第10-7話:2体連携の恐怖に気づく
「……っ!」
セイントレディもまた、自身のクリスタルを「カチ、カチ」と叩いた直後に訪れた、ネクサスの『不自然な静止』に、背筋が凍るような直感を覚えていた。
左右の旋回を完全に封じられ、前後の直線的な逃げ道しか残されていないこの無防備な状態。
ロイヤルブルーの生地が四方に張り詰め、彼女の肢体をまな板の上の標本のように固定している。
(もし……もし、この完璧に固定された瞬間に、あの『ゾディアック』が現れたら……?)
彼女の脳裏に、最悪のビジョンがフラッシュバックする。
ゾディアックの魔力を帯びた指が、レオタード越しに胸の突起を激しく擦り上げる。翻訳された快感に脳が焼き切れ、身体が自らの意志を離れて激しく痙攣しているその最中に――ネクサスによって『最適角度』で固定されたクリスタルを、ゾディアックの魔力で真正面から力任せに押し込まれたら。
クリスタルは左右への逃げ場を失い、一直線に、完全に肉体の奥底へと陥没してしまう。
それは、正義の喪失と、身体が意思より先に頂点へ達してしまい、光が保つかどうかも分からなくなることを、同時に意味していた。
「ひっ……! 嫌っ……!」
彼女の瞳に、その『未来の確実な敗北』に対する強烈な恐怖が浮かび上がった。
固定されたまま小さく首を振り、怯えるように身をよじる麗子。そして暗がりで見守る俺もまた、その絶望的なビジョンを完全に共有し、ギリッと奥歯を噛み締めていた。
ネクサスが止まった瞬間、麗子の恐怖は痛みではなく、空白から来ていた。叩いたクリスタルの余韻がまだ指先に残り、次の衝撃が来ない。来ないこと自体が、角度を測られている時間だと身体が先に理解する。
左右はもう動かない。前後だけが開いている。その直線が、逃げ道ではなく通り道に見えた。ロイヤルブルーは四方から張り、呼吸を浅くする。彼女は自分を守る衣装の内側で、標本の位置に置かれていた。
最悪の図は記憶ではなく、組み立てだった。ゾディアックの指が生地越しに胸の頂点を擦る。翻訳された感覚で思考が遅れ、身体が意思より先に痙攣する。その遅れのあいだに、固定された核が真正面から押される。左右へずらす旋回は、もう自分の手元にない。
麗子が恐れたのは、頂点へ達することだけではなかった。達した瞬間に、正義の核が奥へ落ち、光を保つ判断まで遅れることだった。消えるかどうかは分からない。分からないまま、光の側に立てなくなることが敗北に見えた。
「ひっ……! 嫌っ……!」は拒絶というより、まだ起きていない未来を現在から押し戻す声だった。首を振る範囲は小さい。身をよじっても角度は戻らない。戻らないと知ったうえでよじるのは、固定を認めないための、最後の意思だった。
暗がりの健一がそのビジョンを共有していることは、彼女には見えない。見えるのは、静止したネクサスと、まだ現れていないゾディアックの位置だけだった。恐怖は相手の到着前に、すでに彼女の内側で完成していた。




