表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/12

聖女のピクニックと、重すぎる期待

7お読みいただきありがとうございます。


「神殿通い」が本格的にスタートです!

豪華なお弁当を持って「基礎実習」に挑むサビアでしたが、そこに現れたのは、魔法で女性化して潜入中の王太子ウルハラでした。

 数日後。再び神殿への訪問が課せられた日。

 私の憂鬱な朝は、執事ウォルターが差し出す、ずっしりと重いかごから始まった。


「お嬢様、本日の神殿での昼食でございます。リリィ様と召し上がることもあるかと思い、二人分ご用意いたしました」


「……ありがとう、ウォルター」


(四人分はありそうだけど)


 かごの中には、アイザック公爵家自慢の料理人が腕を振るった、最高級の小麦で焼いた大量のサンドイッチ。デザート用に、季節の果実がたっぷり乗ったタルトまで入っている。


(私ヒロインとも一緒に食べればいいか。あの子、細いし)


 私は転移ポートに乗り、まばゆい光に包まれて大聖堂へと向かった。



 大聖堂の内聖域インナー・サンクチュアリに到着すると、そこにはすでにリリィが待っていた。

 彼女は目をキラキラと輝かせ、私を見つけるなり駆け寄ってくる。


「サビア様! おはようございますっ!」


「おはよう、リリィさん。……早いですね」


「サビア様、私のことはリリィと呼んでください!私、サビア様と仲良くなりたいんです」


 えへへ、と照れたように笑うリリィ、「わかったわ、リリィ」と返事をした。リリィは感激とばかりに涙ぐんでいる。

 いちいち情緒の揺らぎが大きいのだが、そこはヒロインらしい素直さで、容姿も相まって大変可愛らしい。


(変に懐かれちゃったなあ)


 重すぎるかごは、神殿からやってきた若い神官がさっさと持って行ってくれた。

 

 ところで神殿にきてなにをするのか、実は、私は知らない。

 

 アイロンの設定では「リリィは早くから聖女の素質を見いだされ、神殿で神学を学び、癒しの力を磨いた」程度のことが書いてあるだけで、特に可もなく不可もなく。


 神殿に来た初日に魔獣に襲われて火傷を負う以上のエピソードもなかったから、よく分からないのだ。


「リリィは神殿でなにをするのか知っていて?」


 私が聞くと、リリィは飼い主にかまってもらった子犬のように嬉しそうに、ピンクの髪を揺らして、「はい!今日から本格的な神学の授業を受けます。まずは座学で神への理解を深めることで、魔力は強くなると考えられています」と答えた。

 褒めて!と背後に書いてあるのが見えるようだ。


 なるほど。お勉強ね。

 特に無能アピールもできなそうだけど、ボロも出なそうで、いいわね。




「さあ、お二人とも。本日は『浄化の基礎』の実習です。神殿の最奥にある、長年放置された『呪いの地下聖堂』を浄化していただきます」


(……思いっきり話が違う?!)


 先ほどの若い神官によどみなく告げられて、思わず、リリィのほうを見る。

 リリィはふるふると首を振った。


 「え……ちがいま……、ちゃんと去年から聖女教育を受けているご令嬢にお伺いしたのに……、サビア様、わたし嘘をつくつもりなんて……き、きらいになりました?」


「あきれたこと言わないで。ならないわ」


 ビックリはしたけど。

 

 どうやら前回のオーバーキルのせいで、神殿側の期待値がバグり散らかしているらしい。

 長年放置されたって、つまり、誰も浄化できなかったってことでしょう?

 そんなものを新米聖女に任せるなんて、死んだらどうするつもりなのよ!


 憤慨(ふんがい)しながら案内された地下聖堂は、じめじめとしていて、見るからに禍々しい霧が漂っていた。リリィが不安そうに私に寄り添ってくる。


(その辺の壁に頭を打って、『やっぱり私、聖女に向いてない!』って泣くとかどうかな)


 私は頭を切り替えて、どう無能をアピールするかだけど考えている。


「――待ちなさい。その聖堂に足を踏み入れるのは、許しません」


 背後からかけられた声に振り返れば、そこに立っていたのは、まばゆい金色の長い髪に、宝石のように青い瞳、そして作り物のように整った容貌をした一人の少女だった。


(……え? うわ、めちゃくちゃ綺麗。サビアもリリィも美少女だけど、それ以上だわ)


「サビア・アイザック。君が先日、魔獣を一撃で屠ったという聖女か」


「……そうね」


「私はウルハラという」


 ウルハラ!

 少女――否、彼女の正体を知る私は、脳内の『アイロン』設定資料を高速でめくった。

 王太子ウルハラ。

 ウルハラは実は男性だ。原作では、魔法で性別を偽って神殿に潜り込み、そこで聖女教育を受けているリリィの気高さに触れて恋に落ちる……という、攻略対象の一人である。


(ウルハラは私やリリィと同じ年だから、これは6歳のウルハラかあ。ゲームのスチルでは出てこなかったけど、ものすごく可憐だわ)


 しかしウルハラの敵意を含んだ瞳は、冷え冷えとサビアに向けられている。


「……今日の地下聖堂には、私も行く。サビア、申し訳ないが、私はあなたを全面的に信じていない」


(えええ……)


 そしてウルハラは、いち早くサビアが悪しき魔女だと気が付くキャラだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


王太子ウルハラ様、ついに登場です!

リリィと仲良くなるはずの原作ルートを外れ、サビアへの疑惑を深めるウルハラ。

彼はサビアの「悪魔の魔力」を見破ってしまうのか、それとも彼もまた「超解釈」の毒牙にかかるのか……。


次回、呪いの地下聖堂で三つ巴の浄化実習が始まります!

面白いと思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価】**で応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ