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「25歳のサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第ニ部 新世紀編⑤)  作者: サナダムシオ


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⑭ アヌビス神

 二体のスフィンクス(今はアヌビス神であるが)は、まるで日本の神社の狛犬のように、大ピラミッドの前に、2体仲良く鎮座していた。

 こうして見ると、確かに二体居る方が、何だかしっくり来る。


 それに、身体に対する頭のサイズも丁度いいバランスに見えた。

 というのも、サン・ジェルマンは、常々、スフィンクスの頭が、身体に対して小さ過ぎるのが、気になっていたのである。


 しかし、古代エジプト人たちの美意識が、ソレに気づかない程、劣っていたとは思えなかった。このアヌビス神の顔なら、確かにジャストサイズだ。 


 ただ、あの長めの耳と鼻の部分が、いかにも壊れやすいパーツに思えた。この辺りは、地震の少ない地域だから、耐震性とか気にならないのかな?彼がそんな事を、考えている時だった。


 右のアヌビス神像の前足の間から、突然ぞろぞろと出て来る多数の人影が有ったのだ。

 ソレは身長が2m程の、蛇のような顔をした爬虫類族たちだった。


 彼等は手に手に剣や槍を持ち、或る者は下から突き、また或る者は、上によじ登って武器を叩きつけ、アヌビス神像の耳や鼻を壊し始めたのだ。


 最初のウチ伯爵は、余りの出来事に、あっけにとられて、ボンヤリそれを眺めていた。しかしやがて、沸々と怒りが湧いて来て、思わずその大きなトカゲニンゲンたちに向かって、ご丁寧にヘブライ語で怒鳴りつけていた。

「こら、やめろお前たち!何をやってるんだ!」


 もうその時には、右のアヌビス神像の耳と鼻はすっかり削られ、彼等は左の像に移動していた。どうやら顔だけを、別のモノにするつもりのようだった。どうせコブラか何かの顔に、作り変えるのだろう。彼等は一斉に、サン・ジェルマンの方に振り返った。


「何だあ?ハダカ猿族の分際で!我々アラハバキに歯向かうとは、いい度胸だ。余程命が要らぬと見える」

 その集団の隊長らしきトカゲ男が、こっちに近づきながら、キレイなヘブライ語で答えた。


 思わず声を出してしまったが、多勢に無勢だ。それに相手は古めかしいとは言え、武器を持っている。ここは逃げた方が……伯爵は咄嗟にそう判断し、小型トランクのフタを開ける。


 しかし折り悪く、時空ジャンプのための、バッテリーの残量が足りない……連続して使い過ぎたか。しまった万事休すだ!誰でもいい、誰か助けてくれる人は……?困り果てた彼は、心の中でSOSを出した。


 すると出し抜けに、彼の耳元で、囁く声が聞こえた。

 ソレは又もや、ヘブライ語だった。

「アナタ今、猫の手も借りたい気分かしら?」


 ギョッとしたサン・ジェルマンが振り向くと、彼の背後に、金色の鎧で武装した大きな黒い猫が、不敵な笑顔を浮かべながら、オリハルコンの剣を片手に、立っていたのである。


挿絵(By みてみん)


 


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