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ヴォーヴナルグ帝国に転生したオレは何かへ下剋上するつもりですがなにか?  作者: 砂糖
第三章

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第三十七話 試験?

場の雰囲気の為に、書き方が普段と異なります。

また、4500字ほどあります。いつもの約2倍です。長いです。

ご了承くださいませ。

 

 視界が、切り替わる。

 教室ではない。

 広い。だが、広さが掴めない。

 距離感が曖昧で、空間そのものが歪んでいる。


(結界……いや、違うな)

【独立空間の可能性が高いです】


 サブの声が重なる。

 その中央に、数人の人影。

 そして――


「……来たのね」


 聞き覚えのある声。

 視線を向ける。


「ミレニア……?」


 壁にもたれ、腕を組んでいる。

 あの時と同じ、余裕のある立ち姿。


「なんでお前がここにいるんだよ」

「それはこっちの台詞でもあるけど?」


 淡々と返される。

 だが、視線だけは逸らさない。


「まぁいいわ。呼ばれたから来た。それだけでしょ?」

「……まぁな」


 それ以上は聞かないらしい。

 その代わり、顎で前方を示した。


「試験。あれ」


 その先。

 拳大の透明な球体が、宙に浮かんでいた。

 淡く光っている。


「やることは単純だ」


 低い声が割り込む。

 初めて見る男。

 年上。恐らく研究会の人間だ。


「この核に魔力を流し込み、安定させろ」


 軽く指で弾く。

 球体が、わずかに揺れる。


「供給が乱れれば崩壊する。維持時間で評価する」


 短い説明。

 無駄がない。


(魔力制御の試験か)


 理解する。

 同時に、違和感。


(……いや、わざと不安定にしてるな)


 内部構造を見る。

 流れがある。

 受け取り、流し、逃がす。

 均衡が崩れる設計。


(供給し続けろってことか)


 前の人間が試す。

 詠唱。

 魔力供給。

 数秒――崩壊。


「次」


 淡々と進む。

 誰も安定させられない。

 オレの番が来る。

 球体の前に立つ。

 近くで見ると、よく分かる。


(……これ、供給してたら無理だな)


 流せば流すほど、ズレる。

 維持するには集中がいる。

 つまり――


(戦闘じゃ使えない)

 心の中で小さく呟く。

【同意します】


 なら。


(やり方を変える)


 胸から腕へ。

 その“流れ”を使う必要はない。

 供給するから、不安定になる。

 だったら。

 供給しなければいい。


【仮説の変更を確認】

「ああ」


 手はかざさない。

 ただ、見る。

 どこから崩れているのか。

 どこで歪んでいるのか。


(ここか)


 見つける。

 なら――


固定(遮断)


 一言。

 それだけ。

 瞬間。

 球体の揺らぎが、止まった。

 魔力は流していない。

 なのに。

 崩れない。

 完全に、安定している。


「……は?」


 誰かが声を漏らす。

 当然だ。

 誰もやっていない。

 やれるとも思っていない。


「お前……何をした」


 試験官の声。


「何って」


 肩をすくめる。


「漏れてる部分、塞いだだけだけど」


 事実だ。

 供給はしていない。

 ただ、“逃げ場”をなくした。

 それだけ。

 沈黙が落ちる。

 その中で。

 一人だけ、反応が違った。

 ミレニアだ。

 腕を組んだまま。

 じっと球体を見ている。

 そして。


「……やっぱり」


 小さく、そう呟いた。


(やっぱり?)


 引っかかる。

 だが。


「これでいいのか?」


 試験官に視線を向ける。

 球体は、微動だにしない。

 完全固定。

 試験官はしばらく黙り――


「……合格だ」


 低く告げた。

 ざわめきが広がる。

 当然だ。

 誰も理解していない結果。

 誰も再現できない方法。

 でも。


(……なるほどな)


 オレの中では、妙に納得していた。

 有線でも、無線でもない。

 そもそも――


「流す必要、ないじゃん」


 ぽつりと呟く。

 魔力は、“使う”ものじゃない。

 “整える”ものだ。

 そう考えれば。

 全部、繋がる。


「……面白いな、お前」


 試験官の声。

 その視線が変わっていた。

 値踏みじゃない。

 観測だ。


 その横で。

 ミレニアが、わずかに口元を歪める。


「最初から、そういうやつだったのね」


 その声は小さく。

 だが、はっきりと聞こえた。



 ─────────────



「……待て」


 背を向けかけた時だった。

 試験官の声が、もう一度落ちる。


「もう一つ、見ておく」


 ざわり、と空気が揺れた。


(まだあるのか)


 振り返る。

 試験官は指を軽く振った。

 すると――

 空間に、光が灯る。

 一つ。

 二つ。

 三つ。

 ……増えていく。

 最終的に、五つの光球が宙に浮かんだ。


「同時制御だ」


 短い説明。


「それぞれに異なる性質を持たせている。火、水、風、土、無属性」


 五つの光が、わずかに揺れる。


「全てを同時に維持しろ。崩せば失格だ」


「……五つ同時?」


 思わず呟く。

 普通は、一属性でも集中がいる。

 それを五つ。

 しかも同時。


「出来るやつは限られる」


 試験官が言う。


「だから試している」


 前の受験者が挑む。

 一つ、二つ。

 そこで崩れる。

 集中が分散する。

 当然だ。


「次」


 淡々と進む。

 誰も三つすら維持できない。


(まぁ、そうなるよな)


 理解はできる。

 これは“集中の分割”を強いる試験だ。

 だから。

 普通のやり方では――無理。


「カイン」


 呼ばれる。


「はいはい」


 前に出る。

 五つの光球を見上げる。


(……なるほど)


 少し考える。

 そして。


(これも、同じか)


 気付く。

 さっきと構造は変わらない。

 “個別に見る”から難しい。

 なら――


「まとめればいい」


 ぽつりと呟く。


「……何?」


 誰かが反応する。

 気にしない。

 手を上げるでもない。

 魔力を流すでもない。

 ただ、“認識する”。

 五つを、五つとして見ない。

 一つの構造として見る。

 流れ。

 繋がり。

 干渉。


(ここを揃える)


 意識を一つにする。

 その瞬間。

 五つの光球が、同時に静止した。


「……は?」


 誰かの声。

 揺れない。

 ブレない。

 完全に同期している。

 まるで、一つの物体のように。


「なに……した?」


 低い声。

 試験官。


「別に」


 肩をすくめる。


「一個として扱っただけ」


「……五つだぞ」


「見方の問題でしょ」


 事実だ。

 分けているのは、人間の認識。

 構造としては繋がっている。

 だから――


「分ける意味、ないじゃん」


 静かに言う。

 沈黙。

 さっきよりも深い。

 理解が追いついていない。

 否定もできない。

 ただ、“異物”として認識されている。


「……バケモンかよ」


 大柄な男が、引きつった声で言う。


「理論が……崩壊している」


 眼鏡の男が呟く。


「……無理」


 少女が短く言う。

 そして。


「……やっぱり」


 ミレニアだけが、同じ反応をした。

 納得している。

 確認している。

 それだけ。


「……いい」


 試験官が口を開く。

 低く。

 はっきりと。


「十分だ」


 一言。

 それで終わりだった。



 ─────────────


 試験会場から帰ろうとした時。


「待て」


 最初に口を開いたのは、やはりあの男だった。

 眼鏡の男――リオス。

 首から下げている名札(ネームプレート)に書いてあった。


「……今のを、そのまま終わらせるつもりか?」


 試験官ではなく、オレに向けて言っている。


「別に。終わりなら終わりでいいけど」


「よくない」


 即答だった。

 一歩、踏み出してくる。

 距離が詰まる。


「説明しろ」


「さっきしただろ」


「していない」


 断言。


「“一つとして扱った”――それは説明ではない。結果の言語化だ」


(めんどくさいタイプだな)


「……どこが分からない?」


「全部だ」


 迷いがない。


「まず前提から崩れている。複数属性は干渉する。だから同時制御は分離が必須だ」


「うん」


「だが、お前は分離していない。にも関わらず干渉が起きていない」


「起きてるよ」


「……は?」


 リオスの眉が動く。


「起きてる。ただ、“ズレてない”だけ」


「意味が分からない」


「だろうな」


 正直な感想だ。

 これは説明しにくい。

 というより――


(前提が違う)


 見えているものが違う。


「お前、魔力ってどう扱ってる?」


「……質問に質問で返すな」


「いいから」


 一瞬の間。


「……流す」


「どこに?」


「対象に。構造に沿って」


「だよな」


 頷く。


「それが“分離”の原因」


「……どういうことだ」


「個別に流すから、個別になる」


 当たり前の話だ。


「火は火、水は水、風は風って分けてるだろ?」


「当然だ。それぞれ性質が違う」


「でも元は同じだろ」


 そこで、空気が止まる。


「……何を言っている?」


「魔力だよ」


 当たり前のことを言う。


「属性は後付けだろ。変換してるだけで」


「……」


 リオスが黙る。

 考えている。


「だから、最初から分けなきゃいい」


「……それは」


 言葉が詰まる。


「属性変換を“個別にやらない”ってことか?」


「近い」


「だが、それでは制御が――」


「一箇所でやる」


 遮る。


「全体で一回だけ変換して、分岐させる」


「……」


 完全に沈黙。

 思考が追いついていない。


「それなら、干渉は起きる」


 絞り出すように言う。


「起きるよ」


「なら――」


「だから、ズレなきゃいいって言ってんだろ」


 そこで、ようやく繋がる。

 リオスの目が、わずかに見開かれた。


「……同期、か?」


「まぁそんな感じ」


「全ての属性変換を、同一タイミングで?」


「そう」


「……無理だ」


 即答。


「処理が追いつかない。人間の思考では分割が必要だ」


「だから分割してないって」


「……っ」


 言葉が詰まる。

 核心に触れている。


「一個として見てるんだよ」


 もう一度言う。


「五つじゃない。一つ」


「……」


「だからズレない。干渉しても問題ない」


 静かに結論を置く。

 沈黙。

 長い。

 さっきとは違う。

 これは、“考えている沈黙”だ。


「……理論としては」


 ぽつりと、リオスが言う。


「成立、する」


 ゆっくりと。


「だが――」


 顔を上げる。

 真っ直ぐにこちらを見る。


「それを“実行できる”理由が説明されていない」


(そこか)


 少しだけ笑う。


「簡単だよ」


「……何だ」


「慣れてるだけ」


「ふざけるな」


 即座に否定。

 だが、感情は強くない。

 むしろ逆だ。

 必死に理屈にしようとしている。


「慣れで出来る領域じゃない」


「じゃあ才能でいいよ」


「……」


 今度は否定しない。

 出来ない。

 事実だから。


「……再現は?」


「無理じゃね」


「……何故だ」


「見えてないだろ」


 それだけ。

 それで十分だった。

 リオスは、完全に黙る。

 理解した。


 いや、正確には――

 “理解できないことを理解した”。


「……面白い」


 小さく呟く。

 さっきの試験官とは違う意味で。


「理解不能だ」


 それは、否定ではない。

 評価だ。


「だからこそ、価値がある」


 顔を上げる。


「カイン」


 名前を呼ぶ。


「お前のそれ、俺が理論化する」


「勝手にどうぞ」


「その代わり」


 一歩、近づく。


「逃げるな」


「別に逃げねぇよ」


「いい返事だ」


 わずかに口元が上がる。


 初めて見せた変化だった。


「――ようこそ、“異常側”へ」


(……お前もそっち側なのかよ)


 内心で突っ込む。

 だが。

 否定はしない。

 ここにいる時点で、全員同じだ。



 ─────────────



「以上を以って試験を終了する」


 試験官の声が、空間に響く。

 だが、誰も、動かなかった。

 視線は全て――こちらに向いている。

 値踏みでもない。

 敵意でもない。

 もっと、別の何か。


(……面倒くさ)


 小さく息を吐く。

 その時。


「カイン」


 試験官が、もう一度名前を呼んだ。


「今日から、お前は正式に魔術研究会の一員だ」


 淡々と告げられる。

 それだけのはずなのに。

 空気が、変わる。

 周囲の視線が、わずかに重くなる。


「ただし」


 続く。


「ここは“研究会”だ」


 一拍。


「成果を出せない者に、居場所はない」


(……ああ)


 なるほど。

 理解する。

 ここは。

 ただの集まりじゃない。


「――潰し合いか」


 小さく呟く。

 すると。

 誰かが、笑った。

 ミレニアだ。


「やっと分かったの?」


 楽しそうに。


「ここはね、そういう場所よ」


 視線がぶつかる。

 同時に。

 別の視線も感じる。

 リオス。

 あの大柄な男。

 他の連中も。

 全員が、“同じもの”を見ている。

 観察。

 解析。

 そして――

 競争。


(……まぁ、いいか)


 肩の力を抜く。

 どうせやることは変わらない。

 やるだけだ。


「じゃあ、よろしく」


 軽く言う。

 その瞬間。

 空気が、わずかに歪んだ気がした。

 ――この日。

 オレは、“異常の集まり”に足を踏み入れた。

解説! カインが試験でやったこと。


試験一つ目。

欠陥があり、魔力を流し続けないと安定して浮かない魔道具を魔力により創造したものを使用した試験。普通は、魔力を流し続ければ安定するが、それには膨大な魔力がいる。しかし、カインは魔力が抜けていくポイントがいくつかあるのを見て、そこを魔力で作った、不可視のガムテープを用い、穴を塞ぐことで安定させた。


試験二つ目。

単一属性のみで構成されていた球体(魔道具)をそれぞれの出現の仕方にて作ったもの。

構造は何ら変わらない。だから、同じように魔力ガムテープで塞ぎお終い。


この考え方が、周囲からは異質に見える。

現世でテープで穴を塞ぐことを応用したのでしょう。

きっと。


以上解説でした!

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