⑱ 情報の整理
二人は再び螺旋階段を上り、地上に戻って来た。
「じゃあ、ボクはそろそろ帰りますね。色々と見せていただいて、ありがとうございました」
「うん、帰りの道中も気をつけて。最近じゃあ、亜空間海賊なんてのも、出るらしいからね?」
「……御冗談でしょ?」
「さあ……どうかな?」
その黒い柴犬は、片方の口角を上げてニヒルに笑った。
サン・ジェルマンが、その場で小型トランクを開いて、帰りの時空ジャンプシークエンスに入ると、最後にアヌビスはこう言った。
「今後また、私やバステトが、貴方に会う事もあるでしょう。ただその時には、初めて会うような顔をしてくれると、助かります」
「……何故です?」
「時空を何度も行き来して、同一人物に会っている事が、高次元の存在にバレると、色々と面倒な事になるんですよ。貴方もその内に分かる」
「それは……」
伯爵が何か言いかけた時、時空ジャンプが始まってしまった。
彼はまた、南スペインの屋敷の自室に帰って来た。
そろそろ、夕食を摂らなければ。
夕食を終え、シャワーを浴びた後、バスローブに着替えた伯爵は、ワイングラスを揺らしながら、今日の体験を、脳内で反芻してみる。
まずアカシックレコードの名付け親とされる、シュタイナーに会いに行った。しかし実のところ、アカシックレコードという呼び名は、遥か古代から使用されていた。
彼は人類の敵についても言及していた。アレは実体のある者の事なのか、それとも象徴的なイメージの話なのか……判然としなかった。
次に彼の勧めで、紀元前3万年のエジプトに行ってみた。
ピラミッドもスフィンクスも、様子が現在とまるで違っていた。
スフィンクスの原型は、二体のアヌビス神像だった。
そしてそれを壊そうとする爬虫類族に出会った。
彼等はアラハバキと名乗った。
恐ろしい連中だったが、ソレを上回るチカラを持った、自称正義の味方が現れた。
黒猫の戦士、バステトだ。
更にその後、犬王子アヌビスが現れた。
おそらくアヌビスの名称は、代々王族が受け継いでいるのだろう。
そして彼に案内され、アカシックレコードの間に行った。
そこで貴重な体験をする事が出来た。
多分、ここまでの事の成り行きを、シュタイナーは全て知っていたのだと思われる。
今更ながら、恐るべき人だ。
しかし、おかげで様々な事が判明した。
知り得た事実については、今後暫くの間、自分の胸に仕舞っておく事にしよう。
サン・ジェルマンは、そう心に決めたのである。




