第三十八話 魔術研究会
15日連続投稿断念。
受験準備で、書く余裕がありませんでした。
すいません。
また、更新止まります。
よろしくお願いします。
勝手に招待されて、勝手に始まった試験を突破し、そのまま帰ろうとしていたら、今度は隠れ研究会員に理屈の説明を強要され、今に至るわけだが……。
結論から言おう。
帰りたい。
もう本当に、それに尽きる。
少し前に偶々真面目に考えてみたら、妙にこの研究会の空気とかみ合ってしまったらしく、気づけば、「なんかできるヤツ」みたいな扱いを受けているのだが、こちらとしては一切そんなつもりはなかった。
できるだけ早く帰って、飯を食って寝たい。
……異空間にいるから今が何時かはわからないけど。
そんな内心とは裏腹に、周囲からの目線は減るどころか、むしろ増えて、鋭くなっているようにも思えた。「好奇心」ではなく、「観察」と「評価」の色を帯び始めていた。
うん、とても面倒。面倒なのです。
だから、仕方なく切るように口を開く。
「……で? もう終わりなら帰っていいよね?」
念のため、最低限の確認はしておく。
すると、その場の空気を掌握している男――先ほど試験の終了を告げた人物が、静かに一歩前へ出る。
「待て」
低く、それでも、はっきりとした声で。
「まだ終わっていない」
まだあるのかよ、と、思わず内心で毒づくが、顔には出さない。
「形式的なものだが、会長との顔合わせと説明がある。それだけでいい」
「説明?」
「お前は、七歳で学園に入学し、神名持ちなのに魔力回路がない。そのうえで、この試験に合格した。
その異常性を我々は認め、認定した」
男はそこで一度言葉を切り、こちらを真っすぐ見つめなおした。
「もう、お前は内側なんだ」
内側。
妙に選民的な言い方はいったん置いておくとしてだ。
オレの中には別の疑問が浮かんでいた。
――なんで、「魔力回路がない」ことを知っているのだろう?
その瞬間、情報整理を行っていたサブが、助手のような感じで淡々と割り込んでくる。
【おそらく、フェリスからだと思います。前回フェリスの記憶を読み取った際の情報から、ゲイツ・ドルとの接点が見つかりました】
「ふむふむ、つまりは、フェリス兄との繫がりがあると……」
なぜ口から出たのかは自分でも分からないが、言ってしまった。
そして、その瞬間だった。
「……今、なんて言った?」
低い声。
さっきまで淡々としていた試験官の声音に、明確な“色”が乗り、混じる。
周囲も同じだ。
ざわめきすら起きない。
ただ、全員の視線が一斉に突き刺さる。
(……あ、これやらかされたやつか)
遅れて理解する。
「いや、別に大した意味は――」
「フェリス、だと?」
今度は別の声で遮られる。
声の主はリオスだ。
眼鏡の奥の目が、さっきまでと全く変わっている。理屈を求める目から、何かを確かめる目になっていた。
「その名を……、どこで知った」
「どこでって……、兄だけど? さっき、「フェリス兄」って言ったよな?」
比喩でもなんでもない事実。
軽く言ったつもりだった。
でも、場の空気はさらに悪化する一方で。
(……ああ、何故かヤバい系のね)
【ご名答】
オレは、ようやく状況を、地雷を踏んでしまったことを理解した。
……うん、すごく遅くなったけど。
「……実兄、という意味か」
低く、押し殺した声。
試験官だ。
「そうだけど?」
ごまかす意味も特に思い浮かばないので、そのまま返す。
すると、試験官の目線がミレニアに向いた。
「ミレニア? これは一体全体どういうことだ?」
その声には、怒りと不安が混じっていた。
【これも、その記憶からの推測ではありますが、フェリスはゲイツと対立する組織――錬金術研究会のトップなので、この試験官は会長からの叱責を恐れているものと思われます】
ああー……って、えッ!?
思わず、心の中で変な声が出た。
そうなの?
【どうやら】
さらっと恐ろしい情報を投げ込んできたサブ。
そのやりとりをしている間にも、ミレニアは動じる様子もなく、キリっとした表情で試験官に言い返していた。
「しっかり、会長にはその旨をお話ししたかと思いますけれど?」
自分には非はなく、その上で会長から言質まで取っているという意味にとれる。
……というか。
普通に怖いんですけどッ!
オレまだ七歳なんだけど?
なんで知らないところで、研究会トップ同士の政治みたいな話に巻き込まれてるの?
「……本当に、会長は了承済みなんだな?」
試験官が念を押すように聞く。
声色にはまだ警戒が残っていた。
「ええ。むしろ、面白いから通せと」
ミレニアは平然と答えた。
「…………」
沈黙が場に流れ、何も言えない空気となる。
でも、一つ分かったことがある。
ライバルのトップに喧嘩を売りに行く人、つまり、その会長。
絶対ロクなタイプじゃない。
その確信だけが、静かに大きくなっていった。
「それでは、会長の所へ案内する。……が、その前に自己紹介をしておこうか。私はゲイツ会長の補佐のティールだ」
ブレザーのようなデザインの衣服を纏い、友好的な態度での挨拶だった。
その目線は力強く、何かを探られているような違和感を覚えたのだった。
「では、行くぞ。リオス達は本日は解散だ。ミレニア、お前はついてこい。事実確認がしたい。連絡事項は以上だ。
それでは、この空間を消滅させる。各自備えよ!」
試験官ことティールは、オレの方に手を添えた後、右手を上に挙げ、指を鳴らした。それに続き、全員が一斉に指をならす。
「虚無の底に沈む境界よ、我が声に応じて揺らぎ出でよ。星々の記憶を束ねし織目よ、いま解け落ち、世界を隔てる壁を露わにせよ。我は次元を断つ刃、境界を砕く意志なり。我の意思に従い砕けよ――空間崩壊!!」
すると、ガラスが砕けるかのように空間の壁がチリチリと砕け落ち、破片は白い霧となって消えてゆく。
眩い光に包まれ、咄嗟に手で庇をつくる。
それを解除したころには、普段のηクラスの教室の景色が目に映る。
周囲を見渡すと、プランクを行っていた、ゴルドを見つけた。……暇だったのだろうか。
……護衛ってこんなのでいいんだっけ?
そう思ったが、今に始まったことじゃないな、と思い直し、いつもの表情に戻る。
オレに気付いたのか、ゴルドの視線がこっちに向く。
その瞬間、唖然とした表情になったが、無視して、手招きで呼び寄せ、紹介する。
「この人がオレの護衛のゴルドだ。……護衛もその面会に連れて行っていいのか?」
ティールは悩むそぶりを見せつつ、あっさり答える。
「まぁ、あの会長のことだ。いいだろう。ただ、変な真似はさせるなよ」
そうして、カインとゴルドを含めた魔術研究会一行は、会長のいる元へと歩みを進めたのだった。
……カインは帰れるのでしょうか。
次回、寮の自室に戻れるでしょう。




