③ 伯爵vs伯爵
床に倒れ伏している少女を挟んで、睨み合う二人の伯爵。
「キミは今、私の事を知らないと言ったな?」
サン・ジェルマンが問いかける。
「いかにも。誰だキサマは?」
何も知らないカリオストロは答える。
「私は……サン・ジェルマン伯爵だ!」
「……えっ!?」
驚くカリオストロ。そしてサンジェルマンの顔を、マジマジと見つめる。
「……あ、ああっ!?」
「どうやら、私の顔を知っているのは、本当のようだな?」
「し、しかし……キサマは若すぎる」
「ああ、今日はうっかり、顔にシワを付けるのを忘れたんだよ。ひょっとしたらキミは、かつて、もう少し年を取った私に出会ったのか?」
「そうとも。そして正式に弟子にしてもらったんだ」
「一体それは、何時、何処で?」
「フランスの研究所で……錬金術の実験のために、弟子にして下さったじゃないですか?」
最後は、半泣きの声で、敬語になるカリオストロ。
「ああ、あの時の……助手のウチの一人か。いちいち名前まで覚えていないぞ」(第ニ部 新世紀編③ 参照)
「確かに、あの頃の吾輩は、ほんの少年だったが、忘れてしまわれたのなら、口惜しい。それにしても貴方は……声は間違いなく、師匠のモノなのに……顔が若過ぎる。さては、若返りの秘術を使ったのですね?」
「そうじゃない。さっきも言ったが、あの時は、中年男性に見えるように、変装していたのだよ。若輩者に見られない方が、社交界で動きやすいからな。」
今や会話は、すっかり主従関係のソレになっていた。
「さて……キミはここでナニをしていたんだ?」
「秘術を使って、この娘の、心の病を治そうとしていたんですよ」
「私には、いかがわしい儀式にしか、見えなかったぞ?どんな症状なんだ?」
そこでサン・ジェルマンは、カリオストロから娘の症状を詳しく聞いた。娘は軽いうつ病だった。そこで、こんな事も有ろうかと持っていた、特製の抗うつ剤を取り出し、その場で娘に飲ませた。
18世紀の話だから、素人の医療行為について、この際コンプライアンスなどは気にしないで欲しい。長くタイムトラベルを続けていると、そんな薬が必要になる事も有るのだ。
娘は直ぐに元気になった。
彼女はカリオストロにお礼を言うと、白装束を脱いで帰って行った。
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
サン・ジェルマンに頭を下げる、カリオストロ。
「構わないよ。キミの手柄にしておきなさい……ただもう、あんな怪しげな儀式は、ヤラないように!」
「はっ、肝に銘じておきます、師匠」
カリオストロは、最敬礼で答えた。




