② 活動開始
そこでサン・ジェルマンは目を覚ました。
今のは……夢?
彼は判然としなかった。
彼が安楽椅子から立ち上がると、傍らに、白い大きな袋が置いてある事に気がついた。
その中を覗くと、フカフカのタオルが沢山入っていた。
そして、こんなメモが、袋に張ってあったのだ。
"サンタクロースより愛を込めて"
(なんだ、こりゃ?今日はクリスマスだから、使用人たちからのサプライズかな?それなら、もう少し捻りの効いたモノを、置いて欲しいものだな)
吞気な彼は、そんな事を考えた。
誰かさんの事など、当の昔に記憶の彼方になっていたのだった。
その後の彼は、いつものようにシャワーを浴びて、メイドが部屋に運んで来た朝食を平らげると、テーブルの上に、雪子から預かった地図を広げた。
「さて、今日は何処に行こうかな……」
一人で呟く彼。
しかし、ふと、つい昨日まで、こんな時、隣に誰かが居たような気がして来る。
彼は、そのモヤモヤする心の感触を振り払うように、目的地を決めた。
そして早速、外出着に着替えると、小型トランクのフタを開き、中のタイムマシンの画面に、以下のような座標を入力した。
西暦1784年12月24日
時刻15時00分
北緯45度45分
東経04度50分
数値を確認したサン・ジェルマンは、時空転移装置のスイッチを入れた。
彼が次に出現した先は、小さな教会のような建物の内部だった。
物陰にしゃがんだまま、辺りの様子を覗うと、部屋の中央で、司祭のような服装の中年男性が、白い装束を着た少女に向かって、何やら怪しげな呪文を唱えている。
少女は、円の中に複雑な模様が描かれた床に跪き、今まさに、トランス状態になっていた。中年男が、そんな幼気な少女の衣服に手を掛ける。
サン・ジェルマンは、本能的にその儀式を中断させるべきだと思い、敢えてその物陰から立ち上がりながら、自らの姿を晒して叫んだ。
「ちょっと待ったぁ!」
伯爵の出現に驚いた中年男は、思わず司祭の衣装のフードを後ろへやって、こちらを睨みつけた。
「バチ当たりなヤカラめ!この吾輩を、名誉あるフリーメイソン会員で、サン・ジェルマン伯爵の一番弟子、カリオストロ伯爵と知っての狼藉か!?」
その男の、聞き捨てならないセリフに、カチンと来た伯爵は、更に叫び返した。
「……誰が、誰の一番弟子だって!?」
「今言った通りだ!二度は言わないぞ!どこの誰かは知らんが、邪魔をするなら、キサマをこの場で呪い殺すぞ!」
「面白い。ヤレるものならヤッてみろ!」
最早、売り言葉に買い言葉である。




