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49話 黒炎の領主と継承の儀式⑤ 平地

あけましておめでとうございます。寝正月しながら書いてました。今年もそれなりのペースで進めていきたいです。

「「「試練の洞窟?」」」


 ダン長の宣言に反応する魔女の家に集まった一同。ダンジョンに暮らすマギリアとキルトにもこのワードには馴染みが無かった。


「場所によって呼び名は違うが、王侯貴族が跡継ぎの度胸や実力を試すためにアイテムや魔物の素材を取りに行かす儀式をするダンジョンだ。次の目的地へ向かう勇者一行が、そこへ行ける通行証や重要アイテムを持つ偉い人に頼まれて息子や娘の護衛になったりな」

「「え?」」


 ダン長の捕捉に余計に首をひねるマギリア達。言葉の意味自体は通じているが、そのように使われているゲームにおけるダンジョンの用途に実感が湧かないようだ。


「えー……私が知る限り代替わりってのは数年からン十年の間隔で起こるものだが、その為にわざわざ? 試練の無い年は何に使ってるんだ?」

「第一、護衛を雇っては度胸や実力を示せないだろう。その儀式、とうに形骸化してはいないか?」

「あー……その辺は冒険に山と谷を作るためというか……」


 用途が限定されたダンジョンを用意する意味を問うマギリアと、試練の無意味さを指摘するキルト。パワーバランス維持と経済活動のために日常に組み込まれたこの世界のダンジョンと、かたや冒険の目的に立ちはだかる障害として鎮座する娯楽世界のダンジョン。その価値観に大きな開きがあるせいか、ダン長は説明に苦労してしまう。


「どうやって何代にも渡って維持管理しているのか? というか維持できるだけの戦力があるなら、通りすがりの勇者などに頼まなくても身内の護衛で事足りないか?」

「あー……えっと……」


 価値観を異にする彼女達に概念を説明するのに苦戦するダン長だったが、とりわけ興味を抱いたマギリアの質問攻めは数分に及んだ。


「試練の洞窟など、代替わりの時期にその都度作った方が合理的ってのはわかったぞ」

「まあとにかく、あと10日でそれを用意しなければならないんだが……フリッカ!」

「あー?」


 試練の洞窟の概念に満足したマギリアを他所に、ダン長はカウンターでグラスを拭かされているフリッカを呼ぶ。唐突に呼ばれた彼女はカウンターを飛び越えて作戦会議のテーブルに寄ってくる。


「このくらいのサイズの氷、作れるか?」

「ほらよ!」


 ダン長が泥の手で作るジェスチャーでサイズを指定すると、フリッカは意図を聞く前に要求通りの氷を作ってのける。一抱えもある氷塊は、よりによってマギリアの眼前に叩きつけられる。


「ちょっとダン長ちゃん? この氷をどうするの?」

「これは図面に描かれた魔萃晶と同じ大きさの氷だ。試練のスタートがこのサイズで、ゴール時に解け残った分がスパーダの取り分だ」


 キャニュオン領主代理、スパーダがダンジョンの面々に用意させたのは温泉事業の収税権を賭けた決闘だ。それを受けてダン長が発案したのは速さを軸にした勝負だった。

 例えば彼が試練を切り抜けた時に元の6割の体積が残っていれば、キャニュオン領とハイランド領は税収を6:4で分け合うことになる。


「……で、最低保証がマギリアの持っている使い残しだ。試練に完敗すればスパーダはこの豆粒で領民を説得しなければならないわけだ」


 ダン長は後々の領主間のトラブルを考え、スパーダが全てを持っていくことも、手ぶらで帰らされることもなくなる方法を選んだ。

 そして何割の税収を分捕れば領民が納得するかは試練の後の不確定要素。領民を上手く説得できるかはスパーダ次第のため、ダン長達の与り知るところではない。


「あのなーダン長、こんなデカい氷なんてそーそー解けねーぞ?」


 フリッカが横から口を挟む。迷宮は1年を通して温暖だが、現に今のやり取りの間でも氷はまったく形を変えていない。彼女は頭が良い方ではないが、氷魔術を得意とするだけあって最低限の知識は身に着けていた。


「ゴールに置きっぱなしにしていればフリッカの言う通りだろうな。だがこの暑いダンジョンを氷を抱えながら走り回ったらどうだ?」

「あっ……」


 氷をその場に放置していれば冷たい空気に囲まれて解ける速さがゆるやかになるが、常に動いていれば温かい空気の供給は絶えない。同じ氷を2つ並べて片方に扇風機の風を当て続ければ、先に水になるのは風の当たる方だ。


「スパーダには氷を抱えながらダンジョンを攻略してもらう! コケて割ったら大ロスだぞ」

「うへぇ……」


 スパーダの手を塞いで戦力を削ぐと共に、迷宮内を走り回らせて氷を早く解けさせる作戦を立案するダン長。フリッカは氷をノックしながらその苦労を想像して絶句する。


「で、副賞として出された条件だが……マギリア、スパーダは何人欲しいと言っていた?」

「ああ……『大勢に越したことはないが、全員を取るほど僕も鬼じゃない。多くて5人まででいい』と言っていたな」

「半分以上は充分に鬼じゃないか……」


 ルールの説明を終え、副賞の件をマギリアに振るダン長。向こうから突き付けられた条件は、関門突破とは別に高難度の条件をつけ、その達成ごとにマギリア達を自領の顧問として雇える権利だった。ダン長達にとっては、領主同士の勝負よりもこちらが問題だ。


「要求された関門は5つ……内容はどうする、悪代官屋敷の時みたく私らで戦うか?」

「我輩が偵察した時にスパーダは、魔術師相手にえらい自信がある言い方をしていた。直接戦うのは避けた方がいいな」

「ぬぅ」


 マギリアの提案をキルトが突っぱねる。守護モンスター達の実力は人間の冒険者には引けをとらないが、面子の役割は壁になる前衛が前提の魔術職に偏重している。5つの関門を設ければ後衛の誰かが戦うことになるため、魔術対策を講じている可能性がある前衛相手に戦闘は下策とキルトは言う。


「普通の魔物に戦ってもらうのはどうだ?」

「ダン長ちゃんが操れる強さの魔物じゃ勝ち目が薄いわね。群生地の強い子達は?」

「連中は人間同士の小競り合いには無関心だ。我輩が同じ立場なら絶対に断る」


 守護モンスターのトップ3があーでもないこーでもないと会議を始める。


「じゃあ戦闘無しで、謎解きや探索を基準に作ろう。ということで、こういうマップはどうだ?」


 サキュバス達に手伝ってもらい、紙に図を描きこんでいた別のダン長が会話に割り込みその成果を見せる。大きく描かれた正方形の中に漢字の『木』のように6方向に通路が分かれている。その下の通路の先には『入口』と書かれており、その他の道の先と交点にはそれぞれ四角い部屋が描かれている。


「……前と比べるとえらいシンプルになったな」

「通路を増やすと、その分関門に割ける面積が減るからな」


 図をパッと見たマギリアが、悪代官屋敷騒動の時と比べてあっさりとしたその図面に驚く。以前の小部屋は戦闘するためだけの空間だったが、今回は関門を重視して多くの空間を使えるようにした。


「この……交換所っていうのは氷を運ぶゴールのことよね? 他の部屋の試練って言うのはなに?」


 キャンディが図面の各地を指さしながら質問する。部屋には左上から時計回りに試練①から④、道の交点にある中央には⑤の数字が振られている。そして試練⑤を上に抜けた先の『木』の字の頂点の小部屋、ゴールらしき場所には交換所という文字が書かれている。


「入り口の担当は氷を作る役のフリッカとして、各部屋に一人ずつ関門の成果を見届ける監督官を配置する。当然俺も監視と実況はするが……」

「私達がいた方が魔術でサポートできる」


 ダン長の提案に普段は物静かなイグニスが積極的に補足を入れる。姉や妹が連れて行かれるかもしれない事態になって、代理戦争への闘志を燃やしている表れだった。


「中央にはマギリアが居てもらって、交換所はキャンディの担当。他の皆は4つの部屋に1人ずつだ」

「アタシはここでいいの?」

「最後の交換段階でスパーダと揉めたら戦いになるかもしれない。タイマンが一番強いキャンディがそれを防ぐ重しだ」


 今でこそスパーダは紳士的な対応を見せてこそいるが、巨額の金が動く以上人の心がどう動くか保証はない。彼の魔術相手の妙な自信を考えると、試練の最後には物理特化のキャンディを配置せざるを得なくなった。


「よし、次は部屋の名前を決めよう。俺としては――」

「『地水火風の試練』でいいんじゃないか、アクア達の得意魔術属性を冠して」

「!?」

(我輩は別に地属性の魔術など使えんが、ダン長に決めさせるのも怖いから黙っておこう……)


 ダン長が独特のネーミングセンスを披露する前にマギリアに制されてしまう。彼女の咄嗟の思い付きとはいえ、ダン長に決めさせるよりはと地水火風の属性に割り振るアイデアに異を唱える者はいなかった。


「よし、翌朝にでも向こうに決闘のルールを伝えに入ってくるか!」

「頑張ってね、マギちゃん!」


 細かいルールは相手方との話し合いで決めていくことになる。仲間達に背中を押され、マギリアは決めた決闘のルールを伝えるべく再びスパーダのもとへ向かう決意を固める。








「ルールは概ね受け入れてもらえたぞ。んで、いつも通り条件をつけられた」


 翌日の昼、作戦会議の場に帰ってきたマギリアが開口一番に報告する。


「条件?」

「氷は魔物以外の付き人に持たせることだと。雑魚魔物相手でいいから、せっかく持って来た宝剣を振るって戦いたいそうだ」


 如何なる達人でも両手が塞がっては剣を満足に振るえない。スパーダの陣営は戦いをしたいがために、代わりに持たせる人間を要求した。


「なら制御できる雑魚を道中に配置するか。で、その氷を持たす代役はスパーダの護衛か?」

「いや、『決闘に横槍があってはいけない!』と、奴の護衛でも村の冒険者でもない第三者をご希望だ」


 付き人が氷を補強する魔術を使ったり、削ったり割ったりしては勝負が成り立たない。よってスパーダを慕ってついてきた護衛や、余所者が気に入らない冒険者は不可というのが彼の見解だ。


「そのどちらでもなく、最低限ダンジョンを歩ける条件を満たせる人間……リンだな」

「えっ……僕です!?」


 ダン長がぽつりと述べた言葉を頭の中で咀嚼し、一同は席の端にいる人間の少年に顔を向けた。大人達の話を退屈そうに眺めるフリッカの相手をしていたリンはその視線に驚きの声をあげる。


「リンに運ばせて大丈夫かよ、氷の中空っぽにしてやろうか!?」

「ずるは駄目だってフリッカちゃん……」


 大役を任されたリンを案じ、テーブルの上に空洞になった氷を出すフリッカ。彼女の好意を有難がりながらも、情けをかけられては本末転倒と苦笑いしてたしなめるリン。


「リンもかなり仕上がってきた。氷を持っていようと表層の雑魚程度に遅れは取らん」

「マギリア達を守る為のダンジョンは俺達が作る。だからリンは自分の仕事に集中して氷を運ぶ特訓をしてくれ」

「はいっ!」


 ダンジョンに引き取られた孤児であるリンにとって、領主の争いのどちらかに肩入れする理由は無い。ダン長は彼が懸念するスカウト問題は自分達で対処すると誓い、フリッカとともに氷を運ぶ訓練に入らせた。


「……で、マギリアと一緒に来たイワシの爺さん達はなんだ?」

「ほっほっほ……」

 

 付き人の件に目途が立ち、ダン長はずっと気になっていた他のテーブル席で呑んでいる三人の人影に話題を移す。彼らは人間側の技術でダンジョンの保守管理をするもう一つの守り手、ダンジョン工である。


「魔女様達が何やら楽しそうな物を作る感じの噂を聞いてつい……」

「まったく、私達の身柄がかかってるってのに呑気な……」


 豊かな白髭をポリポリ掻きながら照れくさそうに弁解するイワシ。彼らの楽しそうな様子を見て真面目に取り組もうとしていたイグニスが呆れる。


「いやいや! 楽しみは楽しみですが、魔女様達の身を守る為に粉骨砕身の思いで協力したいのもまた本心!」


 真剣さを疑われたことに反発し、思いの丈を語る最も大柄なウデップシ。家庭環境が悪く休日でもダンジョンで酒盛りするような変人達にとっては、憩いの場を作る守護モンスターを失いたくないのも真意だった。


「いや、私がイワシ達を連れてくるのを提案したんだ。ダン長の存在は極力伏せておきたいから、エッダにも口止めをしておいた」

「俺の存在をか?」

「ああ、ダンジョン内に限ればダン長の力は万能過ぎる。スパーダがそんな力を持つ奴が相手の陣営にいるのを知ったら、余計な警戒を生むだろう?」


 マギリアはダン長の万能さとその弊害を語る。例えば物体移動の力で強制的に氷を割ることすら容易な者が敵側にいると知られれば、ゲームを成立させる前提を覆しかねない。そういう意味でダン長はゲームの結果を左右させる絶対的な権利を持っている。


(ゲームマスターと同じか。だからこそ一度ゲームが始まれば、ダンジョンを動かす以外の干渉をしては信用問題に関わる……か)


 不正を働けば別のトラブルの原因になる。ダン長が公正に勝つには、あくまで作ったダンジョンでスパーダの挑戦に応じなければならないのだ。たとえ守護モンスターを奪われる事態になっても、無い指を咥えて見ていなければならない。


「で、ちょうどギルドでの話し合いの帰りに偶然来ていたイワシと会ってな」

「なるほど、相手の密偵が次に探るのは俺の存在と踏んで、イワシの爺さん達をダンジョン側で囲ったわけだな! 人手はあるに越したことはないし、ここでの助っ人はありがたいな」


 ダン長の存在は通話を実験的に開放した口の堅い者を除けば、冒険者達に周知させていない。直接面識があるのは目覚めた日に来た遠くから依頼を受けた冒険者か、エッダとニアの親子とダンジョン工ぐらいだ。特にダン長と親しくしているのはイワシ達3人のおじさんで、この同行は労働力確保だけでなく彼らを内偵行為から匿う目的もあった。


「そんなとこだな」

「流石です師匠! そこまで考えが回るなんて!」

(仲間にする理由を聞かれたらイワシにそう答えるよう言われていただけだが、気分がいいから黙っておこう)


 リンが目を輝かせて己が師を誉め、それに気を良くしてマギリアは照れ笑う。


「で、俺らが作業する場所って、迷宮のどの辺なんです?」

「ああ、ダンジョンの南西部……エッダさんのストーカー騒動で使った場所だな」


 匠の中で最も若くテンションの低いアシコシが問う。ダン長の泥の手は迷宮の地図の南西を指し、現場を彼らにも周知させた。前回ここが選ばれたのは重要な施設も無いからだったが、今回の選出理由も同様だった。


「……なあダン長、皆。この場所についてひとつ提案があるのだが」

「「「え?」」」


 地図を眺めていたマギリアが少し考え事をして、口を開く。






「南西部一帯を更地にする、か……」


 迷宮南西部の北端―魔女の家から歩いて一番近い場所―に集まった一同。ダン長は出発前にしていた彼女の提案を改めて振り返っていた。


「前にここを作り替えては元の迷宮に戻して、今回も繰り返すのは面倒だろう? 予めここを何もない空間にして、何かあったらここを使って対処するように最初から決めておけば楽じゃないか」

「確かに、それも一理あるな」


 ここら一体を多目的ホールに改造するというマギリアの提案は確かに筋が通っていた。前回の悪代官屋敷の騒動が終わった後で、元の迷宮の地図と比較しながら復元する作業は、ダン長の力をもってしても苦戦を余儀なくされたのだった。

 対して予め基本更地の区画にしておけば、用済みのダンジョンは解体するだけで済み、元の地形を覚えておく必要が無い。


「どちらにせよ試練の洞窟を作る為に一度はまっさらにしなきゃならないんだ。罠や魔物を取り出して、柱や小さい階段を片付けるとなると丸三日はかかるんじゃないか」


 ダン長が目覚めた翌日にやらかした大失敗で得た経験で知ったことだが、彼が一日にできるダンジョン操作には限界がある。南西部まるまる手をつけるとなれば、守護モンスター達のサポートがあっても数日を要する作業だと彼は目星をつける。


「いや、ダン長は罠と魔物を退避させてくれればいい。探索中の冒険者はいないな?」

「ああ。罠も魔物もいない」


 ダン長は南西部全ての通路に目を生やし、冒険者も罠も魔物も何もいなかったことを確認して報告する。それを聞いてほほ笑んだマギリアは、脚に巻いたホルダーから杖を取り出し、扇子のように広げる。


「天空を吹き荒れる烈風よ、大地を鉄床とし、地を這う愚者へ誅罰を下せ……」

「マギリア……?」

「効果を安定させるために普段は省略させてる詠唱をしてるんだ、集中を乱させない方がいい」

「リンちゃんとイワシちゃん達はちょっと下がってて、スゴイの来るから♪」


 術を放つ態勢になって珍しく呪文を唱えだすマギリアに声をかけようとするダン長を制するキルト。何かを察したキャンディは、人間達を引き下がらせる。


「インビジブル・ギガントプレス!」


 詠唱の直後、まるで見えない隕石が空から降ってきたかのように天井が砕け散る。轟音と共に天井を崩壊させた透明な巨塊は迷宮の各部を高い方から次々と押し潰していく。

 わずか十数秒で外壁を除く迷宮の全ては地に這いつくばり、ダン長達の眼前には遊園地でも作れそうな開けた平地が広がっていた。崩れた地面は、まるで巨大な焼き鏝を当てられたかのように熱く平たく固まっている。


「ふー、爽快爽快♪」

「師匠……今の呪文は?」

「上空の大気をガッチガチに固めて、上から叩きつけるだけの魔術だ。リンに魔法の才能があればいずれ教えてやろう」


 リンが師匠が初めて見せた大規模な魔術に驚いて尋ねる。それを受けたマギリアは珍しく簡潔に術式の理屈を説明する。


「で、抜けた天井は床を浮かせて……と。おお、前の天井より綺麗に見えるじゃないか!」


 残りは詠唱要らずで事足りるのか、マギリアは押し潰した土塊を魔術で裁断し浮遊させ、天井代わりとして固定させる。もともと天井にあった土は圧縮された空気の熱で焼結したのか、土器のようにひと塊になっていた。


「一発で迷宮の一角をペッタンコに……マギリアの全力ってこんな強かったのか?」

「普段の私なら10分の1の威力も出んよ、もともと私達とスパーダが何を巡って争っていたのか忘れたのか?」


 攻城兵器のような大魔術を見せたマギリアを見て、アークメイジとしての彼女の姿を久々に見たダン長が目を丸くする。彼女は得意げに笑い、懐から石ころを取り出す。


「ああ、魔萃晶に貯蔵していた魔力か!」

「ククク、結果はどうあれコイツは渡してしまうんだ。私が溜め込んだ魔力までくれてやる義理などないからなぁ」


 備えの魔力を使い尽くし、欠片を手の平で回しながら笑うマギリア。


「それに私らの引き抜きを防ぐ確率をわずかでも上げるなら、ダン長達が部屋を作る時間は長いに越したことはないだろう?」


 笑顔から一転して真剣な表情になるマギリア。先程の一撃はせっかくできた仲間達と別れる事態を防ぐための、彼女なりの決意表明だった。


「ああ、マギリアのお蔭で整える手間が大幅に短縮できたぞ。よーし! 試練の洞窟製作、一気に進めるぞ!」

「「おー!!」」


 一瞬で平地を作ってのけたマギリアのパフォーマンスは、守護モンスター達の士気を上げる追い風となった。ダン長のサポートで道具を取り出し、意気揚々とダンジョンクラフトに挑むのだった。

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