第10-4話:Vライン真正面からの抱きつき
そして、ネクサスは決定的な行動に出た。
奴は、第8章の時のように背後から腰に抱きつくことはしなかった。背後からの拘束は、セイントレディが腰を引いて放つ強力なヒップアタックによる反撃のリスクが残るからだ。
ネクサスが選んだのは、最も無防備で、最も屈辱的なポジションだった。
彼女の真正面――レオタードの裾ゴムが最も深く食い込んでいる太ももの付け根、鋭角なVラインのど真ん前から、自らの無機質な巨体を押し当てるようにして、残る2本の触手で彼女の腰を背中側からガッチリと抱き込んだのだ。
「あっ……! ひっ……!」
パンスト越しに直接伝わってくる、異形の冷たい粘液と圧倒的な質量。
彼女が最も隠したい境界線の中心に、敵の本体がピッタリと重なり合うように密着している。
さらに残酷なのは、この角度から骨盤をロックされて抱き込まれると、人間の骨格の構造上、腰を左右に旋回させることは『物理的に完全に不可能』になるという事実だった。
「(偶然じゃない……っ。奴は、彼女の反撃パターンと可動域を完全に学習した結果、このポジションを導き出したんだ……!)」
物陰に隠れた俺は、敵の無機質な戦術的進化に、吐き気をもよおすほどの絶望を覚えた。
麗子の誇りであった回避戦術は、彼女自身の「神聖な空間」を塞ぐように密着されるという、最も卑猥で理不尽な形で無効化されてしまったのだ。
麗子の回避は、腰をくねらせ、骨盤を浮かせ、合致点を横へずらすことにあった。その左右の旋回を、ネクサスは技で破らなかった。彼女が一番見られたくない境界の正面へ、本体を無遠慮に重ねた。
裾ゴムが肉へ最も深く食い込む、太ももの付け根。鋭角なVの折れが一点に集まる、そのど真ん中。パンストの薄い膜の下で、白いパンティが石を隠している場所だ。冷たく湿った質量が、そこへぴたりと吸いつく。隙間はない。彼女が「来ないで」と拒む線の上に、敵の面が直接乗っている。
背中側の二本が骨盤を抱え込み、ロックがかかると、腰はもう彼女のものではない。左へくねらせられない。右へ浮かせられない。ずらすための余白が、敵の密着で埋められている。隠そうと腿を閉じれば、かえってその面を自分から挟む。逃げようと前後へ動けば、食い込んだ裾ゴムが、密着した中心を擦る。
無効化されたのは速度ではない。神聖な空間を、自分の側から閉じたまま守れる、という最後の体面だ。敵は捲らない。中も見ない。ただ境界の外から抱き込み、彼女の回避を、隠したい場所を押し付ける姿勢へ変えた。戦いの動作が、そのまま辱めの形になる。それが、この固定の卑猥さである。




