聖女の義務と、不純な準備
お読みいただきありがとうございます。
ついにサビア地獄が始まろうとしています。
聖女の裏側と、彼女の不純な決意をお楽しみください。
ここで、聖女の役割と、管轄する機関について整理しよう。
私、サビア・アイザックが「深淵なる救済の聖女」なんて大層な名前で呼ばれることになった以上、避けては通れないのが【王立聖教神殿】という組織だ。
通称「神殿」あるいは「協会」と呼ばれるそこは、国の魔力バランスを管理する国家機関。そして聖女とは、その神殿に所属し、国の結界を維持したり、土地を浄化したりする、いわば「超高給取りの国家公務員」のようなものだ。
本来、聖女として神殿に召し上げられることは、この国において最高の栄誉とされている。
麗しい法衣に身を包み、人々の祈りを一身に受けて大聖堂の祭壇に立つ姿は、すべての少女たちが一度は夢見る「地上の女神」そのもの。のちに十三歳になれば貴族の子女たちが社交を学ぶ「王立学園」へ通うことになるけれど、神殿に選ばれた聖女候補だけは、その前から【内聖域】という選ばれし者しか立ち入れない神秘の領域で、特別な教育を受ける権利を得るのだ。
世間のお嬢様方が「まあ、なんて素敵。私も聖なる光で国を照らしたいわ!」なんて目を輝かせている一方で、私の認識はもっと世俗的で冷めている。
私にとっての神殿は、静寂と魔力消費が支配する、いわばガチの「重労働現場」だ。学園のような楽しいお喋りなどない。あるのは、属性ごとの祭壇と、魔力制御のための瞑想室、そして古代の叡智を記した禁書庫。
しかも、アイザック公爵邸には、古代遺物である【転移ポート】が設置されている。これを使えば王都の中央大聖堂まで、またたく間に到着してしまう。
(転移ポートのせいで『遠いから行けません』という言い訳すらできないんだよなあ……)
聖女の仕事は、学園での「勉強」とは根本的に違う。
魔力の供給、土地の浄化、そして「聖女候補」たちが一堂に会する合同神儀。
このままいけば、そこで私は、本物のヒロイン――リリィと顔を合わせることになる。
リリィは、清らかで、温かくて、誰もが平伏したくなるような「白」の魔力を持つ本物だ。
(ヒロインの隣に並んで一緒に聖女として活動するなんて無理。危険すぎる)
幸い、聖女候補には「奉仕期間」という名の試用期間がある。
まずは近日中に、王都の大聖堂へ初回の挨拶と、魔力の登録に行かなければならない。
私の作戦はこうだ。
挨拶のとき、聖女に不可欠な「癒やし」の魔法を試される場で、やたら派手に光とか効果音とか出るけど、対象を治すことはできない「無能」っぷりを披露するのだ。
(神殿に、『こいつ、魔力量は多いけど役に立たない』と思わせれば勝ちよ。そうすれば、『実家で大人しくしてなさい』って言われるはず!)
さいわい(?)悪魔が残していった魔力は、破壊に特化している。
これを「癒やし」として使おうなんて、フォークでスープを飲もうとするくらい無理な話なのだ。そもそも小細工を考えなくって、本当に「癒す」ことなんてできないのではないか?
(ただ、対象を害したりはしないように気をつけなくちゃ! 大げさに地鳴りや突風を起こして、火花なんて散らしちゃって、でも結局何も起こりません! みたいな感じでいくわよ)
私は、鏡の前で希望に満ちた笑みを浮かべた。
強制的に吐き出されるバカみたいなポエムのことを忘れたわけではなかったが、力がないのなら、むしろ自分に酔ってる可哀そうな子に見えるだろう。
上等である。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
派手な演出だけで中身はスカスカ、を目指すサビアでした。
次回、いよいよ王都神殿へ乗り込みます!リリィとも対面です。
続きが気になる方は、ぜひ**【ブックマーク】や【評価】**をいただけると嬉しいです!




