⑧ 見知らぬ訪問者
「そろそろ困っているかな?と思って、来てみたんだけど……」
その青年が口を開いた。
「ええっと、どちら様でしたっけ?」
「あ、ああ、ごめん、ごめん。25歳のキミとは、はじめまして、だったね?」
変な事を言う青年だ。サン・ジェルマンはそう思った。
「ボクの名は真田雪村。未来のキミの友人で、雪子の弟みたいなモノだよ」
「……はあ?」
「そんな事を急に言われても、困るよね?分かるよ。だから一応、証拠を見せようか」
彼はそう言うと、伯爵に封筒を渡した。
その封を切ると、中からこんな手紙が出て来た。
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拝啓 過去の自分へ
私は西暦2005年のキミです。
まずは、急にこんな手段を取る事をお赦しを。
同じ時間軸の自分に会うのは、リスクが有り
雪子さんは別件で、手が離せないので仕方無く。
代理で顔を出して貰った雪村くんは
我々のチームの中でも、随一の実力者だ。
信頼して、ソクラテス先生を預けてくれたまえ。
こちらの世界では、同じように救出した
歴史上の、才能を持った人物たちを
保護するための施設が、充実している。
だから是非、彼に先生を預けて欲しい。
過去の私であるキミの、賢明なる判断を求む。
西暦2005年5月5日 サン・ジェルマン伯爵より
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なるほど。確かに、手書きの筆跡は、自分のモノのようだ。しかし……。
そんな感じでまだ伯爵が迷っていると、雪村が更に話し掛ける。
「最後に、コチラもご覧下さい」
彼は左腕に着けたデバイスから、立体映像を出した。そこには雪子が映っていた。
「お久しぶり。お元気かしら?まあ、元気よねえ?事情は、アナタ自身が手紙に書いた通りだから、私の弟を信用して。また10年もしたら、直ぐに会えるから、楽しみにしておいて。じゃあまた、ね?」
たったソレだけの内容の、短い動画だった。
しかし、伯爵にとって、説得力は充分だった。
何しろ彼は、雪子の信者なのだから。
「委細、了解しました。ソクラテス先生を、キミに預けます」
「ありがとう。決して先生を、悪いようにはしないから、安心したまえ」
雪村はそう言うと、ソクラテスの眠るベッドに腰掛け、掛け布団をめくった。そして……。
「うん、解毒の措置は、完璧だね。流石は伯爵だ」
と、若いサン・ジェルマンを褒めた。




