⑲ 瞑想を試みる
12月31日。
サン・ジェルマンは、次の年を迎える前に、一つ、どうしても試しておきたい事が有った。
それは、自室で瞑想をして、果たしてアカシックレコードに手が届くかどうか、という事だった。
かつて彼は、真田雪子の指導の元で、同様に精神を集中させ、魂だけのタイムトラベルを行なった事が有った。
先日、アヌビスが言っていた通り、あの体験と、要領は同じだと、考えていた。
15時頃、伯爵は安楽椅子に座り、静かに眼を閉じた。暖炉の火が燃える、パチパチという音だけが聞こえる。やがて集中力を高めて行くと、それすら、聞こえなくなった。今や頭の中は、すっかり無音の世界だ。
彼はもう一度、3万年前の、スフィンクスの様子に集中してみる。すると、頭の中に、イメージと言うより更に明確な、ビジョンが見えて来た。アラハバキたちは、右のスフィンクスを、土台からすっかり破壊してしまったようだ。
恐らくその目的は、古代エジプトの、時空ゲートを隠すためだろう。スフィンクスがソコに在るだけで、ポータルの位置が、あからさまにバレてしまうからだ。
ソレは、公明正大に、広く他種族にも、その門戸を開こうとした、犬族の思いを、踏みにじる行為だった。更にアラハバキたちは、その前脚の間に、帰るためのゲートが有る、左のスフィンクスにも、手を加えた。
何と彼等は、ジャッカルに似た顔立ちの、アヌビス像の顔を、スッカリ削り、まるでコブラのような頭部にしてしまったのだ。
つまり、犬族が開発したこの場所を、名実ともに、自分たちのモノとして、独占する構えなのだ。まったく、ろくでもない連中である。
伯爵が瞑想しながら、じっとその現場のビジョンに注目していると、こちらに振り返ったトカゲ男が居た。
「誰か、この時空にアクセスしているヤツが居るな?」
彼はそう言って、姿が見える筈が無いのに、こちらを睨みつけた。
どうやら第六感が鋭い者には、見られている事が分かるらしい。
案外、世間で幽霊と言われている存在は、自分のような者かもしれない。
彼は、そんな風にも思ったりした。
トラブルを避けるため、サン・ジェルマンは、取り敢えず瞑想から戻り、チャネリングを解除した。
それにしても……今の体験は、"魂の時間旅行"と、大差ない行為のように思えた。ひょっとして、この辺りが、自分の限界なのだろうか?




