■図書館の少年編 その2~過去~8
再度単調な本探しに取り掛かる。
時間だけが経っていく。
そして西日がきつくなり始めたころ、図書館にある本すべての確認が終わった。
結局目当ての本は見つからなかった。
「収穫なしか……」
がっかりする少年に対して孝は言った。
「もしかしたら、貸し出し中なのかもな」
「!」
一瞬ひらめいたような表情を見せる少年。
「それだ!」
そういうと、事務室のほうに向って走り出した。
パソコンの前に座り、操作をしている。
「何をするんだ?」
孝は聞いた。
「うっかりしていたよ。貸し出し中の可能性もあるんだよね。それなら、図書館の貸し出し履歴を追えば、どこのだれが借りたのかすぐにわかるんだよ」
わき目も振らずにパソコンの操作を続ける少年。
「しかしパスワードとか、かかっているんじゃないのか?」
「だろうね。ただ、ここのパソコン、事務員が逃げ出したときのまんま電源落としていないから、ひょっとしたらつながったままになっているかもしれないから」
そういうと少年は一台、一台、パソコンの操作をしていった。
「あった! このPCだ!」
間もなくすると調べがついた。
やはり貸し出し中のようで、場所は某町の某番地と、ここから少し離れたくらいの場所にあることが分かった。
「それじゃあ行ってみようか」
「そうだね! さっそく行ってみよう」
二人、図書館を出て、さっそく目的地へと足を運んだ。
途中、建築現場があったので立ち寄って、鉄パイプを見つけて少年に渡した。
「これは?」
いぶかしがる少年。
「念のための護身用さ。俺はここまで来る間にも何度か暴漢に襲われたことがある。道すがら出会わないとも限らないからな」
「そうなんだ。やはりまだ、かなり危険な状態なんだね」
そういうと、孝から手渡された鉄パイプを右手に持ち、また目的地へと向かうべく、歩き出した。
そして図書館から出て約1時間。
「着いた。この家だよ」
少年はケータイのマップを確認しながら孝にいった。
大きな家だった。
しかし、すでに暴漢たちに襲われたのか、ガラスはすべてたたき割られており、無残な姿をさらしていた。
「それじゃ中に入りますか?」
少年は先頭切っていこうとしたが、孝はそれに待ったをかけた。
「いや、賊がいないとも限らない。慎重に中の様子を探ろう」
そういうと、孝はドアをゆっくり開いて、耳を澄ました。
音はしない。
「よし、入るとするか。けっこう広い家だから、君は一階を探してくれ。俺は二階を調べるから」
「了解」
少年は居間へ、孝は階段を上って二階へ。
と、その直後、
「うわぁ~!」
少年が驚きの声を上げた。それを聞き、即座に階段から居間へと孝は急行した。
「どうした!」
「こ、これ……」
そこには、中年らしき女と若い男女の死体が転がっていた。
ただ、死体の顔はいつも見ているそれではないところからみると、このおかしな出来事が起こる前に死んだのだろう。
ただ、あまり腐乱していないだけに、それほど古い死体ではなさそうだ。
孝も一瞬、気分が悪くなった。
普段見慣れているいつもの顔の死体にはもう免疫ができてなんとも思わなくなっていたが、顔という個性がある死体を見たのは初めてのことであり、また家族らしき背景も脳裏に浮かんだことで、嫌な気持ちになった。
ただ、こんな世の中になる前に死んだことは、ある意味幸せなのかもしれないが。
「う、ひ……」
少年はまだ取り乱している。
孝は自らにも言い聞かせるように少年に言った。
「落ち着け! 死体はお前になにもしない。それに今の世の中は死体だらけだ。そう考えれば、気も楽になるだろう」
「うん、で、でも……わかった」
少年は死体から目を背けていった。
「それじゃ、探し物の続きをしよう。時間が惜しい」
そういうと、少年を置いて孝はまた二階目指して歩き始めた。
廊下、そして階段を上って二階へ。
二階に着くと、ドアが6つもあった。
奥の部屋から順に探していくことにした。
一つ目の部屋に入る。
部屋は荒らされており、物が散乱していた。
一つずつ手にとって探し出す。
目的の本はない。
次、二つ目の部屋。
足を踏み入れたその時、
「ガン!」
部屋に人の気配を感じ、とっさに身構えたことで致命傷はさけたが、頭を棒の様なもので殴られた。
「くっ!」
少しフラフラするものの、その場から少し距離をとり、相手の側を見る。
「オマエ、#$%&カネ!!"%&%」
片言っぽい日本語で話しかけてきた。
顔は同じだが、日本人ではないのかもしれない。
確かに床に目をやると一万円札が散乱していた。
また、頭を叩き割られて血まみれで死んでいる中年男の死体もあった。
『それにしても金だと?』
このご時世に……相手はまともじゃないのかもしれない。




