■新興宗教編 その3~過去~
今日は入学式。
この日はさすがに両親と揃って学校へ行くこととなった。
校門には笑顔があふれている。
悲喜こもごも、笑顔と絶望に彩られたカオスのような合格発表の日とはえらい違いだ。
両親の顔を見てみたが至って平常通り。
特別な表情や意味は読み取れない。
たぶん、自分も同じような顔をしているのだろう。
入学式は、やはりというかなんというかひどくつまらないものだった。
これもイニシエーションだと割り切って、時間が過ぎるのをただ待った。
そして、まもなく解放。
「母さん、入学式の訓示とはあんなに陳腐なものだったかな?」
父親が言った。
「ええ、同じようなものだと思いましたけど?」
二人とも入学のタイミングは違うが同窓。
「う~ん、そうか。私のころはもう少し薀蓄のある言葉を贈られたような気もしたがな」
「……」
他愛のない会話を聞き流すC。
確かに訓示はつまらないものだった。
ただ、この世に意味のないものなんてない、というのがCの考えだが「面白い」か「つまらないか」というのはあると思っている。
そう考えると、世の中は意味にあふれているがつまらないものばかりだな、とCは思った。
「よし、このへんで撮るか?」
そういうと、父親はポケットからケータイを取り出した。
「ん? いいよ、別に」
意味はあるのだろう、しかしこれはつまらないことだ、とCは思った。
「まぁ、そういうな。そこに立って」
促されるままに言われた場所に立つC。
別段拒否する理由もないからだ。
「それじゃあ撮るぞ」
ケータイを構え、シャッターが切られた。
「よし、オーケーだ」
まもなくすると、ケータイが振動した。
写真がCのケータイに転送されたことを告げている。
まぁ、見ることはないだろうな、とCは思った。
写された写真を父親がさっそく見ている。
今撮ったものをすぐに見てなんになるのか?
写真なんて記録、記憶でしかないのだから今見たところでしかたがないのではないか、とCは思ったからだ。
すると突然、父親が意外なことを言い出した。
「撮り直そうか?」
「えっ? もういいよ、何枚撮っても同じでしょ?」
さすがに面倒くさくなったC。
「しかしだなぁ、この表情……」
歯に物でも詰まらせたように父。
「え、見せて、見せて」
母親も写真を見ている。
「そうねぇ……」
母親も歯切れが悪い。
面倒ではあるが展開上Cも見ないわけにはいかなくなったので、ケータイを取り出し写真を確認してみるが、別段おかしなことはない。
いつもの自分がいるだけだ。
「別に、普通でしょ?」
Cにはもちろん違いなどわからない。
しかし、その時父親の言った意外な一言がCの心に突き刺さった。
「うん、なんていうか、表情がよくないな……冷たい……いや死んでいるというか」
遠慮がちながらもズバリ言う。
「ちょっとお父さん!」
それを母がたしなめた。
『えっ?』
言われてみて、もう一度写真を見てはみたが父親の言うことはわからなかった。
『一体どこが?』
いや、もしかしたら俺は周りの連中から、そんな風に見られているのだろうか?




