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35話 海神の娘と悪代官屋敷 8/13 侵入者の進撃

【今回の三文あらすじ】

「興味があるけど読む時間が取れない」「最新話だけ手っ取り早く追いたい」という需要を考え、あとがきに今回の主な出来事を三文に要約しました。

 ここはミルス村を拠点とする冒険者達の稼ぎ場であるダンジョン、ラビス迷宮基地。正午を少し過ぎた頃、その村の冒険者にも関わらず野良の仕事ばかりをこなしていた甲冑の戦士が初めて足を踏み入れた。新米受付嬢に異様な執着を見せるストーカーのアインである。

 と言っても、ここで開かれると聞いた結婚式の妨害のみが彼の目的なので野営や採取の用意もしておらず、武器も背中に一振りの大剣を背負っているだけである。


『守護モンスター・マギフィリア様と受付嬢・エッダ様の結婚式場はこちら』


 入り口向かいの壁に共通語とマレビトの言葉(日本語)でこう刻まれた文字を忌々しげに一瞥し、彼は案内に従って駆け込んでいく。余裕が無い足取りではあるが、ここまで走ってきたという疲労を感じさせない軽やかな足取りはさながら小さな戦車であった。

 結婚式場と銘打ったダンジョンの中に拵えられたダンジョンは、他の冒険者達の仕事場を借りるという都合上狭くせざるを得ない。アインのスタミナを削る為に道は一本道。そのため自然と曲がり角も増えることになるが、雑魚を蹴散らしながら進むアインもそれに感づいたようだ。

 

「水よ、我が前に展じて眼前の危機を教えよ!」


 アインは二度目の曲がり角に入る前に呪文を詠唱した。魔力で精製された水が直径1メートルほどの薄い膜を形成して鏡のように景色を映し出す。水の鏡はアインを先導して曲がり角の先を映し出し、罠や待ち伏せの魔物がいないかを索敵する。敵や目立つ罠が映らないのを安全とみなしたのか、その勢いのままに角を曲がるアイン。


「ぬぅ……はっ!」


 先行く水のヴェールを突き破って、鋭い光がアインめがけて飛来する。光の正体は天井の照明を反射して煌めく複数本の小刀だった。並大抵の冒険者であれば大怪我は免れない凶悪な罠だが、アインは手刀の一撃で自分に刺さる分を的確に払いのける。刃が地に落ちる乾いた音を残して、重戦士は再び奥へと駆けだして行く。





「駆け出して行く……と、最初の罠は突破されたようだな。まあこんな罠で脱落するようじゃ仲間に迎えずに警備隊に突き出してやるところだが」

「ほっほっほ、それだとワシらが調整した意味も無くなりますからのぅ」


 ところ変わって迷宮内のサキュバス達が働く酒場、テーブルの上で喋る石を囲んでガヤガヤと騒ぐ人間と魔物の一団がいた。石の正体は転移後に即死してダンジョンそのものに転生してしまったマレビトのダン長だ。彼は先程までの描写を地の文も含めて周囲に実況していたのだった。ダン長は壁の一面に定点カメラのように目と耳を刻み、常にアインの様子がわかるように監視をしていた。ダンジョン初見のアインからすれば、丸と三日月が並んだ壁面をただの模様だと判断するだろう。

 現代ほど映画や漫画のような視覚に訴える媒体と縁の無いこの世界の人間は、逆に文字や言葉から情景を浮かべる感性が鋭い。そんな彼らに生前からTRPGを愛好していたダン長の、ゲームマスター役で勝手知ったる言葉による描写は相性抜群だった。


「チャリオット?」

「タンク?」

「ああすまん、タンクの方だ! おっと、次の曲がり角の手前でアインは足を止めた。水鏡には何も映していないが、先程の不意打ちを警戒してか立ち止まって目視で通路の先を念入りに伺っている。鏡像と己の目のダブルチェックでアインは安全を確信したらしく、意を決して乗り出す。おおっとだがその刹那! 突如天井から縄でぶら下がった丸太が現れ、甲冑を鐘に見立てた撞木のように襲い掛かる!」

「「おおおおっ! アインはどう防ぐんだ?」」


 あくまでその感受性は知識量により偏りはあるが、夜中に村の酒場で聞くような冒険譚をこの場で味わえるという興奮がこの場に一体感を生み出している。ダン長の実況再開に顔を近づけて一喜一憂する様は、まるでラジオを囲んで野球や競馬の中継に耳を傾けているかのようだ。







「どうなっている……」


 己の一挙手一投足が実況されて、戦力を分析されようとしていることなど露知らずのアインが一人ごちる。目の前には曲がろうとした通路の先から突っ込んできて、壁にめり込んだ丸太が厳然とした存在感を放っている。出会い頭にぶつかりに来る丸太の罠を、アインは素早く横っ飛びで身をかわした。しかし同行していた水鏡は丸太の直撃を受けてあえなく弾け飛び、壁と床を濡らした。

 アインは一度ならず二度までも仕掛けも無いのに、突如小刀や丸太が飛んできたことを受けて壁を調べ始める。表層の罠や魔物に物品等を自由に移動できるダン長の能力を知らなければ、彼がありもしない仕掛けを警戒するのは無理からぬことだった。

 

「仕掛けも魔物も痕跡がない……考え難いが、これは魔術による罠の召喚か? 式場……魔術……エッダを攫ったマギフィリアとかいう魔女の仕業に違いない。魔女様だなんだと村人に慕われていようが、こんな真似をする女にエッダは渡さんぞ!」


 物理的な痕跡を見つけられないアインは罠の看破を諦め、再びダンジョンの奥を目指す。走りながら激昂するその様子からマギリアへ恨みを積もらせているのは明らかだった。


「明らかだった……と、なんかマギリアが余計に怒りを買っているようだな!」

「まぁ、このコースを作ったのがダン長や我々だってことは想像だにしませんっスから……」


 ダン長の困惑にダンジョン工の最年少のアシコシが言葉を返し、残りの二人もうんうんと首を縦に振る。ダンジョン工の三人組にはテストプレイを手伝ってもらい、この悪代官屋敷は彼らの意見を反映させた仕様になっている。

 まずは道の悪さ。コーナーの多さは前述の通りであるが、その間の直線が常に上りと下りの勾配を繰り返している。平地を走る時に比べて上り坂はスタミナを削らせ、下り坂は足へのダメージを蓄積させる。加えて道のいたるところに窪みを作り、足首を痛めやすいようにしている。

 そして、相手が全身甲冑の重戦士という前情報から視界の悪さを考慮して意図的に道を暗くしている。具体的には迷宮の天井にある明かりを放つ特殊な石材、その間隔を他の区域の倍にして光量を絞っている。完全な暗闇にしなかったのは、ダン長の脳内マップだけでは人間の位置を正確に割り出せないから目視が必要なのと、それゆえに万が一アインに暗視能力があれば圧倒的に向こうに有利に働いてしまうからだ。

 つまり今の悪代官屋敷のコースは、過剰に曲がり角が多い・疲れる・足を痛めやすい・視界が悪いと走りづらい条件がそろった、ジョガーが百人いれば百人とも選ばない極上の悪路なのである。


「ガハハ、この辺の道はアシコシが何度足をぐねって魔女様に治してもらったことか!」

「ああ、それにこの起伏の激しい道はこうやって水の流れをコントロールしやすいところが便利だ」


 日に焼けた太い腕でアシコシの背中をバンバン叩きながら哄笑するウデップシにダン長が返答しながら、上り坂を走るアインの正面から鉄砲水を流す。物質転送の能力を応用して、以前にアスレチック大会で作ったプールから水を送り込んだのだ。水量は彼の膝丈ほどとはいえ、この高さと勢いの水では通常の人間なら足を掬われて流されることもある。


「む、この程度の水流……!」


 アインはこの水に対して、歩みを止めて足を踏ん張って耐えた。根が張っているかのごとく彼の体勢は揺らがない。だが、一見無意味に終わったようなこの罠は次の手への布石だった。どうやらアインの方もつきあたりの壁の白く丸い筒を見てそれを察したようだ。


「ここだ、オオメジロザメ発射!」


 壁の中央に埋め込まれた白い円筒の正体は、アスレチック大会にも利用した練り物型の魔物『ちくわ』である。ちくわは穴に入れた捕食対象を射出して気絶させる習性を持つ。壁に埋め込んで固定させたちくわの中にダン長が魔物を召喚すれば、即席の砲台となるのである。

 発射させた魔物はオオメジロザメ。戦争中は先述のプールに放流させ捕虜の脱走を防いでいたという、淡水でも生きられる大型のサメだ。その気性は英名でブルシャークと暴れる雄牛に例えられて呼ばれるほど獰猛だ。

 ちくわに撃ち出されたオオメジロザメがアインを巻き込んで背後にできた水溜まりに突っ込んで戦わせる二重の罠だ。牙を剥いて襲い掛かる巨大魚に対してアインは、ダンジョンに入ってから初めて背中の武器に手をかけた。


「はあっ!」


 足場の悪さをものともせず、踏み込みとともにアインはオオメジロザメに剛刀を振るう。赤い紋様が入った黒い刀身を持った、身の丈ほどの片刃の大剣だ。哀れオオメジロザメは頭から尾鰭にかけて左右に両断され、ヒラキになって背後の水たまりに落下する。


「なんだと、オオメジロザメを一撃で!?」

「そんな長い剣を迷宮の通路で躊躇なく振れるということは、ここではないにせよダンジョンでの戦いに習熟しているようだな。野良専と油断していたら不意を突かれていたところだ」


 膝まで水に浸かりながらサメを瞬殺したアインに驚くウデップシと、淡々と戦力を分析するキルト。同じ卓を囲んでいるとはいえ、実況を賭け事にまで発展させているダンジョン工と、この後戦う可能性もある守護モンスターとでは空気が違う。


「ダン長、罠より魔物で攻めてくれるか? もう少しヤツの剣筋が知りたい」

「ああ、わかった」


 キルトの要望に従って、ダン長は自分の意思で操れる強さの魔物をこの先の罠を彼らが誤作動させないよういくつか解除した。罠中心から魔物中心に組み立て、戦闘結果を逐一描写して戦闘員の糧とする態勢を整えた。

 しかし、ダン長がいくら魔物を差し向けようと、アインの実力を計るにはどれもが力不足も甚だしかった。アインは鎧の重さを感じさせない体捌きで大剣で魔物を切り裂き、武器を振るうに値しない相手は体術で壁の染みにしていく。ダン長が今の実力で操れる中では最強の武装したリザードマンも、群れで襲わせようが皆一刀のもとに斬り伏せられた。

 その様を観察しながらダン長は様子を口頭でもって描写し、横で騒ぐダンジョン工を尻目に守護モンスター達はアインの戦力を割り出そうとする。


「強いな……俺の召喚できる野良魔物じゃ実力を計るどころじゃあない」

「ああ、ボスに対する戦力としては上々だ。後は『どう捕まえるか』と『捕まえた後どうするか』だ」


 迷宮を走らせること約15分、エッダの下した前評判の通りアインは体力も剣技も罠への対応力も総合して高い冒険者であることを理解した。守護モンスター達の目の上のタンコブであるボスを倒すための戦力として申し分ないということは、要求を飲ませるハードルも上がる。


「まあ大丈夫っしょー! 私達、少なくともリザードマンよりはずっと強いし?」

「エッダさんの気持ちも考えると……あの人を村に留めるなら屋敷の警護とか、少なくとも冒険者は続けさせたくないわね」


 呑気なウェンティとアインの処遇に頭をひねるアクア。彼がエッダにしてきたことは毎日自分の窓口に通っていることと、教えてない住所をつきとめていたという彼女の証言だけだ。嫌がる彼女に無理矢理交際を迫ったなどのこれといった罪状も無く、後者についても他の証人もいない現状、アインに白を切られたら罪に問えるものではない。助力を頼む都合もあり、彼の今後は穏当にせざるを得ないのだ。


「ああ、だけどまずは捕らえてからだな! もう最低限の実力は見せてもらったし、イグニス達が怪我しないならそれに越したことは無いからここで捕まえてしまうか!」


 罠を踏み越え敵を蹴散らし、イグニスが見張りをする最初の番人の間へアインが疾走する。ダン長は番人の間への最後の曲がり角で勝負を仕掛ける。

 ダン長がアインに対して執拗に曲がり角で罠を張り続けたこともあって、彼は水の鏡に何も映っていなくとも曲がる前に停止するようになった。足を止めさせることで、罠を仕掛けてから発動するまでにタイムラグが発生するダン長の弱点をカバーする。


(ここだ!)


 角に立つアインの身体が僅かに沈み始める。彼が足下の違和感を感じたのか下を向くと、固めた土だった床が突然沈み続ける砂に変わっていた。ダン長が目覚めた初日に冒険者の一人を捕まえた流砂の落とし穴である。それに加えて周囲の天井や壁から無数の土気色の手がアインを捕まえようと伸びる。

 魔力を注げば液状に、抜けば固形化する性質を持つマッドゴーレム。それを加工した罠のマディックハンドを同時発動する。足下には流砂、頭上からは伸びる手の挟み撃ちだ。魔物を差し向けても捕縛は無理と諦めたダン長がしかけた罠のサンドイッチであった。


「魔衝波!」


 アインがかざした手の先から、魔力の波動が生じる。出の早い代わりに威力がそこそこ止まりの基本魔術だが、魔力に反応して液体化するマッドゴーレムの肉体は衝突地点を中心に弾け飛び、無数の手の間に隙間が生まれる。

 突破口を作ったアインは、なんと脛まで使ったはずの砂地から跳躍で脱出した。空中に留まったと思いきや、脚部の装甲が青白く光ったと思った瞬間、その肉体は空中を走り空けた穴から飛び出してしまう。


「無数の泥の手が繭のように身体を包んだと思った瞬間、魔術の詠唱と共に手の包囲網の一部がはじけ飛ぶ! 余波を受けて最終コーナーの壁が砕ける……おっとアイン飛び出した! 流砂に膝近くまで埋められていたはずだったのに、彼のこの脚力はどこから来るのか!?」

「なんらかの魔術ね。ダン長さん、あいつの身体に変わったところはない?」


 二重の罠を容易く突破されたというのに、職業病のように実況を続けるダン長。手がかりを得ようとアクアが質問を投げかける。


「えっと、脚のところの装甲が青っぽく光っているな」

「おそらく足に魔力を集め放出して推進力を得る『飛燕』の魔術だな。使い手はミルス村にはいなかった」


 ダン長の答えにキルトが脱出方法に推理を述べる。100年埋まり続けたダン長の無意識化の記憶にない魔術のようだった。罠で捕まえることは叶わなかったが、番人の間が近いここで敵の手札を明かせたことは収穫だった。


「しかし、イグニスが今の音に気が付いたら部屋に備え付けの俺を起こすはずだが……」

「何かあったのかなー」


 その一方でダン長は、見張りのイグニスが自分を起動させないことに疑問を覚えて、ウェンティがぼんやりした相槌を打つ。


(アインが入ってくるまで時間が無い、自分で出るか)


 ダン長が自力で部屋の分を起動させることにしたのと、アインが部屋に押し入ってきたのはほぼ同時だった。そこでイグニスは――


「~♪」 


 鼻歌交じりにピアノを弾いていた。







「おいイグニス! アインが部屋に入ったぞ!」

「ハッ……ごめんダン長サン! しゅ、集中しすぎてた!」


 番人の部屋にあらわれたダン長とアインを迎えたのは、鍵盤が奏でる旋律だった。奏者のイグニスは目の前に寄ってきて警告するダン長に気が付いて、慌てて蓋を閉じて侵入者に向き直る。


「……聞いてた?」

「……少し聞き入っていた。故郷に立ち寄った旅の楽師の演奏にも劣らん」

「はぁ?」


 アインから意外にも素直な感想が返ってきて、驚きの声をあげるイグニス。使い古した楽譜が物語る通り、客観的に見ても彼女の演奏スキルは優れている。ダン長もテストプレイ傍らに聞いた時に褒めていたが、『どうせ身内だからっておべっか使ってる』と彼女に賞賛は届かなかった。


「いや、多くは語るまい。式を壊してみろという挑戦状を送った手前、守護モンスターとの手合わせの合意はあると見做していいのだろうな? どかねば怪我をすることになる」

「合意と思ってもらってもいいよ、どっちが怪我するかはまだわからないけど。ダン長サン、お願い」

「ああ」


 奥に急ぐアインには世間話に割く時間は無い。彼が剣を構えて戦闘態勢に入るのを見たイグニスはダン長に合図を送る。ダン長はピアノを始めとした壊れては困る部屋の家具を各部屋に転送した。


「何、音楽を利用して戦うのではないのか?」

「「えっ」」


 部屋の荷物を片付けたのを見て怪訝そうな声をかけるアイン。ダン長達は唐突な指摘に呆けた返事をしてしまう。


「ピアノを弾きながら侵入者を待つくらいだからてっきり楽器で戦うのかと……それで訓練を練習曲とか、前哨戦を前奏曲とか、殺意を持って戦う時を葬送曲と例えたりとか――」

「なんっ……おうぇっ……」


 アインの指摘に、顔を青くして両手で腕のじんましんをかき始めるイグニス。その顔からは驚きと困惑と羞恥が混じっていた。


「ピアノがいくらすると思ってるの! いつ来るかわからん侵入者を待つのがヒマだから置かせてもらってただけ! それと後のぞわぞわする例えは何!? 人を侮辱するなってお母さんから習わなかった!? 私がそんな酔い潰れが気まぐれに考えるような痛いキャラ作ってると思ってるの?」

「お、落ち着けイグニス!」


 間をおいて激昂して矢継ぎ早に反論するイグニス。普段の物静かな彼女の様子から考えられない様子に驚くダン長だった。


「わざわざ変なキャラ作ってるの、うちにはひとりで沢山よ!」

「イグニス、実はマギリアのこと……」

「手伝った身で言うのはなんだけど……尊敬はしてるけどあのキャラはちょっと無いなと。あ、これは酒場の皆には伝えないで」


 ダン長がイグニスの顔の近くで耳打ちをすると、彼女はボソっと先輩の印象を呟く。


「挑発する意図は無かったが、戦うつもりならちょうどいい。そこの石ころ型の使い魔と二対一でも構わん、来い」

(アインの奴、俺を誰かの使い魔と勘違いしているのか? まあ捕まえてから事情は話せばいいか)


 番人を撃破するため、改めて剣を構え直すアイン。勘違いを是とするダン長を他所にその台詞を受けてイグニスは不敵に笑う。


「残念、四対一よ」


 イグニスが指を鳴らすと、それに合わせてダン長が酒場で待機していた彼女の姉と妹・アクアとウェンティを召喚する。


「人形に絵画に多趣味な部屋と思っていたら、複数体いたのか」

「女の敵、覚悟しなさい!」

「やったるでー!」


 撤去される前の部屋の様相を思い返したアインは得心がいったように呟く。召喚されたアクアとウェンティも既に臨戦態勢を整えていた。こうして侵入者とサキュバスの戦いの火蓋が切って落とされた。

【海神の娘と悪代官屋敷 8/13 侵入者の進撃】

 結婚式を破壊するために誘導されたアインは、一本道の迷宮を駆け出していく。通路の監視と酒場での実況を兼ねるダン長は、エッダの前評判以上のアインの実力に目を見張る。ダン長の罠と魔物の波状攻撃を突破したアインが第一の間へ到達した時には、見張りのイグニスは鼻歌交じりにピアノを弾いていた。

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