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27話 番外編 4/4 嘘をつかないための嘘

【今回の三文あらすじ】

「興味があるけど読む時間が取れない」「最新話だけ手っ取り早く追いたい」という需要を考え、あとがきに今回の主な出来事を三文に要約しました。

 何も成果の無い間の時の進みは早いもので、キルトの帰還報告も杖の完成もないままで2か月が経過していた。ラビス迷宮基地の夜、安全地帯のひとつである魔女の家で延々と作業をしている住人の魔女・マギリアの姿があった。効率的に魔術を使う為に杖に術式を埋め込む作業をしている。部屋の片隅には製作に失敗した杖の残骸が山積みになっている。


「49……50……51……あっ!」


 魔力を付与したペンとインクを持ち、魔力を魔術へと変換するための術式を書き込んでいた魔女は杖が唐突に割れた音に驚きの声をあげた。杖に術式を仕込む方法は人によって様々で、絵を描いたり杖に図面を彫り込んだりする者もいるが、今のマギリアのように文字を書き込むのが主流である。

 そうして魔術文字で術式を書き込んでいたマギリアだったが、50を加えたところで素材の限界がきた。彼女なりに素材と術式の相性を考えて書き込んでいたのだが、目標の4分の1も達成できず杖の方が保たなくなった。


「うーん、記録によるとイチイの杖は300まで埋め込めたらしいけど……やっぱり肥料の素材が違うのかな」


 ため息をつき失敗した杖を部屋の失敗作コーナーに放り投げるマギリア。傍らには人間からもらった杖の肥料に使った素材や刻んだ術式の一覧のデータをまとめた資料があった。

 人類に記録されたイチイの杖に仕込んだ術式の最高記録は300だったが、素材の許容量を圧迫しない弱いものを使ったのか肥料の質が違ったのか、圧倒的に足りない術式の数の時点で砕け散ってしまった。


「まだ限界の数が肌間隔で把握できないから、資料のデータとにらめっこが続くわよね……さて、次の素材はサカキの――」

「マギちゃーん、やってるぅ? 今日は冒険者さんのお土産に『かすていら』っていうお菓子をもらったのよ!」


 素材のデータと照合しながら、次の杖素材の加工に取り掛かるマギリアの部屋に来客があった。派手なノックと野太いオネェ口調の挨拶とともに、ゴツいサキュバス(インキュバス)のキャンディがお茶と差し入れを持って入ってきたのだ。


「あっキャンディ。そうね、今日はあと1時間で就寝……その前に3つくらいは術式が込められるかもって」

「もうっ……根の詰めすぎはダメよ?」


 クールな言動を試み始めてから、ようやく後輩を呼び捨てで呼べるようになったところだけは変化が見られたマギリア。眠る前に少しでも彼女は作業を進めておこうとしているものの、その表情からは疲労の色を隠すことができていない。それを察したキャンディは彼女を心配している。


「あのね……そんなに疲れるまで頑張れるのは凄いと思うんだけどね? 今までのお仕事でも十分にマギちゃんは一生懸命にやっていると思うわ」


 最初こそはノリノリでイメチェン計画を手伝っていたキャンディだったが、2か月も経つうちにマギリアの無理がたたって体調を崩さないか心配になって及び腰になりつつあった。


「……どうしてマギちゃんって、そこまで冒険者さん達を安心させようと自分を変えようとするの? それが愛?」

「あはは、キャンディが思っているほど大層なものじゃないよ。私はね……」


 お茶を飲みながらも作業の手を休めないマギリアに質問を飛ばすキャンディ。その質問にも彼女は乾いた笑いで返し、手を動かしながらも言葉を繋ぐ。


「私は、テイムされた魔物だったの。幼い時から人間の味方が当たり前。だから日々ダンジョンで倒される魔物だって同族と思ってない……ピッタリの職場だったの」


 空気に任せて思い切って自分の来歴を語るマギリア。テイムとは、魔物を仲間にすることである。戦時中から理性のある魔物を育てて他の魔物と戦わせたり、貴族や豪商が子どもの教育係に賢い魔物を抜擢した事例があった。人間寄りの世界で育った彼女は、戦後もこうして人間の味方をすることに抵抗がなかったのだ。


「冒険者を助けた縁でこの村に落ち着いた時、村の中で人として暮らす選択肢もあったよ。私と同じアークメイジには人間に扮装して人里で研究してるのもいるらしいし」

「それでもダンジョンで暮らすことを決めたのよね? どうして?」

「うーん……言葉にするのは難しいけど、強いて言えば魔物ってことに嘘をつきたくないからかな」


 疑問を続けるキャンディに、マギリアは自分が魔物であることに嘘をつけないからと答えた。人間の村で住むなら魔力に反応する建材を避けて魔術研究をしなければならないし、戦争で魔物から受けた被害が大きかった層の人間からどう付き合うかを気にしなければならなかった。

 その軋轢を避けるには、他のアークメイジ同様魔物であることを隠して人間に扮して生きねばならない。今の村人達との良好な関係も、自分らが住居から離れたダンジョンに住んでいる適切な距離感あってのものだと彼女は自覚していた。


「だからって人間の味方をしてたことを隠して魔王軍の領内で暮らしたら、今度は生き方に嘘ついちゃうことになるでしょ? ここでなら、生まれも生き方も偽らなくていいの。その場所を守っていくためなら、私は自分をどんな嘘で固めてもいいかな」


 この強キャラデビューを目指すは、嘘をつかずに生きたいという彼女自身の意思が根底にあった。


「いや、本当に無理して居座ってるわけじゃなくて、ここの暮らしも気に入ってるのよ? 村人さん達とも仲が良いし、素敵なお友達もできたし……それに」

「それに?」

「な、なんでもない」


 キャンディに神妙な面持ちで見つめられて慌てたマギリアは、自分の生活の充実っぷりを語って部屋の隅にふと目をやった。その様子を問い詰められた彼女は適当にごまかす。


(このダンジョンに眠ってる人がどんな人か興味あるなんて、なんだか言いづらいなぁ……)

「とにかくもうすぐ寝る時間だから……心配してくれてありがとね、キャンディ。さて、今夜の相手はイグニスちゃんかー、たしかツンの教習だっけ」

「……わかったわ。もうアタシは止めないけど、これだけは守ってほしいの。どれだけクールに振舞えるようになっても、心まで冷たくなっちゃダメよ。根っこの優しいマギちゃんだけはそのままでいてね? それじゃ、おやすみ♪」

「うん」


 別れの挨拶を済ませて魔女の家を後にするキャンディ。見送ったマギリアもペンを置き、歯を磨いて就寝の用意を始めた。







「久しぶりだなお前達。我輩がいない間、ダンジョンに異常は無かったか?」

「ほほう、ついに帰ったかキルトよ。手芸修行は無事に終わったのか」


 マギリアが強キャラを目指すことを決めてから1年と2か月が経った頃、かつて半ば拉致のような形で引き取られた透明人間のキルトが迷宮基地に帰還した。出迎える守護モンスター5体の真ん中に立つ人影の、聞き慣れた声から聞き慣れない余裕ぶった口調が耳に届く。


「……なんだその珍妙な口調は」

「いや、キルトの変わり様こそなんだ、そのコートに帽子にサングラス……すごっ」


 自分の変貌っぷりを見せつけるために出迎えたはいいものの、キルトの格好の変化に食いついてしまうマギリアだった。マレビトのもとで服飾の修業をしてきた彼は全身包帯の上にサングラスと探偵帽、茶色のトレンチコートとズボンを着込んで、首に場違いなマフラーを巻いていた。


「服に関わっていくうちに、我輩は全裸に包帯を巻いている変質者ではないかと思い始めてな。卒業試験ということで作っていたら少し遅くなった。道具は後日人間達が届けにくる」

(試験がコートでよかったの? 元の世界じゃキモノの職人って言ってたよね……?)


 知恵の実を食べた人間のように羞恥を感じるようになってしまい、以前にしていた全身包帯スタイルをやめて服を着込むようになってしまったキルトだった。服を作る技が残れば何でもよくなってしまったのか現代で言う洋装にOKが出たことにマギリアは心の中で突っ込む。


「見ての通り地獄の特訓で基礎は叩き込まれたが。それで、マギリアのその小ぶりな杖は我輩が調べた弱点の回答か?」

「ああ、この通り前に使っていた杖と同じ234の術式を埋め込んだ結果……」


 キルトも目の前の魔女が背中に負っていた大きな杖が消え、代わりに腰のホルダーに短杖が挟まっているのに気が付いて尋ねる。それに意気揚々と反応したマギリアが、見せるが早いか杖を展開して構える。扇状に広がった薄い杖の間に、七色に光る大量の魔術文字が浮かび上がる。

 マギリアの声が途切れた瞬間、迷宮の壁が見えない重機の鉄球でもぶつかったかのように凹む。それ自体は低威力の代わりに詠唱が短く、出の早い攻撃魔術の効果だが、その短い詠唱すら省略して行使されたことにキルトは驚きを隠せなかった。


「……詠唱抜きで?」

「ああ、こうやって開くと扇子でいう骨の間に魔術文字が出てくるだろう? 杖本体に術式を刻むといずれ素材の限界が来るが、この杖には展開時の骨同士の隙間に埋め込む裏技を使ったのだ。杖自身の術式は光の束を生み出すシンプルな機能で、その光の中を仮想空間として魔術文字で数百の術式を組んだ。限界容量を超えないように展開の手間を挟むことでサイズを圧縮できたと例えればわかりやすいか? しかし前の杖じゃあ隣国ニルニカに飾られている『神樹の杖』の1075の術式に挑戦しようとして300を超えたあたりで異常が起きた。仮想空間の術式容量の限界を超えたら杖の代わりに仮想空間が崩壊した。『ありもしない空間が崩壊する』という現象の矛盾を解消するために、周囲の現実空間が断裂して吸い込まれて命を落としかけた! だが断裂空間は向こうにマレビトの世界に通じると過程すれば、空間断裂現象を恣意的かつ高度の精密動作を確立したのが人間が行っていたマレビト召喚の魔術である解釈が――」

「そうかそうか」


 魔術に関わることになると鼻息を荒くして早口になるマギリアを制するキルト。


「ということは、杖も口調も改めたなら我輩がお前の服を作ってしまえばお前の見た目強化計画も完成か」

「そーそー、それでねキルトさん。ついでに作って欲しい衣装があるんだけどー」

「何だこれは……化け蜘蛛か?」


 会話にサキュバス末妹のウェンティが割って入る。彼女の手には服のイメージイラストが描かれた紙があったが、キルトの第一声が魔物扱いだった。彼の皮肉なのではなく、それだけその絵が何かわからないほど酷いのだ。


「メイド服ですー。こないだ助けた冒険者がいいところのお嬢様だったみたいで、お礼に家に招かれてー……そこで見たメイドさんの服が可愛いと思って! 他にも街で見たお店で着てみたい服を描いたの!」

「なぜこんなに作ってやらなければならん? マギリアの服を作る為に鍛えたんだから、せめて後にしろ後に」


 ついでの数が多すぎることに辟易したキルトがウェンティの頼みを断る。姉2人は言わんこっちゃないといった表情でその様子を見ていたが、マギリアが片手で頭をかきながら口を挟む。


「あー、私の一張羅には糸も布も貴重な素材を使ってもらうからな。無駄にしない為の慣らしは必要だろう?」

「……それだとお前の完成が遅れるが構わないのか?」

「私も先週まで杖の製作に専念してたからな。今からどんな服が強キャラらしいか村でリサーチしとくよ」


 それっぽい理屈でまるで相手の為を自分の都合かのように語る術を手に入れたマギリアは、先に彼女の衣装作りを優先させるよう促した。手芸スキルを携えたキルトが帰ってきて、今現在のラビス迷宮基地に繋がる形になったのだった。






「崩天掌!」

「プギィィッ!」


 ラビス迷宮基地地下の群生地に甲高い声が響き渡る。かつてこの草原の探索で蹴散らされて追い詰められた冒険者4人組が雪辱戦を行っているのだ。相手は当然かの脳筋魔猪。彼らを助ける時にマギリアが風魔法でつけた傷の跡が当時と同じ個体であることを証明している。

 隙を見て腹の下に潜り込んだ拳闘士の少女が発した、文字通り天を突き崩さんばかりの勢いの掌底が突き刺さる。内臓に重篤なダメージを受けた因縁の敵が横倒しになる。


「動きが止まった、今だ!」

「地を這う獣よ、巌の牙に呑まれ大地の血肉と化せ! ロックランス!」


 魔術職の青年が後衛で詠唱と共に地属性の魔術を行使する。崩れ落ちた猪の巨体の下から岩石の槍が刺し貫き、先端が天蓋を向けて飛び出した。猪の魔物は声をあげることもかなわず絶命した。


「やった……」

「よしっ、牙と蹄を切るぞ! 肉も持てるだけ切り出してくれ!」


 死亡を確認した冒険者達が脳筋魔猪の死骸に駆け寄り、戦利品の解体を始める。その様子を眺めていた人影が解体を任せて眺めている後衛達に近づいてくる。


「ほほう、無事己を磨き仇を討てたようだな。冒険者諸君?」

「魔女様! 見ててくれたんですか!?」


 冒険者から魔女様と呼ばれたその正体は守護モンスターのマギリアだった。彼女は右手をあごに添えて妖艶に微笑んで一行の健闘を称えてきた。


「3年前にヤツ相手に逃げ回っていた頃に比べて随分変わったな。装備を見直し、連携を見直し、罠を張って万全を期して戦いに挑んだ」

「へへ……変わったと言っても魔女様ほどでもないですよ」


 マギリアが3年の間に果たした冒険者達の成長を評する。後衛の1人が照れ笑いをしながらかつての恩人に言葉を返す。3年、つまるところキルトがダンジョンへ帰還してから2年弱の時間を経てマギリアの外見はすっかり変わり果てていた。

 三つ編みをした柑子色の髪と金色の目はそのままに、服のイメージカラーが白から紫に変更された。ウェンティのせがむ服を作っている間に、彼女は主にマレビト達に強そうな色を聞いた。その結果なにかとサブカル分野では強キャラが多いと答えが返ってきた「紫色」をイメージカラーにすることとなった。

 魔女としてオーソドックスすぎるとんがり帽子からフードに替え、幼く見える萌え袖気味な黒の上着から長手袋にし、スカートも黒のフリル付きからスリットの入った長いスカートとなった。未だに服に着られている感は拭えないが、その風貌はいかにも大魔王の女幹部といったものだった。


「まぁな……」

「おーい、水魔術で牙の血を洗い流して……って魔女様!?」


 猪の解体を進めていた冒険者達が待機勢に応援を頼もうと振り向いた時に、マギリアの存在に気付いた。彼らも解体を中断してこちらへ駆け寄ってくる。


「魔女様、やりました! 苦節3年、俺達はあのどうにもならなかった魔物を!」

「あ、あぁ……」


 解体を中断してまで、かつての強敵を破ったことを嬉々として報告しにくる冒険者達。守護モンスターの救助が無ければあの日に死んでいたからこうなることも無理はないだろうが、肝心のマギリアは少し慌てている。

 

「ありがとう、私がリベンジできたの魔女様のおかげだよ!」

「「ありがとうございました!」」


 感涙に目を潤ませて、魔女の手を握って大声で礼を告げる拳闘士の少女と追い感謝をする冒険者達。彼女は赤面しつつも感情が表に出やすい性格を必死に抑え込む。


(お礼言われて平常心保つの、まだ慣れないんだよね……えっと……そう! こういう時は私の都合で助けたみたいに言い訳すれば照れ隠しが成り立つパターン!)

「礼には及ばないぞ? 勘違いしてもらっては困るが、お前達を倒すのはこの私だからな」

「へ……?」


 TPOガン無視のマギリアの返答に冒険者達の空気が硬直する。現状はまだダンジョンのボスは人間達が覚醒に備えて対策をしているため、マギリアに仲間集めをするという目的は生まれていないのだ。


「魔女様……? それってどういう」

(うわ……冒険者の皆驚いてるよね……えっと、倒すってことは命を奪うってことだから……)


 マギリアは唐突なツンデレのテンプレの意味が理解できない冒険者に対して混乱する。そして次の句を繋ぐための言葉を己の語彙から探し始め、語句を出した――


「お前を殺す」


 前代未聞の『守護モンスターによる殺害予告』が発生し、マギリアはギルドに呼び出し&事情聴取をくらってしまった。

 冒険者の愚痴が元凶なのと普段の仕事で積み上げた信頼があって軽い注意で済んだものの、ギルド長に事情を説明してベソをかきながら帰ってきたマギリアを見てバランス良くクールを気取れるのはまだ先になると思う同僚達だった。









「……というのが、どうして今お前達の前でマギリアが陽気に騒いでるかの答えだ。ヤツは酒に弱いわけじゃないが、いざ酔うと必死に作ってきたキャラを忘れるんだ」

「ねー見て見て、この炙り肉! 行きつけだった酒場が潰れたって悩んでたら、キャンディさんが再現して作ってくれたの!」


 アスレチック大会の打ち上げで、フリッカとの喧嘩に疲れたマギリアは近くの酒を水と間違えてあおってしまった。それで出来上がってしまった彼女は急にふにゃふにゃ気味な陽気になって絡み始めた。困惑したダン長はカウンターに向かい、キャンディとキルトになぜこうなったのかを尋ねて、先程の昔話を数分に要約されて説明されたのだった。


「フリッカちゃんも、お友達出来てよかったね! 大会中止はちょっと残念だったけど、一番頑張ってたと思うわ」

「うざっ! やめろその絡み!」

「もう二人とも……」


 テンション高く絡んでくる彼女を邪険にするフリッカ。慌ててリンが仲裁する。


「そうか……俺が不意に発した寝言で火をつけてしまったわけか……」

「あらやだ、気にすることないわよ。冒険者さんの愚痴を聞いちゃったマギちゃんの不運がきっかけなんだし。それに結果的にイメチェンしたマギちゃんを頼る冒険者さんが増えて、キルトちゃんはああやっていろんな服を作れるようになったし?」


 カウンターで自分の寝言が原因かとしょげるダン長であったが、キャンディはそれで得られる者があったとフォローを入れる。彼女の視線の先では妹分達がメイド服を来て接客している。


「それにしても、あのマギちゃん見てると安心するのよね。態度だけクールになっても、お酒で本性が出たら根っこは明るくて優しい頃のままってわかるから♪」

「そっか……あっちが素ってことは普段から結構無理してんだな……」

(知的好奇心とか言って誤魔化して、この世界のことや俺自身に起きたことを教えようとがんばってくれてたのか……俺がいなくなるまでの間にそんな恩を返しきれるだろうか)


 マギリアが自分の為に前々からしていた調査の様子を改めて聞いて、彼女の存在の有難さを再び噛みしめるダン長。転移転生の類で移動先の世界を一から十まで教えてくれる便利な女神様はここにはおらず、目の前の酔っぱらい魔女の地道な積み重ねがその代わりだったのだ。ダン長は自分が世を去る日までもっと積極的に彼女を支えようと決意を改めて固める。

 ちなみにこの後寝落ちしたマギリアはダン長の魔女の家への召喚を受け付けず、リンが背負って運んだ。

【番外編 4/4 嘘をつかないための嘘】

 新しい杖作りに苦戦するマギリアに差し入れを持ってきたキャンディに、彼女は自分が戦時中から人間のもとで育った魔物であったことを告げる。それから1年あまりの月日が過ぎ、仕立て屋の修業を終えたキルトと己の新しい杖を完成させたマギリアが互いの成果を見せつけ合っていた。そして時は現在に戻り、そういったイメチェンの経緯を聞かされたダン長は、酔った時にキャラ変前の言動が露呈するマギリアの様子を見ながら自分が去る日までにできるだけ彼女を支えようと心の中に誓うのだった。

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