■図書館の少年編 その2~過去~6
その後少年に案内されて、別の部屋に移った。
そこは休憩所。
ここで多くの職員が憩い、談笑をしていたのだろう。
この忌まわしい出来事が起こるまでは。
孝は進められるままに、椅子に腰をかけた。
「それはそうと、おなかすいてない? 食べ物ならあるから分けてあげるよ」
「ありがとう、助かるよ」
この時代、食料はかなり貴重なものとなった。
パニックに乗じて、お店などにあったほとんどの食糧は瞬く間に消えてしまったからだ。
それだけに、この少年からの申し出はかなり嬉しいものだった。
少年は間もなくカップラーメンを持って現れた。
孝にはパンを与えた。
食べ物を口にしながら少年に尋ねる。
「ここから東京まではどれくらいかかるかな?」
「えっ? 東京? まだまだずいぶん遠いよ。でも、なんで東京なんて目指しているの?」
そこで孝は梢とのいきさつを話した。
少年はふんふんとうなずいて聞いている。
「いいね。こんな時代に生きる目的があるってことは。たぶん多くの人は顔が同じことになって、それを見失ってしまったんじゃないかな? 自殺や殺戮に走る人たちは、たぶんそういった目的のない人たちなんだろうね」
少年は続ける。
「僕も読書という楽しみがあるからね。もうイジメっ子たちにも邪魔されず読めるわけだし。ところで君は読書はするほう?」
少年の問いかけに孝は答えた。
「そうだな。ボチボチかな」
孝が主に読むのは、仕事に関するビジネス書の類が多い。
「そうか。なら、聞きたいんだけど、頭の中で読んでいる声って男? それとも女?」
「ん? 男の声だな」
「そうなんだ? それなら女の人は、やっぱり頭の中で読んでいる声は女の声なのかなぁ?」
「さあ? どうだろうな」
変なことを聞く子供だな、と孝は思った。
そんなとりとめのない話をしているときに、突然少年は思い出したようにいった。
「あっ、そうだ、ひとつお願いしたいことがあるんだけど……」
「すまんけど、急ぐ旅なんだ。あんまりここでぐずぐずしていることもできないんだ」
「そうかい。なら無理にとは言わないけどさ。ただ、この顔が一体何なのか興味はないかい?」
「なんだって? この顔のことについて何か知っているのか?」
少年はもったいつけて言った。
「それは手伝ってくれたら教えてあげるよ。どうだい? 取引するってことで」
孝は一瞬考えた。
この少年相手なら暴力でもって口を割るほうが早いのではないかと。
しかし、思い直した。
この旅に出てから初めて人間らしい人間に会ったからだ。
それに一食の義理もある。
「いいだろう。大いに興味のあることだしな。で、手伝いって何をすればいいんだ?」




