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■図書館の少年編 その2~過去~7


「ティツィアーノ?」


孝は聞き返した。

少年の頼みごととは、この図書館の中からある画集を探してほしいのだという。


「そう、ティツィアーノ。ティー・アイ・ゼット・アイ・エー・エヌ・オーさ。その画家の画集を探してほしいんだ。日本版でも海外版でも構わないからさ。あるだけ探してくれないかな?」


「画集のコーナーを探せばいいのか?」


「いや、全部だよ。以前、確かに借りたことがあるんだけど、昨日画集のコーナーを探してもなくてさ。どこか別のところに紛れ込んでいるのかもしれないから」


「わかった。さっそく探してみよう」


「それじゃあ、僕は右奥から、君は左奥から探してね。なにしろこの町一番の図書館だけに在庫数も多いから、探すのは大変だと思うけどね」


そういうと、さっそく探しにかかりはじめた。

◆■◆

『すぐに見つかってくれるといいのだが……』


孝は図書館内の空間を軽く見渡してから思った。

地方都市の図書館とはいえ、県で一番大きいというだけにさすがに広い。


『今日一日で終わるかどうか……』


考えながらも、丁寧に一冊ずつ本の背表紙に目をやった。

『ティー・アイ・ゼット・アイ・エー・エヌ・オー』


頭の中で考えながら、背表紙を目で追う。

単純な作業は続く。

そういう時に限っての癖で、また梢のことを考えていた。


『梢はそもそも生きているのだろうか?』


なくはない、悪いほうの可能性が頭の中を占めてしまった。

それを振り払うように頭を振る孝。


『バカなことを考えるな! 生きている、きっと生きているはず』


そう思い直すと、また本の背表紙から一冊の本を探し続ける単純作業へと戻った。

数時間後、少年は孝のそばに来て言った。


「そろそろお昼ご飯にしないかい?」


一刻も早く見つけたいところだが、さすがに孝も腹が減っていた。


「そうだな。それじゃあ少しだけ」


そういうと、また休憩室のほうに二人向った。

少年はまたカップラーメン、孝は手持ちのパン。


「まだ、ガスは使えるんだな」


孝がいう。


「うん、いつまで使えるかは分からないけどね。電気もまだ大丈夫みたいだし、あとケータイもね」


その言葉に驚く孝。


「本当か? ケータイはまだ使えるのか!?」


いままで自分のケータイでは何度コールしても同じアナウンスばかりだったので、もうケータイは機能していないのかと思っていたのだが……。


「わ、びっくりした! 急に脅かさないでよ」


「本当なのか?」


「本当だよ。ためしに天気予報にかけてみたらちゃんとつながったから」


「そうか、ちょっと君のケータイ貸してもらえないかな?」


「別にいいけど?」


そう言うと、少年はポケットからケータイを取り出して孝に渡した。

さっそく自分のケータイを取り出して梢の番号を確認し、電話をかけてみる。

しかし、結果は、


「お客様のおかけになった電話番号は、電波が入らない場所にいるか、電源が入っていない……」


ため息をつき、通話をOFFにする孝。

そして少年に手渡す。


「つながらなかったの?」


「ああ、つながらないというアナウンスだけさ」


がっかりしながらつぶやく孝。


「それって、相手のケータイが壊れいるんじゃないかな? もしくは電源入っていないとか?」


「え? そうなのか?」


「うん。壊れているってことは電源が入っていないわけだからさ。不通案内のアナウンスになるって何かで読んだことがあるよ」


「そうか……そうなんだ」


「メールは? SNSとかはやっていないの?」


「そっちについても連絡済みだ。でも返事を出しても返ってこないな」


「そうか。だとしたらケータイが壊れている可能性が高いかもね。ここと東京では状況が違うかもしれないけれど。でもメールとかならパソコンから見ることもできるんだけれどね」


「ああ……でも、残念ながらそういう知識には乏しいんだよな」


落ち込む孝。

もし、少年の言うようにケータイが壊れたとなると、向こうからはかけてくることはできないだろうな、と思ったからだ。


いくら大事な人とはいえ、ケータイの番号を覚えている人なんてそうはいないだろう。

ケータイに登録してしまえば、あとはもう番号なんて押す必要がないのだから。


パソコンからアクセスするようにも呼びかけているのだが、今のところそちらの返事もない。梢の機械音痴についてはこれまでの仕事を通して十分すぎるほど知っているだけに、そちらの望みも薄い。


また、何よりも今いる場所から移動できないという可能性も考えられる。

身近なところにパソコンなり誰かのケータイなりがない状況であれば、それらで連絡を取ることはできないだろう。


そしてなによりも、田舎ですら暴漢の危険性があるのだから、東京都もなるとその危険度はさらなるものだろう。


『頼む、無事でいてくれ』


今の孝にできることは無事を祈ること、そしていち早く梢の元へと到着することだけだ。


そう思うといてもたってもいられなくなった。


「そろそろ続きにかかろうか?」


少年を促して書架へと向かった。

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