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18 一人旅

「あら、それじゃハーベルの街へ行くのかい?」

「うん、そうしようと思う。セドリックさんから、成長する為には村を出てハーベルの街で冒険者として色々な経験を積むべきだって言われたんだ。冒険者として経験を積む事が、単純な強さだけじゃなく能力の幅を広げる事に繋がるって」

「ふ~ん、良いんじゃない?」

「そうだな。広い世の中を見るのは貴重な体験だ。色々と学ぶ事があるだろう」


 オリオンの家族が身を寄せているのは、家を失った者達に貸し与えられた領軍のテントで、中には簡易ベッドとテーブルといった最低限の物しか置いていない。


 小さなランプの灯りの下、オリオンはサジッタ村を出る事を家族に伝えた。特に反対される事も無く、家族は賛成してくれた。


「兄ちゃんが村を出て行くなら、蜜玉集めはどうすんの? 兄ちゃん以外誰も近寄れないんだよね?」

「それに関して、ここにいる皆に協力を頼みたいんだ」


 オリオンがテントの外へ手をやると、手の平に一匹の魔閃甲蜂の眷属が止まった。


「わぁ、きれぇ~! キラキラしてるぅ」

「丸っこくて可愛いな」

「これも……魔物なの?」

「あれ? 言うことを聞かせられるのか」


 オリオンの手の平でキョロキョロと辺りを眺める眷属蜂をオルフ達が近寄って囲う。

 さすがに触ろうとはしないが大人しくしている眷属蜂を興味深そうに見ている。


「俺の代わりをこの場にいる四人に任せたいんだ。眷属蜂と少しだけ意思の疎通が出来るからこの眷属蜂を案内役にして行けば蜜玉を回収出来るよ」


 眷属蜂が任せておけと言わんばかりに脚を上げて応える。


「俺がいない間はよろしく頼むよ。俺も時々、様子を見に帰ってくるけど」

「そうね、ハーベルの街は近いんだし、気が向いたら里帰りしなさい」

「そん時はお土産、よろしく~」

「私、可愛いアクセサリーとかがいいなぁ」

「こっちの事は父さん達に任せておけ。ハーベルの街からの援助もあるし、以前よりも立派な村にしようと皆張り切ってるからな」


 その日は珍しく、夜が更けるまで一家の楽しげな声が続いた。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 翌日、村の皆に見送られオリオンはハーベルの街を目指して出発した。

 いつものように荷馬車で送ろうかという声もあったが村の復旧作業でも必要な為、そちらを優先してもらう事にしたのだ。


 徒歩の移動では時間が掛かるが、これも経験と割り切りオリオンは歩みを進める。


 慣れ親しんだ道のりだが今は一人。油断せずに警戒しながら進んでいると眷属蜂が肩に止まった。


「お? 何だ、一緒に来てくれるのか」


 オリオンが指で眷属蜂の頭を撫でる。眷属蜂も抵抗せずに撫でられている。


 旅路は至って順調で魔物の襲撃は無かった。途中、姿を確認出来たがこちらが近付いただけで一目散に逃げ出した。


「もしかして……眷属蜂が一緒だからか?」


 城塞蜂から進化して魔閃甲蜂となった事で周辺の魔物の勢力図が変わったのかもしれない。

 だとすると魔閃甲蜂の縄張り内にあるサジッタ村の安全性も以前より高まったようだ。


 夕食用に鳥を狩ろうと探していると、ちょうど近くの木の枝に止まっている四翼鳥を見付けた。オリオンの存在には気付いているようだが十分な距離がある為、さほど警戒せずに毛繕いをしている。


「一発では無理か……なら」


 敏捷性の高い魔物なので姿を認識されている今の状況だと、最初の一発目は回避される可能性が高い。その後はすぐさま飛び去ってしまうだろう。


「『五つ矢』」


 ナイトメアスパイダーとの戦闘で習得した石弾の五連撃を放つ。

 攻撃を察知した四翼鳥が一発目と二発目を飛び上がって躱し、三発目は命中するかと思われたが器用に身体を回転させてギリギリで躱した。だが回避出来たのはそこまで。四発目と五発目が翼に命中し、大きな穴を空けた。

 短く悲鳴を上げて地に落ちた四翼鳥に近付き、トドメを刺す。


 回収した四翼鳥を手早く解体し、切り開いた胸肉の奧にあった魔石を取り出すと眷属蜂がそれを掴んで村の方へと飛んで行った。


「あぁ、女王に渡すのか。それじゃ女王によろしくな」


 帰還する眷属蜂を見送って、オリオンは調理を開始した。

 魔法で平坦な作業台を作ると解体した肉を適当な大きさに切り分ける。


「串は自作するか。集中、集中……『岩石構築(ストーンビルド)長針(ニードル)』」


 オリオンの手に石を圧縮した長い針が出来上がった。通常、魔法は魔力量によって強さや規模が変わる。強力な魔法を使おうと思えば魔力量を増やせば良いだけだ。逆に弱い魔法を失敗せずに発動させるには細かな魔力の制御が必要となり、神経を使う。オリオンの作った針は形にも拘って表面を滑らかに仕上げてある分、難易度も上がる。


「よ~し、いい感じ。次は、と……」


 四角い囲いの中で火を起こし、串に刺した鳥肉を囲いに引っ掛けて炙っていく。

 焚き火で炙られ、熱せられた鳥の脂が徐々に雫となって滴り落ちる。程よく焦げ目が付くと最後に塩を振りかけて鳥の串焼きが完成した。


「よし、出来上がりっと……アチチ」


 オリオンが串焼きを食べていると匂いに釣られたのかハウンドドッグの幼体が二匹、物陰から顔を出していた。

 香ばしい匂いのする串焼きと脇に置いてある四翼鳥の残骸を交互に見比べてどちらを狙おうかとキョロキョロしている。


 オリオンが二匹の様子を横目に見ながら串焼きを食べ進めていると、一匹が意を決して恐る恐る骨の小山に近付く。オリオンの手から串焼きを奪うのは諦めたようだ。


 一匹が肉の付いた骨の奪取に成功するとそれを見たもう一匹も骨の中に頭を突っ込んだ。骨の中から太い物を選ぶと一目散に逃げ出した。


 残った残骸も明日になれば綺麗サッパリ無くなっている事だろう。


 食事を終えたオリオンはテント代わりの小さなドームを作成し、就寝した。

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