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「25歳のサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第ニ部 新世紀編⑤)  作者: サナダムシオ


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⑳ 怖いモノ見たさ

 正直に言えば、まだ若かったサン・ジャルマン伯爵は、その人物の事が、この世で一番気になっていた。ただ真実を知る事が怖かった。しかし、好奇心には勝てなかった。そんな訳で、彼は今、ここに来ている。


 西暦0027年の4月10日。時刻は午前9時頃か。

 場所は、ガラリア湖周辺のとある村だった。

 今目の前で、一人の青年が女性を介抱している。

 どうやら彼は、彼女の額に触れただけで、その高熱を下げたらしい。

 伯爵は少し離れた物陰から、その様子を見ていた。


 その時、よく聞き取れなかったが、その青年は、何か呪文のようなモノを唱えていた。そして件の女性も、それを復唱しているように見えた。


 別の日の昼。

 その青年の講話を聴くために、5000人の群衆が集まった。

 青年の弟子たちは、群衆の食べ物が用意できずに困っていた。

 そこに一人の少年が現れ、5つのパンと2匹の魚を差し出した。


 その青年は感謝し、その場でソレを5000人分に増やして、皆に配った。

 その時も彼は、何やら天を仰いで呟いていた。

 またも伯爵は、ソレが聞き取れなかった。


 その日の午後。

 青年は瞑想をするために、山に登った。

 もちろん伯爵は、こっそりとその跡を付けた。


 丁度その頃、弟子たちの内の数名が船に乗り、カファルナウムの向こう岸へと出発した。しかし、夜になると湖は大荒れとなり、強い逆風で、弟子たちの乗った船は、立ち往生してしまった。


 深夜、その青年が岸辺にやって来て、何か呟くと、大荒れだった湖の様子がすっかり収まり、その水面が、まるで鏡のように静かになった。そこまでなら、偶然という事も有るだろう。しかし彼は、その水面の上を歩き、弟子たちの船に近づいていったのである!


 そんな調子で、彼は、伯爵がこっそり覗き見をしている目の前で、次々に奇跡的な事をやってのけた。一番多かった活動は、やって来る病人たちを癒す事だった……いや、そんな生易しい表現では足りない。失明した者の視力を戻し、耳の聞こえない者の聴力を戻し、歩けない者の脚力を取り戻した。


 伯爵の知らないところでは、大量の水をワインに変化させた事もあったらしい。その青年は、とんでもないペテン師か、稀代の手品師か、そうでなければ、やはり神の子なのだろう。サン・ジェルマンはもう、その奇跡のチカラを、認めざるを得なかった。


 伯爵は、それまでずっと恐れていた事実を、しっかりと認識し、自分の時代へと戻ったのだった。

 ……その青年の名を、イエス・キリストと言う。


挿絵(By みてみん)

 

 

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