■ある女編 その2
ある日、いつものように男の子と、遊んでいた。
場所は男の子の家の中。
この日は雨とあって、さすがに外では遊べない。
そこで男の子の提案で、かくれんぼをすることになった。
鬼は男の子、逃げるのは女。
『どこに隠れようかな?』
女は迷っていた。
『ここにしよう』
女が隠れた場所は2階奥の物置の中。
ここならばれないだろうと、子供心に思いながら息を潜めて待っていた。
「どこ~?」
少年の声が遠く聞こえる。
やはりここに居れば見つかることはないだろう。
そう思っていたときに足音が聞こえてきた。
『見つかったかな!?』
女は生唾を飲み込みことの成り行きを見守っていたが、その足音は男の子のものではなく大人のものであることが、近づくにつれてわかった。
そしてまもなく話し声が。
「私、もう限界……」
男の子の母親の声であった。
「そういうな、もう少しがんばろうよ」
これは父親の声だ。
「あの子がいなければ、あの子が生まれてこなければ、どんなに幸せだったことか!」
押し殺しつつも、情念の涙声で母親は漏らした。
父親は黙ったままである。
「……」
聞き入る女。
「いっそ、あの子を殺してしまいたい。そうすれば……」
「おい! なんてことをいうんだ! よりによって……そんなこと……」
女は会話のやり取りから、両親ともに男の子は要らない子であるということを感じ取った。
そして女は幼稚園に入園した。
男の子も一緒である。
ここでも二人は仲良く遊んだ。
そして、みんなに隠れてよく虫を殺していた。
「どっちが多く蟻を踏み殺せるか競争よ!」
女が言うと、男の子も地面を右往左往する蟻めがけて靴底で踏み続けた。
地面には見る見る蟻の死骸が作られていく。
二人とも、一心不乱だ。
「楽しいね!」
「うん!」
「夏になればカエルも出てくるからね! 早くカエルを殺したいな!」
女は無邪気にいった。
男の子は女がうれしそうな顔をしているだけで、自分も同じような幸福を実感するのだった。
そして卒園の前の日、最後の行事としてタイムカプセルを埋めることとなった。
子供たちは先生から渡された色紙に、好きな夢を書いている。
「ねぇねぇ、なんて書いたの?」
「おしえな~い!」
いちように楽しそうだ。
女は色紙に夢を書くと、タイムカプセルの中にしまった。
続いて、ほかの園児たちも同じように入れていった。
「全員入れたかな~?」
先生が園児たちに確認する。
「は~い!」
明るく大きな声でみんながいっせいに答えた。
女は男の子に小声で話しかけた。
「色紙に何書いたの?」
「え? う~ん」
「ねっ! 私にだけ教えて!」
「それなら、ばくりっこしようよ。お互いに教えるっていうのはどう?」
「いいわよ。それならあなたからよ」
すると男の子はもじもじしながら言った。
「君にお嫁さんになって欲しい……って」
それを聞いた女は照れた。
「それ本当?」
「うん、本当」
「それなら、これからもいっぱい虫を一緒に殺してくれる?」
「いいよ!」
そう聞くと、女は満足げな表情を見せた。
「それじゃあ、今度は聞かせてよ! 約束だよ」
「う~んとね、私はね……」
口ごもりながら男の子の耳元でささやく女。
「本当! ありがとー!」
女からの告白に大喜びする男の子。
「約束だよ! 私が大人になったら……」




