではオプションのも合わせてみますね」


 同じ色で、飾りがついてるものを今度はあてていく。


「……こんなの、飾りつきのがよくなるに決まってんじゃん……」


 ですよね。

 それはほとんどのお嬢様がいう。8割くらい?

 もちろん、シンプルな帯締めがいいって人もいるよ!そこは好みの問題だからね。


「身体の中心になるので、結構視線が集まります。なので帯締めだけはオプションにする!という方は多いです。最後の仕上がり部分でもありますからね」


 そう。帯締め選びはかなり難航しやすい。種類も多く、金額もまだ手頃。だから。


「振袖はレンタルなので返却しますから、手元には残りません。でもこういった小物は手元に残るので、写真とは別に『思い出を買う』として、ご購入される方は多いですよ」

「……」


 何か思う所があったのか。私がすすめたもの以外にも、莉央さま自ら色々みている。色だけじゃなく、飾りも種類たくさんなので、めっちゃ迷うと思うんだけど。

 

 でも、悩んで悩んで決めたものって、特別だと思うから。


「……うん。これにします」


 だから、最高の笑顔になってくれるんだよね。

 あと、当日「あーしとけば良かった」とかって後悔する確率も減るし。


 私は素敵な笑顔を見せてくれる莉央さまに、最後の魔法をかける。セットでついてくるショールを後ろからそっと肩にかけた。


「うっわ、マジで成人式だ」

「うん、成人式」

「ショールを身につけると、成人式感強くなりますよね。では、莉央さま。これで成人式に出て頂けますか?」


 鏡を覗き込んでいる莉央さまの後ろから、そっと伺う。くるんと振り返った莉央さまは、今日1番の笑顔だ。


「はい!!」


 その笑顔が、私のやりがいなんだよなぁ。


 私も笑顔で「ありがとうございます」と頭を下げた。


 

 

 後日。

 名指しで口コミが入っていたのには、心底驚いたのであった。しかも莉央さまとお母さま2人別々に。え、マジで?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ